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VTuberと付き合いたい!  作者: おーゆみ
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第十六話「ローキはVTuberをやってみたい」

「というわけで第二回作戦会議を開くことにする」

 集まった面々に俺はおごそかに宣言した。

「うす」

 とあっさりとした挨拶をするヒロトと、

「だから、なんでいつも私を呼ぶの!? 私関係なくない!? 早く帰ってやらなくちゃいけないことが山積みなんだけど!」

 とひたすら憤っているなぎさがいた。

「そう言いつつ、いつも必ず来ているのがとても義理堅いですよね」

 さやか先輩が率直な感想をぼそりと呟く。

 今日も誰も来ない図書室で、俺とヒロトとなぎさ、そしてさやか先輩が集まっていた。

 前回は一つの机をみんなで囲むという窮屈な会議だったので、今日は他の教室から机をもう一つ持ってきて、それなりにましな会議スペースを作り出していた。

「っていうか、いっつもなんで図書室に集まるの? ぎゃあぎゃあ騒いで他の人に迷惑じゃない!? そうですよね、さやかさん?」

 なぎさは口をとがらせてさやか先輩に話を振る。

 だがさやか先輩は「まあ、基本誰も来ませんから。それにもし誰かが来たら静かにするようにとローキくんには言ってありますし」と苦笑いで返した。

「甘ーい! バニラクリームフラペチーノをホワイトモカシロップに変更してホイップ山盛りするくらいに甘すぎるー! こういう公共の場を私物化するようなヤツは追い出しちゃえばいいんです!」

「つーか、お前が一番うるせぇんだよー!」

 となぎさとぎゃーすかやっていると、ヒロトがぼそりと「仲良いよなあ、お前ら」つぶやく。

 さやか先輩も「本当ですよねえ」と小さくため息を吐きながら物憂げに言った。

「仲良くないですよ、何を見てるんですか、さやかさん! ローキなんてこうしてやるんだから!」

「ひゃえひゃひやっへんやよ! ひゃへれねええんひゃよ!(訳:おまえなにやってんだよ! しゃべれねえんだよ!)」

 俺の両頬をつまんで思いっきり引っ張り上げるという極悪な攻撃を、なんとか払いのける。

 そしてなぎさの攻撃可能範囲から離脱し、ファイティングポーズを取った。

 次は俺の攻撃の番だ! 華麗なるデコピンを食らわせてやるぜ。

 俺がなぎさの隙を見いだそうとしきりにフェイントを仕掛けていた時。

「つーか、さ。いい加減本題入ろうぜ」

 と、ヒロトが呆れた声をあげた。

「今日の議題は、VTuberになるにはどうしたら良いか? だろ? ローキ。さっさと相談しようぜ」

 すると――

「え?」

「え?」

 となぎさとさやか先輩が同時に驚いたように声を上げた。

 二人ともあり得ないものを見るような表情で俺の顔をまじまじと見つめている。

 なんだよ、そんなに俺がVやるのが変だって言うのかよ!

 俺は急に居心地が悪くなって、咄嗟に二人から視線を逸らす。

「え、ローキVTuberやるつもりなの?」

 なぎさが興味津々な瞳で俺の顔をのぞき込んできた。

「悪いかよ。似合わねぇって言いたいんだろ?」

「悪く無いよ! いいじゃん! やってみなよ!」

 なぎさはきらきらと目を輝かせて身を乗り出してくる。

 あれ、なんか思っていたのと違う。

 予想外に好意的な態度に戸惑う、俺。

「個人勢で行くのか、それとも企業勢で行くのかだけでも方向性はだいぶ違いますよね」

 さやか先輩が口元に手を当て、考え込んだ。

「好きな配信をするんなら個人勢だけど、個人勢で人気Vになるのは難しいよね。配信以外のマネージメントも大変だし。企業だったらバンバン広告は打ってくれるしスケジューリングもやってくれるから良いですよね」

