1.ベンとテラ
初めての童話投稿です。
こんな感じで良いのかどうか、緊張しつつ投稿します。
むかしむかしあるところに、ベンという兄とテラという妹がいました。二人は今、寝る前に母親にせがんで、物語を読んでもらっているようです。
『魔王の力は強く、勇者もあきらめそうになりました。けれど、魔法使いが放った魔法が魔王をとらえます。動くことができなくなった魔王に、勇者が最後の力をふりしぼると、持っていた聖剣が光かがやきました』
「そして、ゆうしゃがまおうをたおしたんだよねっ!」
「せかいがへいわになったんだっ!」
「そうだけど、最後まで聞きなさい。お話ししてって言ってきたのは、二人なのに?」
物語の最後の語りを子供たちに奪われた母親は、怒る様子もなく、呆れたようでいてとても優しく、小さな子供たちに言います。
でも、興奮して目を輝かせている子供たちの話は続きます。
「ねーおかあさん、まほうってなに? テラもつかいたい!」
「おおむかしになくなったちからだって、きいたじゃんか」
「でもつかいたい!」
「はいはい」
母親は笑って子供たちの話に入ります。そして、妹のテラの頭を優しくなでました。
「そうね。ベンの言うように、今は魔法と言われる力はなくなってしまったわ。でもね、その名残とも言われているものはあるのよ?」
「「そうなのっ!?」」
テラだけではなく、ベンも興味津々に母親に聞き返します。母親は、クスッと笑って言いました。
「そう。どこかにあるらしいけど、お母さんも知らないわ」
「「ええーっ!?」」
またも兄妹の声が揃います。不満そうな子供たちの声に、母親は笑みを崩さないまま、子供たちに告げました。
「はい、話は終わり。もう寝る時間よ」
「「ええーっ!?」」
「文句を言わない。たくさん寝ないと、大きくなれないわよ」
子供たちが寝るのをごねたときの、いつもの母親の言葉。でもこれが効果抜群であることを、母親は知っています。
「ぼく、ねる! はやくおっきくなるんだっ!」
「おにいちゃんずるい! テラもねる! はやくおっきくなるの!」
「しんぱいするな! テラがちっちゃくても、おにいちゃんがまもってやる!」
「やだっ! なんかしんぱいだもんっ!」
「なんでだよっ!?」
兄妹の言い合いを、母親は楽しそうに聞いていましたが、これでは寝るどころではありません。
「はいはい、そこまで。ベンもテラも、早く休みなさい。二人が大きくなるの、楽しみにしているからね」
「「はーい!」」
さきほどまでの言い合いを忘れたような二人の素直で元気な返事に、母親は笑ったのでした。
――そしてそれから時は流れて、ベンは十歳、テラは八歳になりました。