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5話、お互いの距離

 私が懐妊したとわかってから、早くも3ヶ月半が過ぎていた。


 既に、6ヶ月目に入っている。すっかりお腹も大きくなり、胎動も盛んだ。エレイン義姉さんやアンドリュー兄さん、甥っ子達が代わる代わる様子を見に来てくれる。ちなみに甥っ子達の内、長男のイアンが春期休暇のため、帰って来ていた。

 兄さんにそっくりな赤毛に淡い翡翠色の瞳の少年だ。年齢は14歳ではあるが。久しぶりに会ったら、私より頭半分くらいは背が高くなっていた。肩幅も広くなり、体格もしっかりとしてきている。顔立ちも4年前よりは、大人っぽくなっていた。もう、少年というよりも青年と言った方がいいだろうか。

 私はそんな事を考えながらもアニーに髪を梳かれていた。今日は、ダヴィッド様がやってくる。なので、身支度をしている最中だった。アニーがブラシで丹念に髪のほつれなどを解いていく。一通りしたら、サイドを編み込んで髪紐で括る。さらに、ヴァレッタで留めた。

 その後に薄くお化粧もする。妊婦用のマタニティドレスも既に着ているし。


「うん、出来ました」


「ありがとう、綺麗に仕上がったわね」


「はい、今日は私も気合いを入れました!」


 アニーは元気よく答えた。私は、鏡台の椅子からゆっくりと立ち上がる。お腹が大きくなってきたので、いちいち座ったり立ち上がったりがしづらい。それでも、寝室を出て廊下に出る。アニーが後から付いてきた。


「お嬢様、今日はケルン伯爵様と坊ちゃま達との顔合わせの日でしたね」


「そうよ」


「なら、イアン坊ちゃまがどんな顔をなさるか楽しみですね」


 私はそれに曖昧に笑う。どう答えたものやらと思っていたからだ。まあ、確かにケルン伯爵もとい、ダヴィッド様と会ったらイアン達がどんな表情をするかはわからない。実際に見てみないことには何とも言いようがなかった。

 ゆっくりと歩いて、応接間に向かう。ドアの前にたどり着くと、アニーが代わりにノックしてくれる。中から返答があり、アニーは開けてくれた。スルリと入ると既にダヴィッド様やイアン、ウェルター、エクシオに義兄さんや義姉さんがいた。ちなみに、ダヴィッド様は窓側にある1人掛けのソファーに腰掛けている。向かって左側の3人掛けの方には、イアン達で右側には義兄さんと義姉さんが腰掛けていた。


