第6章 第8話 眩しい世界
「なぁ斬波、もしかして何か怒ってる?」
誕生日パーティーが始まり、食事が進む中。誕生日席に座っている俺、早苗、斬波にどこかぎこちない空気が流れていた。
「別に。いつも通りでしょ」
「まぁそう見えなくもないけどさ……」
「そう見えるのは私が立場上遠慮してるからじゃないかな。ほら、私ってジンに雇われてるわけで園咲家に祝われる道理なんてないわけじゃん?」
「そんなこと……気にしなくても……」
「そうですよ、斬波。私たちの仲で今さら何を気にするんですか」
俺を挟んで隣にいる早苗も気になるようで声をかける。
「それにジンくんもですよ」
「え? 俺?」
そしてなぜか俺にまで火が飛んできた。
「どうして慣れないナイフとフォークなんて使っているんですか」
「いやマナーを学んだからさ。少しずつ直していこうって」
「からあげにナイフとフォークを使うのは逆にマナー違反な感もありますし、何より。マナーとは相手を不快にさせないためにするものです。対外的に使うのは大事かもしれませんが、私たちは家族です。もっと楽にしてもいいんですよ」
「そう……いうもんなんだ……」
早苗に言われ、俺はいつも通りにフォークでからあげをぶっさしそのまま口に運ぶ。
「細かいマナーなんかより、私はジンくんに心から楽しんでもらいたいです。ジンくんはジンくんのままでいいんですよ」
「ああ……ありがとう……」
一応礼を言ったが、やはり気になる。俺が自由に行動するたびに、暗くなっていく斬波の雰囲気が。
「斬波……」
「みんな……少しいい……?」
斬波に声をかけようとしたその時、玲さんと瑠奈さんが。
「でっか……!」
台車に馬鹿でかい山のようなケーキを乗せて持ってきた。
「これ……お義兄さんケーキ好きだから……がんばり……すぎちゃって……。でもきっと美味しいから……よかったら食べて……?」
「はいせんぱい、これ」
そしてこれまた大きな包丁が瑠奈さんによって俺に渡される。俺に切り分けなんてできないんだけど……。
「まるで……ウェディングケーキみたいですね……ジンくん……」
「ウェディングケーキって?」
「結婚式で、新郎新婦が2人でケーキを切るんです。初めての……共同作業って……」
「へぇ……」
だから早苗がやけに照れ照れなんだ。まぁでもこれは結婚式じゃないから。
「斬波、3人で一緒に切ろう」
「そ、そうですね……。そっちの方が、この場ではふさわしいです」
少し残念そうだが、早苗も受け入れてくれたようだ。これは俺たち3人のためのパーティー。3人でやるのが筋だろう。だが、
「私はいいよ……2人でやって?」
斬波はそう言って、決して立ち上がろうとはしない。
「なんで……」
「いいから!」
そして俺たちの言葉を大きな声でかき消し、
「もう……許して……」
どういうわけか、とても辛そうな声で。そう絞り出したのだった。
前作の方で短編をアップしました! アクアちゃんの話です! よろしければ見て行ってください!
そろそろ第6章も終わりです! かなり斬波ちゃんが苦しそうなので、ジンくんが幸せにしてくれることでしょう。
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