7話 帝都と繋がり
「着いたな」
「着いてしまった」
「問題が山積みだ」
「俺たちは悪くないと主張する」
「ねぇ、女子で買い物行ってきていい?」
「なら男子も纏まって」
「待て」
「「はい」」
なんでこんなに自由なんだ。元の世界じゃこんなんじゃなかったはず。はずだ。
「牡丹さん、瀬戸、乃恵さんでギルドに行ってきて。この辺の魔物のレート確認と一応の挨拶。喧嘩売られたらボコしていい」
「「了解」」
「衛司を護衛に、ガルガ、美和さん、柳でこの国の物価調査。後、幾つかの食料調達」
「「了解」」
「他は、ある一定以上の人数で固まって行動。買い物か情報収集を目的にふらついてよし。先に言った二組も、やること終えたら好きにしていい。ナンパされたら撃退していいし、喧嘩売られたらボコしていい。だけど、加減は忘れずに」
「「了解!」」
「瞳、部隊を使って裏の情報まで調べ尽くして」
「わかった。ハゲ」
「あいよ。後ハゲ言うな」
気配を殺して待機していた、瞳の部隊に指示を出す。短くやり取りを交し、直ぐに気配が消える。もう行動を始めたようだ。
「織田、佐伯、櫻井、新井、嶺さん、ユーテリアさんは俺と一緒に帝城に」
「まぁそうなるか」
「勇者組とユーテリアさんは分かるよ?なんで俺?」
「お前は、何となくだ。軍師なら知恵を貸してくれ」
「軍師関係ある?というか、俺居なくても大丈夫だよね?」
と、文句を言いつつも着いてくる。
「今言うのもあれだけどさ。どうやって謁見するのかね?」
「手紙出せばいいんじゃない?」
「それもそうか」
「というわけで、門兵さんどうぞ」
「お?おう」
変人を見るような目でこちらを見ていた兵士に手紙を渡す。
すると、段々顔付きが険しくなる。
「見たことある表情だ」
「さっきの兵士な」
「あいつら本当どうなるかね」
まぁ、未来のことは考えても仕方ない!だって分からないんだもん!
「君達、少し待って、いやお待ちください。案内の者を呼びますので」
「行っちゃった」
「誰か一人は残れよ」
言うや否や、門兵は全力で走って行ってしまった。多分詰所だな。
「お、帰ってきた」
「お偉いさんか?連れて来たな」
息を切らせながら走ってきた。
「お待たせ致しました。勇者一行様。案内をさせていただきます、帝国騎士団三番隊隊長のアレフと申します。準備の方がよろしければ、直ぐにでも王の元へと案内致しますが」
「だって」
「いいんじゃない?」
「アレフさんお願いします」
「かしこまりました。ではこちらへ」
アレフさんの案内に従って、帝城へと脚を踏み入れる。
「へぇー。調度品なんかは少ないのか。代わりに鎧や武具等の力を象徴する物が飾ってある」
「力を重んじる帝国らしいね」
「これらの武具は、帝国随一の鍛冶師の息子が鍛えたそうです」
「へぇー。俺たちはそういうの詳しくないけど、これが凄い物だってのは分かる」
「その鍛冶師の息子に会うことって出来ますか?」
「それは・・・不可能かと」
「どうゆう事だ?」
「定かではありませんが、国お抱えの鍛冶師になれなかった親の恨み妬みかと」
「死んだのか?」
「ここだけの話ですが、帝国騎士団の2番隊から動員して追っているそうです」
少しだけ距離を縮め、尚且つ小さな声で教えてくれる。
普通、そういうの言っちゃダメだと思うんだけど。
「皆様にでしたら、問題ないと判断致しました。それに、皆様にも無関係の出来事とは言えなさそうですから」
「・・・」
はーい。とっても嫌な発言頂きました。
「詳しいお話は、皇帝陛下よりお聞きください」
そうこうしてるうちに玉座の間に到着です。
「まぁとりあえず、友好的に行きますか」
俺を真ん中に、左にユーテリアさん、佐伯、櫻井、右に嶺さん、新井、織田の並びに。
ギギギギギ
大きな扉が開き、皇帝の姿が見えてくる。
「左にいるのが宰相、右が皇妃様です」
「了解」
風魔法を器用に使い、小さな声を届かせてくれるユーテリアさん。
極小の魔力しか使っていないから、怪しまれていないはず。正直、あの宰相にはバレてそう。なんか一人だけ雰囲気が違う。
一定の距離で止まり、膝を着き頭を垂れる。
