2度目の人生で1度目の異世界召喚
俺の住んでいた国は、戦争に巻き込まれた。争いを好むクソッタレた国によって。
そんなもの好んでなんになる。そんなことして何の意味がある。俺と、俺の家族の幸せを奪っていった事を許すわけが無い。だから俺は、幸せを守るために立ち上がる。
俺達家族は追われる身。国は滅び、民は裏切り、味方は僅か。その味方も、日を追う事に少なくなる。
俺達を逃がすために、騎士団長が囮になった。
「何やってんだよ団長!」
「振り返るな!止まるんじゃねぇぞ!」
魔獣から逃がすために、魔法師団長が囮になった。
「ここは僕に任せて!安心してください!姫を射止めるまで死にませんから!」
「妹はやらんぞ!?」
追手を足止めするために、多くの仲間が散っていった。賑やかな奴らだった。誰一人悲しそうな顔をしなかった。皆、笑って逝った。
そして、妹を助ける為に父と母は捕まった。俺と妹も捕まり、目の前で親を殺された。それも見世物にされて。
俺は全てを憎いと思った。妹も同じだった。だけど、俺達が復讐することは叶わない。憎むべき相手が死んだから。俺達が何かをしたわけじゃない。唐突に死んだ。本当になんの脈絡も無く死んだ。分からなかったが、俺達は必要な物だけを揃えて、すぐに逃げた。そこにいてはダメな気がした。だから逃げた。どれくらい離れたのか。後ろを振り返ると、まだそれ程離れていなかった。
平原に面する国だからか、距離感がいまいち掴めない。その国を黒い靄が包んでいた。その靄の正体は知ろうともしないし、知りたくもない。だけど、想像だけはついてしまった。
そうあれは、一族を庇護する霊獣の成れの果て。
父と母の前に、その霊獣も殺していた。そう理解した。
一晩たった。疲れて寝てしまっていた俺達は、すぐには動けなかった。ここまで逃げてくる間に、足は傷だらけ、食料も少なく、水も尽きた。動かなければ、食料を、水を探さなければ。俺は死んでもいい。せめて妹だけでも。
だけど、世界はそんなに優しくない。俺達2人は程なくして死んだ。沈む意識の中で、それだけは認識できた。
そして俺達は、見知らぬ世界で目を覚ます。
そこは豊かな国だった。文明は発展し、魔法の代わりに技術が世界を支えていた、
その国で俺達2人は生活を始めた。最初は慣れるのに時間が掛かったが、暫くすると友人も出来、アルバイト?をしてお金も安定するようになった。
俺達は、孤児ということになっていて、名前もない。だから、俺達を養ってくれている人から、名前を貰った。
妹の名前は瞳。綺麗な澄んだ青色の目から取ったようだ。そして、俺の名前が優騎。妹を守る騎士であると同時に、優しく強い子になるように、とつけられた。
義母の…マリアのおかげで俺達は学校に通い始めた。中等教育?からスタートだと言っていた。
確か中学校。マリアが校長を務める学校だとか。
瞳も俺も勉強を頑張ったと思う。それなりの高校に進学して、それなりの生活をしていた。
高校で瞳は大人気。高校の3大美女とされ、男子からはチヤホヤされていた。告白するやつも少なくない。それで女子に疎まれるなんてことはない。逆に女子達が瞳を男子から守るように動くのだ。
時々過激なのがいるが、それらからは全て俺が守る。振られたことにキレて、暴力を振るおうとした奴は、1週間学校を休んでもらった。一部の女子の嫌がらせを止めたこともあった。
そんな俺に、少し赤くなって離れない瞳。周囲の女子からは黄色い声、男子からは嫉妬と羨望の眼差し。よく分からないが、瞳が無事ならそれでいい。
ついたあだ名は姫専属騎士。まぁ名前にも騎の文字あるしな。瞳の傍にいる姿からつけられた。そして、瞳は姫様と呼ばれた。学校の先生もその名前で呼ぶもんだから、学祭での出し物の時はびっくりされた。
賑やかに過ごしながら、順調に進級して2年生になった春。俺達はまたもその幸せを奪われる。
「貴方達にこの世界を救って欲しいのです」