「あ、マチルダ。来たのね」


「ええ、遅れてしまったわね。ごめんなさい」


「そんなに待ってもいないわ、マチルダは私の隣にどうぞ」


 義姉さんがそう言って、自身の隣をポンポンと軽く叩く。仕方なく、私は言われた通りに義姉さんの隣に座る。

 ダヴィッド様はちょっと不満そうだ。それもそうだろう。私は仮にも、婚約者だし。そう思いながらも、イアン達を見た。


「……今日は我が屋敷にようこそ、お出でくださいました。息子達とようやく顔合わせが叶って、私や妻共々嬉しい限りです」


「ええ、私もご子息方と会えて嬉しく思っていますよ」


「長子であるイアンが学園で寮に入っていましたからね。春の休暇にはと思って、手紙をこの子に出しておいたんですが」


「そうでしたか、丁度良くイアン君が休暇に入ったとマチルダ嬢から話は訊いていました」


「妹がですか?」


「はい、イアン君と久しぶりに会えるのが楽しみだと言っていましたよ」


 ダヴィッド様がにっこりと笑って言う。イアンは目を大きく開き、驚きの表情を浮かべた。ウェルターやエクシオもだ。私はちょっと、恥ずかしくなる。


「そうでしたか、イアン、ウェルター、エクシオ。伯爵に挨拶をしなさい」


「はい、まずは。僕が長子のイアン・フォン・ケリアです。今年で14になります」


「次に、僕は弟でウェルターです。今年で13になりました」


「最後に、俺が末っ子のエクシオです。今年で12になりました!」


「ははっ、元気の良い挨拶をどうも。イアン君にウェルター君にエクシオ君。これからもよろしく頼むよ」


「「「はい!」」」


 3人の甥っ子達は元気よく、返事をした。私は微笑ましくて、自然と笑顔になる。しばらくは、ダヴィッド様や甥っ子達のやり取りを眺めるのだった。


 夕方になり、私は客室へと戻る。けど何故か、ダヴィッド様も一緒だ。


「あの?」


「どうかした?」


「何で、ダヴィッド様もいらっしゃるんですか」


「何でって、私はただ君と話をしたいだけだよ」


「のようには見えませんけど」


 ダヴィッド様はしれっと、私の肩に腕を回す。これでは、逃げようがない。仕方ないので客室までは一緒に行った。


 客室にある寝室の続き部屋に私は入る。ダヴィッド様も一緒だ。


「さ、私の部屋に着きましたよ。お話があるなら、ここでなさってください」


「わかったよ、初めて入ったけど。なかなかに趣味の良い部屋だね」


「……あまり、見ないでください」


 私はそう言って、ダヴィッド様を睨みつけた。彼はどこ吹く風といった様子だが。


「いや、すまない。ちょっと君の今後について話をしたくてね。子爵には無理を言って、許可をもらったんだ」


「そうでしたか」


「まず、君はまだお産を済ませていないし。とりあえず、マチルダ嬢のお産が終わったら。お互いの両親への挨拶をして、それから婚姻式を考えている。今、懐妊して何ヶ月目に入ったかを訊いてもいいかい?」


「確か、6ヶ月目に入りました。お産まではまだ、3ヶ月以上はありますね」


「そうか、なら。両親への挨拶などは最低でも、5ヶ月は先になるね」


 私は確かにと頷いた。ダヴィッド様はふむと、顎を撫でながら考え込む。


「……マチルダと呼ばせてもらうが、君も産後はゆっくりと休みたいだろうし。よし、婚姻式は半年後にしよう。いいかな?」


「わかりました、それで構いません」


「じゃあ、話は決まったね。私はこれで失礼するよ」


 ダヴィッド様はそう言って、私の肩に軽く手を置いた。驚いて目を開いたら、すぐに離れる。彼はひらひらと手を振りながら続き部屋を去っていった。


 あれから、半月が過ぎた。イアンは既に休暇が終わり、学園に戻っている。まあ、元気そうだったから私は満足しているが。お腹がせり出してきたので、腰が重たい。


「ふう、よっこらしょ」


「マチルダ、あんたはまだ若いのに。お婆ちゃんみたいな声を出さないでちょうだいな」


「失礼ねえ、本当に腰が重いんだから。仕方ないでしょ」


 私が言うと、エレイン義姉さんは肩を竦めた。


「はいはい、わかってるわよ。私もチビ達がお腹の中にいた頃を思い出すわね」


「ふうん、そうなの」


「けど、マチルダのお腹は大きくなったわ。たぶん、イェール先生の言うように双子なのは確実ね」


 私もそれには頷く。イェール先生はなかなかに、医師としての腕は確かだ。その方の言葉なら、当たっているだろうと思える。


「あ、マチルダに手紙が届いているの。確か、先代様からだわ」


「先代って、父さんから?」


「そうよ、ちなみに今朝に届けられたの」


 義姉さんはそう言って、アニーに目配せをした。アニーは心得顔で銀製のトレーを持ってくる。私へと差し出されたトレーには、2通の手紙があった。最初に父さんからのを手に取り、ペーパーナイフで封を開ける。内容はこう綴ってあった。


<マチルダへ


 元気にしているだろうか?


 お前が家出をして、早くも4ヶ月が過ぎた。


 何でも、アンドリューからの手紙でお前とエイベル君との婚約は解消されたとあった。


 そして、お前がエイベル君との子供を懐妊している事も知った。


 ただ、マチルダが無事かが気がかりではあったが。


 アンドリューの手紙だと元気に過ごし、新しい婚約者も決まったそうだな。


 1度、ケリアの領地に戻ってきなさい。


 差し障りがなかったら、新しい婚約者殿も連れて来るように。


 それでは。


 ガーライル・フォン・ケリア>


 私は一通り、目を通した。筆跡から父さんの直筆だとわかる。ほうと息をついたのだった。


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