「今回はこちらが招待したのだ。頭を下げる必要は無い。顔を見せてくれ。新たな勇者達よ」
他の誰かが何かを言うより先に、皇帝自らの発言。ここで従わないって選択肢が無い。
「ご配慮痛み入ります。私の名前は優騎。ユウキと申します。お会い出来て光栄です。レヴィシン・ミリタリス皇帝陛下」
「お初にお目にかかります、レヴィシン皇帝陛下。元ミステス王国、元第一王女ユーテリア・ミステスと申します」
名乗りを上げるのは、俺とユーテリア様だけ。他は喋らない。そういう風に打ち合わせしたから。
「ふむ。後の5人の紹介はしてくれるのか?」
「私の左側にいるのが、先導者・佐伯尚登、火の勇者・櫻井遼。反対が、風の勇者・嶺咲良、水の勇者・新井亮真、軍師・織田龍馬」
ユーテリア様に名前を呼ばれると同時に、それぞれ頭を下げる。
「ここに居ない者もいるようだが?」
「それは、帝都の情報を集める為に散策をしているためです。傭兵団の登録や食料の買い出しなんかもありますので」
「こちらから贈ろうと思っていたのだが?」
「いえ、我々はどこの国にも属すつもりはありませんので」
「しかし、それだと今後苦労すると思うが?」
「そこは心配には及びません。我々にも知恵があります。多少の不便は慣れます」
「そうか。ならば、悪魔族と繋がっていた王国を討ち取った褒美をやろう。爵位が良いか?それとも結婚相手か?なんでも言うが良い」
「それでは、他国の情報と悪魔族についての資料の閲覧許可を」
「・・・」
「お願い出来ますか?」
皇帝と優騎の舌戦。お互い穏やかな顔を保ち続ける。先にそれを崩したのは皇帝だ。
「はぁー。宰相よ、彼はお前なみに面倒だぞ」
「はっはっはっ。貴方様は何時になっても舌戦には勝てませんな!」
話しかけられた宰相は声を出して笑い、皇妃様は苦笑いだ。
周りの、文官や武官かな?も同じく苦笑い。
「宰相、報酬の用意を進めてくれ。どうせ、この結果もわかっていて進めているんだろう?」
「はて?なんのことですかな?もう歳ですからな、記憶力の無さには些か自信がありますが」
急に和やかに話し始めたぞ、あの二人。
ユーテリアさんがポカーンとしてらっしゃる。
「皇帝陛下、よろしいでしょうか?」
「堅苦しいのはよせ。レヴィシンでよい」
「ではレヴィシン、報酬は何処で受け取れば?」
「宰相」
「明日の同じ時間に帝城へお越しください。そこでお渡し致します。本日いらっしゃらない方もお連れ頂いて構いませんので」
「わかりました。では、これで失礼致します」
「あぁ、待て待て待て。ここに向かう途中で、俺の息子や娘に合わなかったか?それなりの規模で動いてるから、多分合ってると思うが?」
「いえ、見ていませんね。知っていると思いますが、我々は竜王やフェンリルに乗って移動してきましたので」
「・・・そうか。わかった。呼び止めて悪かったな」
「いえ。それでは」
「宰相、どう思う?」
優騎達が去った玉座の間で、レヴィシンは宰相に問う。
「あれは嘘でしょう。遭遇し何かしらあった為にあのようなことを言ったのかと」
「何やらかしたんだアイツらは」
「一番の問題は、お子の方ではなく、騎士の方にあるのでは?」
「あぁー、二番隊隊長?」
「はい」
「はぁーーーーーー」
長い溜息。レヴィシンは眉間を摘む。
「一、三、四番隊に密命、帝都の防備の強化と周辺状況の確認を綿密にさせろ」
「畏まりました」
「はっ!」
文官、武官達は仕事へ戻る。
「嫌な予感がする。なぁ宰相」
「そうですなぁ。一つ助言をするならば、彼等とは友好を結ぶことを推奨しますぞ」
「そう・・・だな。良し、アイツらのことは一旦放置だ。今は国の問題を優先だ。宰相、墓荒らしと誘拐事件の調査報告を」
レヴィシンも玉座の間から執務室へと移動しながら、自国の問題、その現状を聞いていく。
闇に蠢く影は、着実に帝国を飲み込もうとしていた。
「さて、どうやって合流するか」
「考えてませんでしたね」
「・・・瞳」
「呼んだ?」
「ヒッ!」
「うおっ?!」
「何時から?」
「最初から」
最初からいたのか・・・。まじで気配隠蔽のレベルが・・・。
