5話 代償と未知の力
「第二ラウンドだ」
それを合図に、ラフレシアとギロチンが発動する。
どちらも大したダメージにはならない。そんなのは知っている。
「畳み掛けろ!」
「エクスプロージョン!」
「水刃竜!四つ首!」
「風鎌乱舞!」
「スターソード・デュアルエミッション!」
「剣聖流剣術・弐ノ剣 飛閃連光」
「三條家相伝槍術・穿蜂」「アルバ!息吹!」
櫻井はいつもの。新井は少し改良を加えた攻撃を。嶺さんは鎌を振るい風の斬撃を飛ばす。乃恵さんは二本の剣から光の奔流が。瀬戸も息が途切れるまで続く連撃。三條さんは魔力で生成した槍を渾身の力で投擲、それに合わせるように竜王に息吹を命じる。
「織田!」
「全軍、攻撃態勢!構え!」
煙が晴れたら攻撃させるため、軍へと指示を出す。
煙が晴れると、所々に傷を負った山脈竜の姿が。
「攻撃開始!」
オオオオオオオオオオオ!!!!!!
織田の号令の元、軍が突撃する。
弓や簡易バリスタ、大砲による遠距離攻撃。
槍による刺突。身軽な部隊は、山脈竜に登り背を攻撃する。
常にゴンドラと共に行動する為、山脈竜の攻撃はかすりもしない。
ちなみに、指揮を出す俺と佐伯だが、俺は山脈竜の正面に立ち続け、佐伯はユーテリアさんと一緒にフェンリルに乗って移動する。
戦闘開始から2時間。未だ山脈竜は健在。
公国軍は魔力切れや負傷によって数を減らしている。
俺達、暁ノ守人のメンバーも疲労が伺える。
「兄さん、萌々香が限界って」
「了解。伝達する」
最初はやっぱり萌々香さんか。そりゃそうだ。軍にも俺達にもバフと回復を掛け続けてるからね。
次に落ちるのは多分
「優騎!新井も限界だ!」
佐伯から報告。予想通り、新井が限界。
ゴンドラを維持し続け、自身も攻撃に回る。相当な消費だろう。
このまま行くと、継続して戦闘できるの俺と竜王なだけな気がする。
「仕方ない。やるッ」
1歩前に出ようとして、叫ぶ。
「下がれ!」
山脈竜の攻撃を察知した。範囲はさっきまでと比べ物にならない。
背中に背負う山脈にヒビが入る。そして、それが弾け飛ぶ。
「キャッスルシールド!!」
咄嗟に反応できた衛司が、戦域全体を守るように障壁を展開した。
「撃ち落とせ!落とせないなら削れ!被害を抑えろ!」
織田、佐伯、俺の三人からの同じ指示。全員が我に返り動く。
「兄さん!」
「優騎!山脈竜が!」
瞳と牡丹さんの焦りを含む声を聞いて山脈竜を見る。
「ざけんな!」
息吹の準備に入っている。それも寸前だ。
全力を防ぐ手立てはない訳では無い。
「チッ!」
舌打ち一つ、駆け出す。
「兄さん!」
俺の行動に気付いた瞳が止めようとするが、無視する。
「護法一天・帝釈天!」
輪転は使えない。使えば動けなくなるから。
ゴウッ!
踏み込もうとするのと同時に、山脈竜から息吹が撃たれる。
「クソッタレ!」
右手に纏う雷を集中、息吹にぶつける。
「うぉぉぉぉおおおおおお!!!」
軍やクラスメイト達が、衝突の余波で姿勢を崩す。
「ブレイブハート!ソウルハウル!ライオンズソウル!」
絞り出すよう、それでいて力強い声が優騎に届く。それは萌々香によるバフ。この局面で更なるオリジナル魔法まで。
「宮廷護身格闘術!護法三天・焔摩天!」
雷が消失し、新たに漆黒の焔が右手に宿る。
護法三天は特殊で、一天か二天から繋げるようにしないと発動できない。
その焔は、息吹を飲み込み、掻き消す。
「護法二天・火天!」
炎を攻撃ではなく、推進力として利用。山脈竜の懐に潜り込む。
「ここなら柔らかいよな!」
推進力そのまま、攻撃力へと転換する!