異世界転移物にありふれたセリフを聞くことになるとは。
一部の男子は興奮した。女子の中にも数人はいたようだ。
嬉しそうなところ悪いけど、聞かないとならないことがある。
「発言させて頂いてもよろしいでしょうか?」
俺は、片膝を着いて声を出す。前世?の俺の国で、騎士達がやっていたそれを真似する。
「ええ、どうぞ」
「ありがとうございます。まず、私の名前は優騎と言います。元の世界では、孤児でしたので苗字はありません。貴方様のお名前をお聞きしても?」
「私の名前は、ユーテリア・ハイ・ミステス。ミステス王国の第一王女で、巫女と呼ばれています」
「お答え頂き感謝致します。ユーテリア様、確認なのですが、私達が元の世界に帰ることは可能なのでしょうか?」
「…なるほど。貴方は頭が回る方なのですね」
「いえ、それほどでもありません。他にも聞きたがっている者はいますが、この状況に少し臆しているのでしょう。その者達の代弁でございます」
「質問の答えはノーです。あちらの世界に帰ることはできません。できたとしても、既に貴方達の存在はなかったことにされていますから、辛い思いをするだけかと」
その一言で、何人かは泣き崩れた。泣いていないのは、男子達と一部の女子。ショックで言葉を失っているんだろう。瞳は涙を堪えるように俺にしがみつく。マリアさんに何も言えなかった上に、忘れられているという現実に。
「申し訳ないと思っております。ですが、我々もなりふり構っていられないのです」
そこからユーテリア様による、説明会が行われる。
曰く、魔族が侵攻してきてる。
曰く、魔族は破壊の権化。
曰く、魔族は悪神の眷属で、この世界を滅ぼそうとしている。
曰く、魔族を倒せるのは勇者のみ。
曰く、勇者とは異世界より訪れた者にのみ与えられる称号。
曰く、過去にも勇者召喚は行われている。
曰く、ユーテリア様の血筋は過去の勇者のもの。
「ということでしょうか?」
「まとめるとそうですね」
長いユーテリア様の説明を俺が短く要約する。そうすることで、クラスメイトは理解出来たようだ。
「勇者の称号はどうやって確認されるので?」
「場所を変えねばなりませんので、ついてきていただけますか?」
先導するユーテリア様と騎士の後ろをゾロゾロついて行く。
辿り着いたのは礼拝堂?
「ここで神より称号を賜ります」
女神像を示し、ユーテリア様が道を開ける。
「ここは僕から行こう」
クラス委員長の佐伯。学校一のイケメン。瞳のファンクラブ会長らしい。
委員長の体が光り、それが収まる。
「結果は?」
「先導者?勇者達を率いる者、とあります」
「本当ですか!?」
「え、えぇ」
「これは良いかも知れません。国王と神官長を呼んでください!」
余程のことなのか、ユーテリア様、めんどいな、姫様が興奮しながら騎士に告げる。
国王と神官長が来るまでの間も、称号の付与?は続く。
クラス委員長、佐伯尚登・先導者
陸上部のエース、嶺咲良・風の勇者
茶道部部長、琴吹鈴燈・豊穣の巫女
サッカー部キャプテン、櫻井遼・炎の勇者
水泳部エース、新井亮真・水の勇者
保健委員長、佐藤萌々香・聖女
興奮が大きかったのはこの6人。光の勇者は先代が居るため現れなかったが、光の勇者候補はいた。
保健委員の副委員長で佐藤乃恵、萌々香さんの双子の妹だ。
それ以外にも守護者、魔導師、修道士、軍師、剣聖見習い、魔女、召喚士、竜騎士見習い、鍛冶師等が現れた。
そんな中でも異質なのが俺と瞳。
俺はアンノウンと無月。瞳はアンノウンとNo luckとBad luck。 あまりにも異質。1人1つのはず(説明を追加で受けた)なのに複数。さらにその1つがアンノウン。不明とでる。混乱するのも分かる。
俺と瞳が一番混乱してるよ。
「と、とりあえず、本日はお休み下さい。部屋にはメイドに案内させます。明日もまた、この場所でお集まり願います」
