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幻想世界からおいでませ

ドマイナーな存在だと言われた大怪鳥たちが転生してきました

作者: 爆微風

 



 我が名はロック。

 大怪鳥…… で、あった。


 孤島に棲み、翼を広げて空を自由に飛ぶ巨鳥エピオルニスともいわれておったな、アレは絶滅させられたが。

 我が種族は巨大化を続け、卵はヒトの住む家ほどの大きさだ。

 あの翼が自慢であった。

 だが現在……『伝説のロック鳥』の面影はない。

 この身は生まれ変わり、ルフとも呼ばれた大空の覇者は地に落ちた。



「はーいみんなせーれーつ。お客様に~、ご挨拶ぅ」



 かつて、我はヒトの呼び名でいうアラビアの説話に綴られていた。

 その伝承に…… 姿は鷲に似ているが、象を掴んで飛べるほど力強く巨大で、羽根1枚が椰子の葉ほどの大きさといわれた。

 それが、どうだ。



「はーい、ではひとりずつジャンプしてから、階段を登って、滑り台を降りま~す」



 こんな、見せ物を賑やかす存在に成り果てるとは!!

 今の同族たちは、なんの疑問もなくこの『シイクイン・ノ・オネイサン』というヒトに従っている。

 みな、食事(エサ)に釣られているのだ!

 嘆かわしい!



「はーい、えらーい☆」



 もぐもぐもぐ、ごくん。

 まったく、嘆かわしい……!!


 特に、このグループでは我より大きな身体のヤツはいないのだが、となりの巨大なペンギンの、アヤツ。

 あんなに恵まれた身体で、なんで『シイクイン』に従うのだ!!

 やはりエサか!

 まったく嘆かわしい!!



「はーい、では、コウテイペンギンのジーズくんが最後に大技をやってくれまぁす☆」



 なに?

 初技の御披露目、というヤツか。

 あの巨体で何を見せるというのだ……?



「はーい、水中からの大ジャンプぅ☆」



 おおっ、素晴らしい!

 あの速度ならば、シイクインも一撃だな!



「は~い大成功~!! よーしよーし、おりこうさん☆」



 なっ…… 千載一遇のチャンスを!!

 やはり、他に頼るのはいかんな……!


 かつての我は卵を壊された報復として、ヒトの船を難破させ、幾百の命を吹き飛ばしてきた。

 お菓子みたいな名前のヤツが書いたという『なんとか見聞録』にも登場するほどだ。


 シイクインなど、恐れるに足らず…… 巨鳥の意地を、見せてくれる。

 しかし、まぁ、この魚をちゃんと平らげてからだな、うん。




 ☆




 私の名はジズ。

 天空の大怪鳥…… でした。


 陸のベフィーモス、海のリヴァイアサン、空のジズ…… と言われて今は久しいね。

 一組で語られる仲間ではあっても、その話に(ジズ)だけ記載モレしていてマイナー扱いなんだよね。


 でも、圧倒的に知名度が低いおかげでなんだか知らないうちに転生なんてしちゃった。

 ホント、伝承なんて記載されるもんじゃないよ。


 それに、私は空に居ても『陽射しを遮るから』と邪魔扱いだったし、地に降り立っても『頭を下げてくれないと天に祈れない』とかとか。

 図体がデカイって、そんなに悪いコトなの?


 でも、今は違う。

 翼を広げたってほーら、太陽を覆い隠すコトもない。

 いつか食用にされると怯えるコトもない。

 全ての鳥の王として、嵐から世界を守ることもない。


 最高だね、この『スイゾクカン』って場所は。

 全長が天に頭が届くほどで、重量に至っては計測不可能だった私が、こんな風に『泳いで』速度を出せるんだよ。

 羽ばたき一つで世界を一周することはもうできないけれど、今の役割はここで『芸術的所作』をヒトに見せることだ。



「はーい、えらーい☆」



 となりの小さなペンギングループにも、芸術的所作ができるヤツがいてね、最近よく『オキャクサン』から褒められている。

 しかしエサの食べ方は美しくないな。

 咀嚼せず、飲み込まなくては。

 まったく…… お手本を見せてやろう。



「はーい、では、コウテイペンギンのジーズくんが最後に大技をやってくれまぁす☆」



 さあ、今回初披露のヤツですね、オネイサン。

 私は水に飛び込み、大回りに速度を上げてオネイサンの立つ場所へ……!!



「はーい、水中からの大ジャンプぅ☆」



 うおぉっ……!

 この速度から、滑り台を逆走!

 着地して、そして台の上で翼をパタパタ。

 決まった……!



「は~い大成功~!! よーしよーし、おりこうさん☆」



 どうかな?

 小さなペンギンくんたち。

 私のグループでオネイサンのお願いを叶えられるのは他にいないのだが…… 私の動きは、素晴らしいだろう?

 雷鳴か地鳴りかという鳴き声は失ったが、水面を切り裂いての遊泳は誰にも負けないぞ?


 勝利の遠鳴きは控えて、オネイサンの差し出した魚の切り身をいただく。

 スイッと飲み込み、余裕をアピールするものの、いかんせん小さなペンギンには私の偉大さは解らないようだ。




 ――数日後。

 芸達者なペンギンたちがいるということで取材された水族館は、連日大にぎわいとなりたくさんのヒトを楽しませることになりました。






ご覧いただきましてありがとうございます。

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