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第5章 第5話 敵?

「で、実際どうすればいいと思いますか?」



 クレープ、そして昼食を食べ終わり、未来さんが早苗を連れ帰ってしまったので、食堂に残ってグレースさんに訊ねていた。



「あーわかるわかる、寝取られると辛いよねー」

「寝取られてませんけど!?」



 園咲家長女、大学2年生の園咲グレースさん。元々はお義母さんの連れ子で、実父が浮気して出ていった過去を持つからかそんな肩の持ち方をしてきた。普通に年上にアドバイス求めたつもりだったんだけどな……。



「瞬間瞬間なら早苗と一緒にいることはできます。でも俺は……」

「早苗ちゃんとずっと一緒にいたいんだね~?」



 グレースさんのメイド、武藤侑(むとうゆう)さんがからかうように言ってくるが、



「はい。早苗とずっと一緒にいたいです」



 照れて問題を曖昧にするつもりはない。さっさと解決したいんだ。



「早苗とずっと一緒にいるには未来さんに納得してもらうしかない。時間をかければ可能だと思うけど、俺は今すぐ早苗のところに行きたいんです」

「おにいちゃんとおねえちゃん別れちゃうのー? そんなのやだ!」



 深刻な感じになってしまうと、園咲家六女の小学3年生、園咲来海(そのざきくるみ)ちゃんが心配そうに脚に抱きついてきた。



「大丈夫、別れないから」

「ですが寝取られてからの関係修復は困難だと聞きます。女性の浮気を許すのは男気だとは思いません」

「だから寝取られてないって……。それにその話は誰から聞いたの?」



 来海ちゃんのメイド、武藤冬子(むとうとうこ)ちゃんが相変わらずの無表情で大人びたことを言ってくる。主とメイドは全員同い年だからこの子も小学3年生。天真爛漫な来海ちゃんとはやはり対照的だ。



「悪いけどお姉さんにアドバイスはできないなー。そういう難しい話なら杏子ちゃんに頼んだら?」

「あ、杏子さん……それは絶対に嫌だ……」

「呼びましたか?」



 ほんとどんなタイミングの良さをしているのか、園咲家五女、小学6年生の園咲杏子(そのざきあんず)さんがひょっこりと顔を出した。



「……杏子さんなら解決できる……?」

「おそらくは」

「じゃ、じゃあいい! 俺1人で解決してやるっ!」



 小学生に対抗意識を燃やしているようでかっこ悪いが、この子ばかりは年齢で判断することはできない。この年齢にして、俺よりはるかに頭がいい。自分でも理解しているがマウント取りの俺は、この子がどうにも苦手なのだ。



「お義兄さんがそれでいいのならいいのですが、それが嫌だからこそ姉さんに助言をいただこうとしていたのでは? 私にできるようなことなら何でも協力しますよ?」

「ぐぅぅぅぅ……!」

「杏子ちゃん、ジンさんに失礼だよ……」



 論破されかけて唸るしかできないでいると、杏子さんのメイドの武藤風花(むとうふうか)さんが杏子さんに注意しようとする。だがこの合いの手が起きるとまずいのだ。



「大丈夫だよ、風花。お義兄さんはね、今プライドに負けそうになってるの。でもお義兄さんは頭がいいから、すぐに私に助けを求めることが一番だって認めると思うよ」

「さすが杏子ちゃん! 何でもわかるんだね!」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」



 返答系攻撃。そのあまりの威力に俺は悲鳴を上げることしかできない。さすがは小学生ながら次期当主筆頭候補……。曖昧の中で唯一お義父さんと同じ黒髪も金色に光って見える。



「お……お願いします……。俺のことを助けてください……」

「はいっ。お義兄さんのためなら何でもしますよっ」



 朗らかに微笑んだように見せかけて、その笑顔の裏には勝利のマウントが見て取れる。この子も何だかんだ負けず嫌いなんだよな……。だからこそ俺の上位互換なわけで……めちゃくちゃ悔しい……!



「私も少し話しましたが、未来さんはとても頑固な方ですね」

「それ自体は問題じゃないよ。いつでも打ち崩せる」


「その認識が間違っていると思います。お義兄さんなんでも勝ち負けにしちゃうでしょう? 相手を敵だと認識しているなら尚更。そうではなく、未来さんと仲良くしようと思ってみてはどうでしょうか」

「それができれば苦労はしないよ……」



 未来さんが俺を見る鋭い目付き。それは敵意のように感じる。そんな相手と仲良くする方法を俺は知らない。



「大丈夫ですよ。お義兄さんは斬波さんとも仲良くしてみせたではないですか」

「斬波は初めから友好的だったから……」

「え? 私ジンのこと大っ嫌いだったよ? 今は大好きだけど」



 斬波があまりにも普通にそう言ってくる。え、今さらながらショックなんだけど……。



「ま、私以上にジンを嫌ってる人はいないから大丈夫。ジンを憎む想いは寺門さんにも負けなかったから。なんせ恋敵だったしね」



 あぁ……そうだったな……。俺は初めから斬波をどちらかといえば味方だと定めていたが、斬波にとっての俺はそうではなかったんだ。



「お義兄さんは頭がいいのでしょう? 対処法を知っているなら後は自分でできるはずです」

「そうだな……俺は頭がいいからな……!」



 杏子さんに言われると嫌味っぽくて敵わないが、とにかく。



「ありがとう、杏子さん。助かったよ」

「はい。がんばってくださいね、お義兄さん」



 これで先が見えた。俺は未来さんと仲良くなってみせる。

前作に短編をアップしました! 今回の話ともリンクする内容ですのでぜひご覧になってください。


こちらと短編共に、次回から反撃編! ブックマークしてお待ちください!

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