「護法輪転・火天!」
優騎の身体が、太陽の如き熱量と光を発する。
「撃ち抜き!焼き尽くせ!祭火は牙を剥き地を焦がす!」
推進力を得たその一撃は、山脈竜を宙へと持ち上げる。
しかし、まだ死なない。息吹を再度放とうとする。
「させない!」
悲鳴をあげる身体を無理矢理酷使する。血管が裂け、血が吹き出るがそんなのは無視する。
残る炎をもう一度推進力に、山脈竜より上へと跳ぶ。
「これで!宮廷護身格闘術!護法四天・羅刹天!」
優騎の右手が黒く染まり、その手には刀が握られる。
「切り裂けぇぇぇぇ!」
優騎の動きを捉えられていない山脈竜の首へと、その刀を振り下ろす。
斬!
抵抗することなく、その刃は首を断つ。
「竜殺し、男の夢だよな」
そう呟いて、優騎の意識は途切れる。
一方で、一連の攻撃を見ていた者は
「まじかよあいつ!」
「やりやがった!」
「あの巨体を打ち上げた!?」
「彼は何者なんだ!?」
等々、驚きと歓声に包まれていた。
しかし
「三條さん!兄さんを!」
瞳の珍しく焦った大きな声に、三條はハッと気付く。優騎が、自由落下していることを。
「アルバ!」
急いで救助に向かう。
そこでもう一つ気付く。落下してくる巨大な死体に。
「全員!退避ー!!」
一瞬訝しげに首を傾げるが、上を見上げ理解する。そして、我先にと逃げ始める。
「どこまで下がればいい!?」
「知らん!とにかく離れろ!」
「対処法伝えてから殺れよな!?」
「さすがは優騎だな!」
「おめぇら本当に訳わかんねぇ!!」
「走るの、勘弁、して欲しい!」
楽しそうに走る者、文句を言いながらも笑顔な者、驚愕しながら走る者、戦闘の疲れで息も絶え絶えに走る者、それ以外にも沢山。何かしら叫びながら走る。
ズゥゥゥゥン
そして、山脈竜の死体が落ちて、周辺を揺らす。
揺れが収まり、山脈竜の死体を改めて確認。
「ちゃんと死んでいるな」
死亡確認。
うぉぉぉぉおおおおおお!
やったぞ!生き残った!
いやったぁぁぁぁぁぁ!
等、そこらでまた歓声があがる。
その声で、優騎も目を覚ます。
「ちゃんと終わったか?」
「終わったよ」
「そうか良かった」
「っ!」
微笑む優騎。それを間近で見た三條さんは、顔を赤くする。
「お、降りるよ」
竜王に指示を出し、地上へと降りていく。
「今のはやばい。なんて破壊力!あーどうしよ、落ちたかも」
なんて考えながら。
余談だが、優騎達が通っていた学校には、瞳のファンクラブと同じように、優騎のファンクラブも存在する。理由は簡単、優騎がイケメンだから。細身で高身長、運動も勉強も好成績。身体は締まっている。そして、瞳の傍にいる時といない時のギャップに、多くの女子がやられた。女性教師もやられた。一部の男子も惚れた。あ、そっちの意味ではない。普通に慕っているだけだ。
というわけで、そのファンクラブの一員の三條さんからしてみると、今の微笑みはとても良いのだ!
