4話 敵と仲間
「なぁ優騎」
「なんだ佐伯」
「異常事態じゃね?」
「異常事態だろう」
何が起きているか説明すると
「なんでベアーこんなにいるの?」
ざっと数えて26。情報によれば、3頭程の家族で行動することはあっても、それ以上の数、つまり群れでの行動はしない、らしい。
「ただ、群れで行動って感じでもないんだよな」
「だな。なにかから必死に逃げてるような、そんな感じ」
最初は対処しようとしたが、ベアーから戦闘の意思が感じられなかった為、攻撃は仕掛けていない。
「後ろに着いてきてるんだが?」
そう、何故か俺達の後ろにいるのだ。様子を伺うようにして着いてくる。
逃げてるんじゃなかったの?
「お兄、嫌な感じ」
「全員、警戒態勢、気を引き締めろ!」
……
「何か聞こえるな」
「それに、なんか揺れてない?」
……ドシン
「デカイな」
バキバキバキ、ズゥン
「なにこれ」
視界に映ったのは、超巨大な山のような何か。
「何故こんな所に、山脈竜がいる?」
竜王アルバ・ムートがひょっこり顔を出しながら首を傾げる。
可愛いな。
「山脈竜?」
「五大竜の一体だ。竜王の座に最も近いとされる竜。我が神竜に至れば、奴が竜王だ」
「うちらで勝てる?」
「勝てると思うぞ?そこの小僧の指示次第だがな」
竜王は俺を見ながら、そんなことを言う。
やめて。指示出すの俺じゃないから!
「全員、森を抜けるぞ!走れ!」
全容が把握出来ないため、一旦高原まで下がる。
その途中。
「くそ!なんでお前らはトラブルに巻き込まれてんだよ!」
ハゲとその仲間とであった。森にいたが、山脈竜を見て逃げてきたらしい。
丁度いい。
「ハゲ!公国に戻って、このこと伝えろ!軍を動かさせろ!」
「うるせぇ!言われなくてもそうする!」
「それと、お前ら全員俺らの傭兵団入らない?」
「は?!こんな時に何言って」
「いいから決めろ!」
「あー?わかったよ!入ってやるから!」
「よし!牡丹さん、ハゲの護衛!狙われるようなら、返り討ち、殺してもいい!」
「了解」
「生駒さん!ベアーに召喚契約を!」
「できるんか?」
「やるんだよ!」
「無茶言わんで!」
と言いつつ契約してるし。
「ハゲ!そこのベアーは契約獣だから安全。連れてけ!」
「あいよ!」
ベアーに乗って、ハゲ一行は公国へと戻る。
「三條さん!竜王を!」
「わかってる!」
「我、汝の呼び掛けに応えよう」
「飛翔せよ!竜王アルバ・ムート!」
三條さんの胸ポケットから飛び出した、竜王の身体が光、元の体躯へと戻っていく。
「山脈竜よ、何故ここにいる」
「……」
「待て、何故お前が死んでいる?」
山脈竜に話しかけた竜王が不吉なことを申したぞ。
「おや、こんなところで竜王に出会えるとは。幸運ですね」
誰かいるな。それも山脈竜の上に。
「誰だ貴様」
「私、悪魔族のベルと申します。お見知り置きを」
悪魔族。この星の平和を脅かす敵か。
「貴様が殺したのか?」
「いえいえ。私の上司が殺りましてね。これを使って国を滅ぼしてこいと。次いでにそこの勇者達を」
悪魔族の男?が降りてくる。
「三條さん!竜王と一緒に山脈竜の相手を!」
「了解」
「生駒さん、いつもの」
「わかってる」
「竜王の援護に」
軍師が手早く指示を出す。
「瀬戸!フェンリルに乗って、三條さんの援護!」
「了解!」
「戦闘職じゃないのは、衛司の後ろに!任せるぞ!」
「おう!」
「残りのメンバーは、佐伯の指示の下、悪魔族と戦闘用意!」
「ブレイブハート、ソウルハウル、オートヒーリング」
「風鎧」
「水陣」
「スターソード」
それぞれが、自身や仲間にバフをかけていく。
まぁ、時間かけるつもりは無いんだけどな。
「宮廷護身格闘術・護法輪転・帝釈天」
奥義?の一つを準備する。
そして、ベルと名乗った悪魔が動くと同時に、左肩から先が落ちる。
「は?」