そうして今日のところは解散。食事は、各部屋に運ばれ、風呂は大浴場(ちゃんと男女別)。就寝となる。
この世界には時間と日付という概念がしっかりしていた。過去の勇者に、季節の代弁者と時の番犬という称号もちがいたそう。その影響らしい。しかも俺達と同じ星の生まれっぽい。
召喚された翌日から、俺達はこの世界の事を勉強した。成績優秀者で固められたこのクラスは、問題なくこの世界の事を理解した。
創造神ケリュ
大地母神リューテ
天空神ドジリス
この3神が主神。によってこの世界は造られた。
周辺の大国・商業中心国家、獣人国レクリオス、帝国ミリタリス、森人国アポレス、海底国ウィリウス、天空島シリウス、地底都市フォールスの7つ。
若干、一つだけ違う気がするが、国として扱ってるそう。
宗教・3神を崇めるケリュテ教、ケリュを1番とするケリュケイ教、リューテを崇めるマルタ教、ドジリスを崇めるエアレス教 これが世界4大宗教。仲が悪いとかそういうのはない。が、一部例外有り。
貨幣
ミル銅貨1枚=10円
ミル銀貨1枚=100円
ミル金貨1枚=500円
ミル紙幣1枚=1000円
ミル銀紙幣1枚=5000円
ミル金紙幣1枚=10000円
ミル白銀紙幣1枚=100000円
ミル白金紙幣1枚=1000000円
これは各国で使える共通貨幣。過去の勇者が、各地で活動しやすいようにと、発行された。
爵位
男爵、子爵、伯爵、侯爵、公爵の順
男爵の下には騎士伯、辺境伯
伯爵と侯爵の間に、名誉侯爵の位も存在する。
魔国
自称無害派魔族による国家。魔族が暮らしている。自給自足を行う国で、商人からは評判がよかったりする。
それで、その辺を調べていたらとんでもない情報が。
委員長、佐伯や嶺さん、琴吹さん達は指導者の元、戦闘訓練を行っている。しかし、俺と瞳は軟禁されている。
理由は称号のアンノウン。国王と神官長が俺達を始末しようとしたところを、佐伯とユーテリア様が阻止。暫くの様子見を行っている。
でだ。クラスの1人に忍者の称号を持つ人がいる。
霧隠牡丹というのだが。うん。そう、霧隠才蔵の血筋。その人が言うには、俺と瞳を暗殺しようとしている。更に、裏では悪魔族と繋がっている。らしいよ。
緊急クラス会議。
「どうする?」
「瞳ちゃんを殺すのはちょっと」
「というか、敵である悪魔族と繋がってるのは」
「いただけないよね」
「じゃあ脱走かな?そんで反乱」
「やっちゃいましょう!」
「…姫様」
「ユーテリアでお願いします。佐伯様」
「………ユーテリア」
「はいなんでしょ」
名前で呼ばれたことにウッキウキだ
「それでいいの?」
「構いませんよ?好きな人に着いていくのは当たり前。それに、この国好きじゃありませんから」
そういうことで脱走。
牡丹さんを先頭にして王国を脱出。その後、森や山で修行。武具に関しては、鍛冶師持ちの人に頑張っもらった。名前はガルガ。こっちの世界に来て、名前を変えたそうだ。なるほどそれはありだな。
修行と言っても、各々の力を正確に判断する為。王国では、まだ初歩の事しか学んでないからね。
力の制御を覚えて、魔法も覚えた。
俺と瞳は自身の称号について調べた。
俺の結果
無月・成長すると変化する
スキル
浸透共有
瞳の結果
No luck
Bad luck・バッドラック(頑張って!)
スキル
浸透共有、天属使者(全属性魔法使用)、体術、千里眼、感知、消音、消臭、気薄、召喚術、使役、対話、格闘術、炊事洗濯(各家庭に1人欲しい)、話術
この差よ。兄は悲しい。誰だ、各家庭に1人欲しいとか言ったの。…はい、俺ですね。
なんて言うかすごいね。佐伯達ですら、持ってるスキルは2つか3つ。流石妹!兄は鼻が高い。ん?あってる?間違ってる?まぁいい。
反乱実行日は明日。王国を滅ぼすそうです。どうしてそうなった。
ユーテリア様が国民に色々聴き込んだ結果こうなった。というか、国民の殆どが死人、ゾンビだったらしい。ほんとどうなってんの?