「みんなどう動いてるか分かる?」
「分からない。けど、合流場所は決まってる」
「何処?」
「マーキュリー商会、経営の宿。ここから見えてるあの白い建物」
指差す方に佇む白く大きな建物。その向かいには、マーキュリー商会の商店もある。でけぇ。
「集合時間は?」
「17時」
「よし。俺らも自由時間にしますか。瞳、来るか?」
「うん」
「それじゃまた後でな」
俺は瞳と並んで帝都へと繰り出す。
後ろの方では、佐伯とユーテリアさんのペアも手を繋いで歩き出している。
櫻井と新井、嶺さんは・・・おや?新井と嶺さんが一緒に?おやあの雰囲気・・・。櫻井が背中を押した感じか。まぁあいつが好きなのって確か。
こうして、それぞれのグループがそれぞれの時間を楽しんだ。
「少し早かったかな」
時間を見れば、まだ17時には早い。
「まぁいいか。先に入ろう」
「兄さん、先入ってて。ハゲ連れてくる」
「りょーかい」
一歩踏み出せば、先程まで隣にあった気配は消えていた。
「神出鬼没・・・」
小さなその声は、扉を開ける音に掻き消され、誰の耳にも届かない。
「いらっしゃいませ。宿泊のお客様ですか?」
「あー、えっと、どうなってんだろ。昼間に暁ノ守人っていう傭兵団が来ませんでしたか?」
「いらっしゃいましたが、どうかされましたか?」
「えっと、その傭兵団の隊長のユウキと言います。少し時間に早いんですけど、チェックイン出来ますか?」
「そうでしたか!はい。皆様がご滞在の間は貸切となっていますので、常識の範疇でご自由に利用頂いて構いません」
「貸切?」
「はい。マーキュリー会頭のご指示です。あ、丁度いらっしゃいましたよ」
後ろを振り返れば、そこには見覚えのある人物。
「お久しぶりです。ベルトルト様?さん?」
「ふははは。お好きなようにお呼びください。ようこそいらっしゃいました。ユウキ様」
「便宜を図って頂きありがとうございます」
「いえいえ。これもこの国を思えばのことです。よろしければ、館内の設備のご説明を致しましょうか?」
「ベルトルトさんがよろしいのであれば是非」
「それでは参りましょう。最初は1階にある食堂から」
1階にあるのは、食堂と売店。傭兵団が泊まることもある為、ある程度の薬や探索道具も取り扱っている。軽食や酒のつまみ等は売店での購入だ。
そして2階。こちらは娯楽フロア。過去の勇者が伝えた、卓球、ダーツ、ビリヤード、ボウリング等。
3階はカジノフロア。富豪が利用するらしく、宿泊者以外も利用可能。奥のスペースに行くにはVIPキーが必要らしい。
4階は従業員用フロア。監視室、住み込み従業員用部屋等。
5階〜6階が宿泊者用の部屋となる。シングルとダブルの部屋があり、シングルの部屋は、元の世界基準で6畳。ダブルの部屋が12畳となっている。
そして、7階。浴場フロア。男女別になっているが、露天風呂があり、そちらは混浴となっている。防音結界がある為、外に声は漏れないらしい。いやそんなこと言われても。
ちなみに、1階の食堂、食堂と言っているが、ビュッフェ形式である。お偉いさんが泊まる際は、ライブクッキングがどうとか。
そうしているうちに17時。皆がぞろぞろと集まってきた。
女子達は顔がニッコニコだ。手には沢山の袋が・・・。
男子達は・・・数人妙に肌が潤ってる感じがする。他は、普通に趣味に関するものを買ったようだ。
班に別れたチームは、ちゃんと役割を果たしたようだ。上手いこと分散して持たせてるな。
「全員注目!」
手を叩きながら注目を集める。
「この建物の説明をするから聞いてくれ。食事の後、情報共有をするからそのつもりで。食事は18時からだ。それまでは風呂に入るも良し、部屋で寛ぐも良し、カジノや娯楽スペースで遊ぶも良しだ。ちゃんと聞けよー」
大人しく話を聞く。そして話が終われば、女子は部屋へ一目散に荷物を置きに行き、そのまま浴場へ。男子は、一部は娯楽フロアで汗を流しに、残りは女子と同じように、部屋に荷物を置き、浴場へ向かう。露天風呂のことは伝えたが、混浴なのは伝えてない。何故って?その方が面白そうだから!