「竜の肉美味いのかな?」
「知らないのか?三大美食の一つだぞ?」
「何?」
「竜の肉、龍の肉、白鯨の卵」
「竜の肉が二つ…あ、片方は龍か」
そして、宴がひらかれる。参加するのは、暁ノ守人傭兵団、ギルドマスター、アレスター公国の軍隊、ギルマスの要請に応えたいくつかの傭兵団。
数人が酒や調味料なんかを取りに戻り、盛大に飲み食いする。
傭兵団同士の交流はもちろん、騎士達との交流もあった。
瀬戸の剣術は、騎士や傭兵団に人気だった為、ちょっとした稽古が始まった。
蒼斗やカンニバルさんの方も、魔法の交流会が行われ、知識を深める。
萌々香さんは、聖女ということもあって、神官達に囲まれていた。オリジナル魔法のことを聞かれているらしい。
生駒さんと三條さんのところにも、騎士や傭兵団の人たちが。注目はフェンリルと竜王だ。
他にも、それぞれの所で集まりができている。
それらを、俺、瞳、牡丹さんは気配を薄め眺めている。
「兄さん、大丈夫?」
俺が動けないから、囲まれて休めない状況を防ぐためにこうしているのだが。
「ちょっと連発し過ぎたかな。羅刹天もだが、そこから先はまだ駄目らしい」
宮廷護身格闘術・護法十二天
前世で教わった格闘術。護身術であると同時に、敵を攻撃することの出来る格闘術。師匠には、軽々しく使用するなと言われてきたが、結構使用しているんだよなぁ。怒られないか?
前世で使用していた時は、ここまでの技だと思っていなかった。この世界に来て、初めて知った。
護法一天は、最初から使えていた。護法二天は、無月が如月になった時。そして、三天、四天は
「弥生になったおかげか、反動は多少マシだしな」
悪魔族を倒した時だろうか?如月が弥生に変化したのは。その影響で、三天、四天が解放され、それ以降も一応使用可能となっている。だが、四天以降は全てが赤く表示される。
これはステータスに表示されるのではなく、頭の中に表示されている。何故か分からないが、宮廷護身格闘術は、スキルとして扱われていないらしい。
「それらしいスキルについて、調べてみましたが、情報は見つかりませんでした」
短時間で調べてきた牡丹さんが、そう報告する。
「まぁ、他の国に行けば何か分かるかもしれないからいいよ」
「それ以外に、情報は?」
「いくつか面白そうなものは」
牡丹さんが取り出したのは6冊の本
一つ目、勇者と英雄王
二つ目、禁忌と魔王
三つ目、剣聖と剣王
四つ目、聖女と天女
五つ目、悪魔族と悪神の関係性
六つ目、勇者召喚による影響
「へぇー」
面白そうな物と、どう考えても自分たちに関連のある物。
「どこで見つけたの?」
「古本屋です。店主曰く、文字が古く読めないそうで、ここにあるのは全て最初で最後の本だそうです」
「つまり原本?」
「はい」
文字が古いのも納得かも。いつの時代の本か知らないけど、文字が変化しているかもしれないし、この世界の文字じゃ無いかもしれない。
「この世界って不思議だよな」
「?」
「俺達の称号は誰がどうやって決めてるんだろうな。スキルの取得条件ってなんだろうな。何故、悪魔族は異世界から来た者にしか倒せないんだろうな。」
疑問は尽きない。悪魔族の無害派というのも気になる。何をもって無害とするのか。
そもそも悪魔族は敵なのか?いつから奴らは現れたのか。
「まぁ今気にしても仕方ないけどな」
そのうちわかるだろう。
「今は、楽しむ時だ」
「動いていいの?」
自力で立ったことに驚かれる。
「今後もこうなることはあるだろうしな。その為に、少し慣れておこうと思ってな」
身体を動かしている原理は、魔力による身体操作。
過去の魔女のオリジナル魔法で身体操作魔法だそうだ。菅=原さんが話してるのを聞いた。
「あ、兄さんステータス」
瞳に言われ、ステータスを見るとスキル欄に、身体操作魔法と魔力操作が追加されていた。
「この世界に来て、初めて自力?で取得した気がする」
「疑問形になるあたり、違う気がする」
うん。確かに。
「さぁ、俺達も楽しもうか」
気薄のスキルを解除して、宴の席に混ざる。
「お、やっと来たか!」
「おせぇぞ!主役」
「女連れなんて、いいご身分だ、ゴファ!」
馬鹿か。佐伯以外で初のリバーブローの被害者。櫻井か。
「ちょ、ちょっとしたジョーク」
「問答無用」
「なぜ…だ…ガクッ」
あ、気絶した?まぁ腹の中のもん、吐くより全然いい。
萌々香さんも態々、回復はしないらしい。
周りの皆も華麗にスルー。佐伯だけは、仲間を見つけたと、櫻井を暖かく見ている。
ちなみに、瞳はいつものようにリバーブローしたが、牡丹さんは赤くなって動いていない。
「優騎の女?…つまり彼女?そ、それは…」
ぶつぶつ言ってる。聞こえないから気にしない。聞こえても気にしちゃダメ。
優騎のファンというのは割と多い。同学年は、全体の4割程がファンで、残り6割がガチ恋勢だ。
バレンタインの日は壮絶。あの優騎が学校から逃げるように帰宅したことから、想像できるだろう?
