第7章 第1話 4人目の兄妹
〇ジン
俺は賭け事が嫌いだ。運任せで確実性のない。それに結びつくまでの努力がないゴールを俺は認めない。
理屈としてはそれが全てだが、結局のところ嫌いな理由は感情がほとんど。両親も兄貴たちも賭け事が大好きだったから。その影響で嫌い、というのが大きい。
いや、それも建前なのかもしれない。賭け事と聞いて脳裏に浮かぶのは、どうやっても消えないあの記憶。逆に言えば、あれがあったからこそ俺は努力至上主義者になり、努力を続けることができるようになったんだと思う。
そんなことを考えたのは、あいつと出遭ってしまったから。もう二度と会いたくない、俺の元家族に。
「ジンくん? どうかしましたか?」
それは誕生日パーティーが行われた翌日。斬波と買い物に行ったことに嫉妬した早苗と、駅前でデートをしていた時のこと。あいつの姿が、遠くから見えた。
「いや……何でもない。それよりあっちの方に行こう」
大丈夫。あっちからはまだ見えていないようだ。このまま引き返せば見つかることはない。今この場には斬波も未来さんもいない。俺が早苗を守らなきゃ……。
「ああああああああっ! また負けたぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
思わず耳を塞ぎたくなるような汚らしい大声。それはパチンコ店から出てきて床に倒れている女から発せられている。
「大変そうですね……ギャンブルなので自業自得ですが」
「だな。さっさと離れ……」
「あれっ!? なんか見覚えのある顔があるなぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
「早苗離れろっ!」
女が長い髪を振り乱しながら千鳥足でこっちへと近づいてくる。気づかれた。早苗だけでも、と思ったが、こんな状況で俺を置いていけるような人ではない。
「あなた……ジンくんに何の用ですか……!」
俺の前に出て、女に相対する早苗。そしてそれを無視して、女は俺に覆いかぶさってきた。
「塵芥ぁぁぁぁ……金貸してぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「ざけんなクソ姉貴……!」
そう。女の正体は、俺の姉貴。
須藤超絶最強虎。最低のギャンブル中毒者だ。
第7章開始です! 今回は久しぶりのVS兄妹編! 続編に入ってからほとんど出番のない早苗ちゃんヒロインのストーリーになります! 期待していただける方は☆☆☆☆☆を押して評価を、そしてブックマークといいねのご協力よろしくお願いします!