2.冒険の始まり
先行投稿しているアルファポリスと足並みを揃えてしまいたいので、本日三話更新します。こちらは一作目です。
「お兄ちゃん、こんなにパンを買ってどうするの?」
兄であるベンが、カバンにたくさんのパンを詰めています。最近、ベンが近所の人たちの手伝いをしてお小遣いを稼いでいたので、それで買ったのだとは思いましたが、それでもちょっと量が多い気がしたのです。
「決まってるだろ、テラ」
ベンは、とても誇らしげな顔をしています。
「魔法の力を、探しに行くんだ!」
「え……ええーっ!?」
ベンの言葉にテラは驚きました。
大昔に失われたとされる、魔法の力。その力の名残がまだあると聞いてから、探したい見つけたいとテラも思っていました。それを、ベンは実行しようというのです。
「ほ、ほんきで……?」
「当たり前じゃないか! テラも来るか? そのための食料は、オッケーだっ!」
カバンの中のパンを見せられ、テラの気持ちは揺れます。探してみたい、見つけてみたい。でも……と思います。
「どこで見つかるの? お母さんに知られたら、怒られるよ?」
「だいじょうぶだっ! 夕方までに帰ってくればいいんだからっ!」
うーん、とテラは考えます。夕方までにはまだ時間はあります。確かにそれまでに帰ってくれば、母親に知られずに済むかもしれません。けれど、そんな簡単に見つかるものなんだろうか、と考えてしまうのです。
「別にこなくてもいいぞ。ただし、見つかってもお前にはやんないからな」
「ええーっ!?」
ベンのイジワルな言い方に、テラはまたも声をあげました。そして、気付けば言っていました。
「行くっ! テラも行くっ!」
「よっしゃ、そうこなくちゃな! 行くぞ、テラ!」
「ま、まってー」
歩き出したベンを、テラは慌てて追いかけます。
こうして唐突に冒険は始まったのでした。