ホワイトデーは、優騎が瞳を守った為、なんともなかったが。
それはさておき、つまり、牡丹さんは6割の1人なのだ。三條さんは4割の方だったが、ついさっき…
それを知ってて弄った櫻井は、まぁ、ああなって当然なのだ。
そんな騒ぎも、余興に思われたのか、さらに賑やかになる。
一芸披露会、力比べ、お見合い、等々。
夜が更けるにつれて、盛り上がりは最高潮へ。
馬鹿な男共は、下ネタトーク。それを蔑みの目で見る女性達。一部、それで興奮してる奴がいて、ドン引きされていた。
女性は女性で、恋バナに花を咲かせる。ユーテリアさんの佐伯惚気から始まり、女騎士の夫が根性無しだなんだ、夫婦で経営してる武具屋の息子が、ライバル店の娘に惚れてるだとか。
あ、お見合いの席でくっついたペアは、物凄い眼差しで見られながら、同僚に弄られている。
幸せなのは良い事だ。
宴は続く。月が沈み、陽が昇るまで。
「総員!帰宅せよ!」
プレドラさんの指示で、酒を片手に帰路に着く。
まだ飲み足りないのか。まぁ、二次会がどうとか言ってるのもいたからなぁ。
俺達はと言うと、ハゲ率いる、元暗殺者集団を仲間にし、帝国へと向かっていた。
「あたまが…」
「どうした?髪なくなったか?」
「うるせぇ!元からねぇ!じゃない!ウッ」
叫び出したと思ったら、急に蹲る。
「叫ばせるな頼むから」
「はいよ」
物の見事に二日酔いである。暗殺者としてどうなの?
人数が増えた為、部隊に分けることにした。
俺が総隊長。
瞳を隊長に、牡丹さんとハゲが副隊長、元暗殺者集団の面々による諜報暗殺部隊。
佐伯を隊長に、勇者組4人の精鋭隊。
織田を隊長に、三條さん、生駒さん、衛司、瀬戸、菅=原さん、蒼斗の遊撃隊。
萌々香さんを隊長に、琴吹さん、八葉さんの医療部隊。
ガルガを隊長に、柳、美和さんの生産部隊。
需要に対して供給が間に合わなさそうだな。生産部隊の人数少ないから。
医療部隊の方は、萌々香さんのオートヒーリングがあるからなんとかなる。
三條さんと生駒さんは遊撃隊に分けたが、場合によっては独立した部隊として行動することになる。
瞳が隊長になった理由は、勘だそうだ。
スキルもそうだが、気配を隠したり、察したりするのが異常なレベルらしい。妹が凄い!だけど、本当に将来が心配です。
帝国まであと2日!頑張って歩…
竜王とフェンリルに乗っていく?だから一日も掛からない?了解。
道中、トラブル無いといいね。
というフラグを見事回収するのは、数時間後の話。




