第5章 最終話 満喫する幸せ
「ゆるしてください……もう勉強したくないです……やだ……やだ……。はっ! この杖の音はっ! ジンくんっ!」
机に向かって何やらブツブツ言っていた早苗が、俺に気づいて抱きついてくる。
「未来さんはどうしたんですか?」
「なんかそれっぽいこと言って無理矢理突破してきた。まぁこれからじっくり話していけばいいよ。これから一緒に暮らす家族なんだから」
早苗の勢いに耐えきれずベッドに倒れてしまったが、それでも早苗は俺の上から離れようとしない。俺の胸に顔をうずめてすりすりとしている。
「これでずっと一緒にいられるんですよね……?」
「どうだろうな。未来さんはまぁ色々言ってくるだろうが……何度離れても何度でも迎えにくるよ」
「ジンくん……」
「早苗……」
「や、やはりこの男を早苗様と一緒にいさせるわけにはいきませんっ!」
いつの間にか斬波と未来さんが部屋に入ってきており、俺と早苗の姿を見て声を上げる。すごい自然にキスしそうになってた……危なかった……。
「ジン様。高校を卒業するまでこういうことは禁止だと言われたはずでは? 後でお話しましょうね」
「はい……すいません……」
敬語で斬波に詰め寄られ、思わず謝ってしまう。これは俺が悪い。俺が完全に悪いから仕方ない。
「さぁ早苗様、勉強を再開しますよ」
怒り顔の未来さんが早苗を俺の上から引きずり下ろし、勉強机に向かわせようとする。
「嫌です! ジンくんと一緒にいたいですっ!」
「何を言っているんですか。そろそろ中間試験でしょう? 園咲家の次女が赤点では笑い者に……」
「ああああああああああああああっ!」
部屋中に響き渡る悲鳴を上げたのは他でもない、俺。しまった。完全に忘れていた……!
「早苗……俺部屋戻って勉強するから……」
「えぇっ!?」
俺には勉強以外に取り柄がない。学校の中間試験程度余裕で1位取れる自信があったから今まで気にしていなかったが……全国2位だという未来さんが転校してくるなら話は別だ。
「絶対負けるか……! 1位……! 俺が1位だ……!」
「私順位に興味ないので手を抜きましょうか?」
「舐めんな俺の方が頭いいんだよぉっ! 手加減なんているかぁっ!」
勉強だけは譲れない。これができなくなったら俺は早苗と一緒には……。
「ジンくん」
トボトボと歩き出す俺の手を早苗の優しい手が繋ぎ止める。
「いつもみんな何度でも言っていますけど、誰もジンくんの勉強の順位なんて気にしていませんよ? 正直マウント取られるのうざいので一緒にいましょう?」
「早苗……」
言葉は非常に辛辣だが。その想いはまっすぐに、純粋で。
「今日は未来さんの親睦会です! 勉強のことは忘れて遊びましょう!」
「……今日だけな」
「ですね……明日からはしっかり勉強しましょう」
「じゃあ私ジュースとか持ってくるね」
勉強や仕事のことなど忘れ。俺たちはしばらくこの幸せを満喫することにした。
これにて第5章完結です! 前作のおさらい回だったので少し退屈だったでしょうか。次章からしっかりストーリーを進めていきたいと思います!
次章は中間試験と誕生日編! 1歳しか違わない姉妹が多いため、その都合で誕生日が近いという設定のキャラが結構います! ジンくんの兄妹も出るかなーと思っているのでお楽しみに!
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