惚けた瞬間に
「霹靂の如き怒りを以て鎮まれ!」
がら空きの胴へと拳を振るう。その手に握るのは、インドラを象徴し雷電を操る法具、金剛杵。
護法輪転は、通常の一天・帝釈天と違い、力だけでなく、象徴する法具を呼び出すことができる。
但しそれは、諸刃の剣でもある。
「グオオオオオオオオオ!簡単にやられる訳には!!」
身体を霹靂に焼かれながら、ベルは反撃しようとする。
「ぶち抜けぇー!」
白い霹靂が、赤く染まっていく。
「「サンダー・The・ザンバー!」」
優騎の一撃と挟み込むようにして、雷の刃が落とされる。
雷の刃は、金剛杵から迸る赤い霹靂によって、赤く強化され、ベルの身体を焼き切る。
「帝釈天・輪転」
それと同時に、優騎は術を解除する。
「萌々香さん、回復お願いできる?」
見れば優騎の身体は所々が焼けており、金剛杵を握っていた右手は、真っ黒に焦げている。
「そのレベルの怪我は初めてだよ。ヒール、カルテ。うん、後10秒待ってね治るから」
またオリジナル魔法、カルテ。対象の状態を確認し、異常があれば検知する魔法らしい。
「山脈竜の方は?」
「見た感じは大丈夫かな?悪魔族の方を直ぐにやれたから、余力も人数も十分」
後方から確認している萌々香さんに状況を聞いていく。
「優騎、いけそうか?」
「もう少し待って」
織田が、小走りでやってくる。なにか作戦があるようで
「さっきのもう一回いける?」
「いぇすかのーかで言えばいぇす。いける」
「その後どうなる?」
「一日は動けなくなる」
「その反動は、回復で緩和できない?」
「無理だね。この世界来てわかったけど、この技の反動は、人の身を超えた力を行使する代償だから」
「わかった。普通に行こう」
作戦会議?も終わり、前線に戻る。
「三條さん、竜王、削れ具合は?」
滞空する竜王の元へ、一足で跳ぶ。
「うぇ!?」
「む?あぁ、恐らく2割ほど削れたか?数値化されているわけではないから、正確ではないと思うがな」
「そりゃそうか。ゲームじゃないんだし」
今はまだ良いが、こちらの魔力や体力が尽きるのが先な気がする。
「やっぱ無理するしかないか」
そう思い、力を行使しようと飛び降りた時、何かを視界に捉えた。
「ん?」
「戻りました」
「うおっ!?」
いきなり、正面に牡丹さんが現れた。ということは
「ハゲと公国の軍か」
「そうです。次いでに、襲ってきた奴も参加させてます」
戦力は2万程か?十分だな。
「ユーキ!戻ったぞ!」
ハゲから声が掛けられる。
「マスター直々に指揮か?」
「いや?私に指揮はできないよ。そちらの軍師殿に任せる」
「え?この数を?」
「織田、お前はそっちの指揮に集中して。こっちは佐伯と俺が指揮する」
「りょ、了解」
織田の指揮で、軍が陣形を変えていく。
正面に展開することなく、側面に挟み込むように。
「萌々香さん、全員にバフいける?」
「…やります。オートヒーリング、ソウルハウル、ブレイブハート」
軍にもバフを掛け、萌々香さんは下がる。
「水陣、ゴンドラ」
新井の新魔法ゴンドラ。移動手段のない戦闘員のため、水陣で構築された水路を移動する。
動力は特に無い。乗った人に任せ切りである。
「炎挺」
「スターソード・デュアル」
「風鎌」
櫻井は移動砲台になるようだ。
乃恵さんは、スターソードを二本持ち。
嶺さんは、風を収束させた鎌を顕現させる。
「「ラフレシア、セット!」」
「「ギロチン、セット!」」
蒼斗とカンニバルさんが、遅延設置型火魔法と遅延設置型闇魔法を設置。発動条件を少し弄る。
各々が、再度バフを掛け直し備える。
悪魔族の方を警戒しなくていいと踏んだ衛司が、山脈竜を抑えていたが、限界のようで後ろに下がってくる。
「すまん。そろそろキツイ」
「少し休め」
衛司が下がり、変わるようにして正面に陣取る。
「第二ラウンドだ」