「でも企業はそもそもオーディションを通るのが狭き門じゃないですか? 今『パンタシア』の場合は一次選考だけでも1200倍らしいですよ?」

 俺そっちのけでなぎさとさやか先輩が盛り上がっている。

 しかし、なぎさはねるPだから当然として、さやか先輩もずいぶんとVについて詳しいよな。

「さやか先輩、けっこう配信観てますね? それこの前のかふぇの配信で言っていたヤツですよね。今の六期生は1200倍の競争の中を勝ち残ってきたって言うの」

「そ、そうなんですよ! 最近、ローキくんの影響かVの配信を観るようになっちゃって!」

 さやか先輩は、いつになく慌て気味でそう説明した。

 言い訳なんてしなくてもいいのに。

 素直にV観るのが好きになっちゃった、って言えばいいのに。

 でも、俺の影響で観るようになったっていうのは、ちょっと嬉しい。

 俺ごときがさやか先輩の行動に少しでも影響を与えるなんてことがあるんだな、とちょっと自分が誇らしくなる。

 いや、それはともかく、今はどうやってVTuberになるか、だ。

 せっかく二人の間で話が盛り上がっているんだから、これに乗って行くに越したことは無い。

「個人勢か企業勢か? で言うとどっちかというと個人勢がいいな、と思うんだ。正直俺ごときがさっき言った1200倍の一次選考を通過できる気がしない」

 俺がそう言うと、ヒロトも同意するように大きくうなずいた。

「そうだよな。そもそも企業勢の人ってもともとが人気の配信者だったり、声優だったりすることが多いじゃん? まったくのずぶの素人のローキが企業のオーディションを勝ち抜いて行けるとは思えないんだけど」

「そんなことないよ! 現にわ……ねるねだって未経験のオーディション一発合格組だよ? とりあえず書類を出すだけでも出してみれば? 受かればラッキーじゃない?」

 なぎさはいつになく目を輝かせて熱弁する。

 その熱意に俺は思わず「お、おう」と返事をしてしまった。

 するとなぎさはまるで少女のように「やった!」と両手を合わせて喜ぶ。

 俺は、いつもと違うなぎさに戸惑っていた。

 いつものなぎさなら「V好きが高じてあんたがVやんの!? バ美肉でもするつもり? キモ!」とか言って、否定してくるはずだった。

 俺が何か言うとなぎさが否定し、なぎさが何か言うと俺が否定する。

 それが小さい頃からずっと続いた俺たちのルーティーン。

 でも、今日は違った。

 まさかこんな好意的に受け取られるとは思わなかったし、それに積極的にVになることを考えてくれるとは思ってもみなかった。

 これって、どういうことなんだろう。

 胡乱な表情でなぎさを見つめていると、俺の視線に気がついたのかなぎさもこちらに視線を向けて来る。

「?」

 不思議そうな表情でなぎさは小首をかしげる。

 俺はあわててなぎさから視線を外した。

 目をキラキラさせてそんな仕草をするなぎさが、ちょっと、その――


 ――可愛いかも、なんて思ってしまったからだ。


「なによ、どうしたの? ローキ」

 そんな俺を不審に思ったのか、なぎさが問いかけてくる。

 でも、そんなこと当然言えるわけがない。

 俺は咄嗟に頭の片隅で考えていたことを口に出した。

「あの、その、き、企業Vのオーディションって言ったって通過審査まで時間がかかるんだろ? それまで経験を積む意味でも個人Vをやってみようと思うんだけど」

 自分の気持ちをごまかすように、そんな言葉を一気に吐き出すように言った。

 するとなぎさはぱあっと破顔して、両手をぱん!と叩く。

「いいじゃない! 何事もやってみようとすることはとてもいいと思うよ! 応援するよ!」

 まるで子どもの頃のようにはしゃぐなぎさを見ながら、俺はひたすら戸惑うことしか出来なかった。

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