そして、食堂に集まると・・・なんかボロボロな奴が多いな。数人居ないし。何があった。
「タオル巻いてたから問題は無かったんだけどね?」
「ユーテリアさんの肌を見た男子を佐伯が・・・」
「あと、新井と櫻井も佐伯側に着いたもんだから・・・」
あ〜察したわ。好きな女の裸?を見られたらそりゃキレるわ。櫻井と新井ってことは、嶺さんと萌々香さんか。
「一部の女子が鼻を抑えてるのは?」
「男子の逞しい身体に殺られた」
「衛司と瀬戸?」
「主にその二人。蒼っちも割と」
蒼斗な。アイツ意外と締まってるからな。
「優騎は?」
「俺は普通に男子浴場。混浴なの知ってたからね。ハゲと一緒に世間話を」
「教えて貰って助かった。あとハゲ言うな」
防音結界、室内と室外の仕切りで区切られてるから、外の状況わからんのよね。出るのも割と早かったから、そんなことになってるとは知らなかった。ハゲからは、少し早いが情報共有と瞳に関する話を。
「数人居ないのは?」
「遊び疲れて寝てます」
「飯は?」
「後で軽く摘むそうです」
「・・・・・・話は明日にしようか」
「はーい」
さぁ!色々と置いといて、今は食事を楽しもう!
余った竜の肉を使った、ビーフシチュー。いや竜の肉だからドラゴンシチュー?
竜の骨から出汁を取った、ドラゴンラーメン。
竜の肉の握り寿司?鮮度がいいから生でいける。
回鍋肉、野菜炒め、ステーキ、サラダ、白米、パン。なんでもあった。過去の勇者に感謝。何人かが、好きな料理の作り方教えてたのも影響してる。だってポテチが並んでる。あっちは・・・お好み焼きともんじゃ焼き。うわぁ、どら焼きと羊羹もある。よく直ぐに用意できたね。
眠っていた人用に、ゼリーやプリンも用意してもらった。料理はどうしたかって?平らげたよ。久しぶりの味だったからね。
「さてと」
俺は部屋の窓を開けながら、椅子に腰掛け夜空を見上げる。
「瞳、牡丹、ハゲ」
「はっ!」
呼びかければ、すぐさま三人が現れる。
「俺達に影響のありそうな話はあった?」
呼んだのは今日の報告を聞くため。明日でもいいのだが、今日会ったアレフさんの話を聞く感じ、早いに越したことはない。
「影響どうこうって話なら、噂の鍛冶師だな」
「すぐそこに面してる、森に逃げ込んだらしい」
「二班と三班を捜索に回しています。見つけ次第保護して連れてくるかと」
「動きが早いな」
「ガルガからの要請もありました。それに、優秀な者は引き入れた方がいいでしょう?」
「その通りだな」
「あー後な、一部の騎士の中で不穏な動きがあるらしい。と言っても、ココ最近は収まってるらしいが」
騎士・・・あー、あの二番隊の。そりゃ居ないもんな今。
「兄さん、この国から、悪魔族の気配、した」
「詳しく」
「薄いから、正確じゃないけど、皇族に、接触してる」
「どいつだ」
「3番か4番」
「三男と四男のどちらかか」
「リーダーよ、渡そうと思ってたものがあってな」
ハゲが持ってきていたカバンから何かを取り出した。手紙?
「帝国諜報部隊?だかの奴から貰ったんだがよ」
受け取りながら、封を開ける。
「・・・・・・」
なるほどなるほど。これは、いい話だ。
「瞳、ハゲ、明日誰にも悟られず帝城に侵入しろ。そんで宰相に会ってこい」
「?」
「分からなかったか?もう一度言うぞ」
「言わなくていい」
「お前バカか?」
「失敬な。この手紙が宰相からのモノで、話がしたいそうだ。俺が行くより、二人の方が楽だろ?」
俺も気薄使えるけど、この二人や暗殺部隊程の熟練度はない。俺は俺で別のことを進める。
「暗殺部隊って、連絡手段持ってる?」
「あーあるぞ。念話ってスキルだ」
「瞳、使える?」
「使えるようにした」
「わかった。なら俺も使えるな。部隊全員に通達しといてくれ。帝都にいる間は俺からの直接命令が入るって」
「・・・伝えたぞ」
「とりあえず今日は終わりだな。牡丹さん、寝る前に例の本を関係のある奴に渡しといて」
「了解しました」
「そんじゃ解散。おやすみ〜」
今日やるべきことは終わった〜。寝て明日に備えよう。
布団に入り込むと、三人の気配が消えたのがわかる。ハゲと牡丹さんはギリギリ追えるけど、瞳の気配だけ掴めないんだよなぁ。