風の勇者である嶺さんが、周辺国家に確認したところ、OKを貰えたそう。報酬金もあるって。あと、傭兵団結成を勧められた。終わったら登録しに行こう。
というわけで実行日。
炎の勇者櫻井の一撃から開幕。
「エクスプロージョン!」
某アニメを真似たかったらしい。
門を破壊し、城下町の一部を消滅。開幕の一撃としてはやりすぎ?いや、いいのか?この世界の常識知らんからいいか。
何?魔導師の杖?あ、なるほど。杖を使って魔力の精密操作ね。結果アレか。
その後、風の勇者嶺さんと水の勇者新井が先陣を走る。嶺さんは風を纏って、拒む敵を切り裂き、吹き飛ばす。新井は水流を使い、ゾンビを飲み込む。そして、鋭い水刃で切り裂く。
嶺さんのはオリジナル魔法で風鎧、新井のもオリジナル魔法で水刃竜。櫻井のも同じ、名前はエクスプロージョン。まぁ異世界だし、著察権はいいだろうけど。まぁいいか魔法の概要は違うみたいだし。
炎の塊を設置し、そこに水素を落とすと。水素を落とすって何?というかヤバくない?え、ヤバくない?汚染は?あ、魔力で補ってるから無害。いや無害ではないね。その後が心配ないだけか。
他の皆もスキルを活かした戦いをする。
牡丹さんは夜襲か。まぁ忍者だし。クナイとか持ってるんだ。でもさ、それって逃げるためとかの道具では?人を倒すためのものじゃ…。え?クナイじゃない?小太刀?まって、今持ち替えたでしょ。誤魔化せないよ。あ、逃げた。
怪我をしたら聖女の萌々香さんの所へ。オリジナル魔法で、オートヒーリング。つまり自動回復。戦闘続行。いい笑顔で「いってらっしゃい」だってさ。鬼畜かな?
剣聖見習いは光属性を纏った剣で敵を浄化。実家が剣術道場とか言ってたからその流派かな。
「剣聖流剣術」とか言ってる。それ実家の?ほんとに?
魔女の人は複数属性の混合。オリジナル魔法、スターライト。光と雷の合わせ技らしい。光の柱が標的に降り注ぎ、動きを阻害。そこへトドメの雷撃。ゾンビ相手なら光だけでいいのでは?
軍師は後方で作戦指揮。まぁ地味っちゃ地味。仕方ないよね。派手さはないけど、重要だから。
竜騎士は、まだ相棒がいないが、槍術が目を引く。一突きだと思ったら三連突き。正面と思ったら側面。あれは変則すぎる。
召喚士は、何召喚したの?あれ?何あれ。え?フェンリル?確かに異世界転移とかの定番だね。
いいと思う。けどあれ2頭?オスメス?あ、ならいいかな。
修道士はオリジナル魔法、エリアピュリファケーションでの範囲浄化。ゾンビが浄化されます。
更に、味方への支援。バフだそうです。
俺は何してるか?俺はね………何もしてないんですよ。
瞳は…牡丹さんと似た感じ。気配消して、背後から一撃。ヒットアンドアウェイ、サーチアンドデストロイ 。お兄ちゃん、妹の進む先が心配です。
ユーテリア様は…あの人なんで戦えるの?というか何使ってるの?薙刀?先祖の勇者の武器?はぇー。あ、佐伯と一緒になってるのか。くっついたか。爆発しろ!!あ、近くでエクスプロージョンやったから余波が。ナイス!あ、ちっ!そこからラッキースケベかよ!死に晒せ!!というクラスメイトの叫びが聞こえる。
王城到着。騎士団は意外と大したことない。殲滅完了。
王の間に進む。
「ここにいるメンバー全員チートじゃね?」
「たしかにな」
「ただ、護衛騎士様のユウキがなぁ」
「アンノウンだからな」
「あと無月」
「なんだろね?」
そんなことを言いながら進んでいく。
王の間に辿り着いた。
「扉どうするか?」
バァァァン!
「さえきくぅ〜ん」「さえきく〜ん」
扉を破壊した佐伯に皆から声がかかる。
「待て。それはダメだ。確かにイントネーション似てるけど」
緊張感のない奴らである。
ほら、王がプルプル震えてるよ。
「悪いスライムじゃないよってか?」
ドゴッ!
まぁまぁ大きな声で言った佐伯に鋭い一閃。強烈なリバーブロー。あ、瞳がやったのね。
ユーテリア様が駆け寄る。萌々香さんも回復のために。
「佐伯、うるさい、少し黙る」
「いやっ、少しは、いいでしょ」
「「声に出すのが悪い」」
打たれた箇所を抑え、言葉を途切れ途切れ伝えるが満場一致、被告人佐伯、判決、有罪。
「貴様らァ!」
「喋るな」
スパン。
そんな感じで一閃。
王の首が落ちる。
「え?ユウキいつの間に」
王の間に辿り着くちょっと前に、無月が変化しまして、如月になりました。その結果、俺のスキル欄に、瞳と同じスキルが追加された。その中から、消音と気薄を使い接近、タイミングみて殺害終わり。
「なるほど。無月、いや今は如月か。その称号は成長する。それの副産物がスキル?」
「そんな感じ。増えるスキルは、瞳のと同じかな。今のところはね。まぁそのうち色々分かるさ」
こうして、反乱は終わり。反乱といっていいのか?
それじゃとりあえず、何処の国行こうか?