第6章 第4話 初デート
「ジンくん、一緒に帰りましょうっ」
「ああごめん、斬波と買い物に行くんだ」
「」
翌日放課後。早苗がジンに帰宅を断られ、固まっていた。
「き、斬波……どういうことですか……? 私を裏切るつもりですか……?」
「いやそんなんじゃないけど……ジン、先行ってて」
ジンを教室から追い出し、早苗に説明する。最大限私に都合のいい説明を。
「今週末何がある?」
「ジンくんと斬波のお誕生日パーティーです」
「早苗イン私アウトね。つまり、わかるでしょ?」
「なっ、なるほど! そうですね……それならば仕方ありませんねぇ……」
あえて多くは語らず、早苗に自己完結してもらう。効果は覿面、ジンにプレゼントをもらえるということで勝手に喜んでいる。
「じゃあ未来、後はよろしくね」
「はい。お任せください」
未来に早苗を任せ、私はジンの元に急ぐ。
「おまたせ」
「早苗大丈夫だった?」
「うん。大丈夫だってよ」
そしてジンにも都合のいい説明をし、事前に呼んでおいたタクシーに乗り込む。
「ところで斬波、俺金持ってないんだけど」
「あるでしょ。旦那様からお小遣いで月5万ももらってるじゃん」
「いやそれさ……斬波雇うために使っちゃったんだよね……。イフリートとか逃げ出しちゃったから工面できなくてさ……。今は無理矢理働かせてるから今月からは大丈夫なんだけど……」
「なるほどね」
私をメイドとして雇うためのお金は、やらかしたジンの兄妹2人とその友だちを働かせることで賄っている。でもゴールデンウィーク中に反抗を起こしたため、減給処分。私は16年も付き人として働いているので、給料はそれなりに高い。彼らに支払う分も考えると都合がつかなかったのだろう。いや、ジンのことだから元々お小遣いをもらうくらいなら園咲家に返すつもりだったのだろう。誕生日を全然知らないジンにとっては想定外の出費になったんだ。
「しょうがないな。はいこれ」
私は財布に入っていたお札全部、10万円をジンに手渡した。
「ちょっ……こんな大金受け取れないって……!」
「貸すだけだよ。私はカードとか色々持ってるから大丈夫。早苗にプレゼントあげるんだから安物じゃ許さないからね?」
「ごめん……必ず返すから……」
「いつでもいいからね」
言っていて気づく。まるでヒモにお小遣いをあげてるようだって。でも不思議と悪い気がしない。私ダメ男好きじゃないはずなんだけどなぁ……。いや早苗はどっちかといえば確実にダメ女だから……あんまり考えないようにしよう。
「じゃあこれ、トイレで私服着替えてきてね」
「うん、わかった」
かと思えばすぐにお世話係。私たちが通う風鈴学園は金持ち学校なので、人通りの多い駅前で制服を晒すのはまずい。だから私が私服持ってきたんだけど……なんだか複雑だ。
ジンの好きなところはかっこつけるとこ。なのにお世話するのも悪くないなんて……そんなジンのやることなら何でも好き、みたいなベタ惚れってわけじゃない……のに。あーもう……!
「ごめん、待った?」
「ううん、私も今着替え終わった」
私も着替え終わり、制服を駅前のコインロッカーにしまう。そして今さらながらやらかしに気づいてしまった。
ジンの私服は私が買ったもの。故に私の好みが存分に出ている。しかもその中から勝手に選んできたんだから、私の好み一直線。
黒いジャケットに白いインナー、黒スキニーに革靴。対して私も黒ジャケットに白いインナー。黒のミニスカートに黒いブーツ。めちゃくちゃペアルック!
「じゃあ行こうか」
「う、うん……」
だがペアルックの概念すら知らないジンは、いたって普通に歩き出す。こんな……私だけドキドキしてるなんて……。なんかもう、言葉にできないぃ……!
ジンと斬波のデート編開始です! 続きが気になると思っていただけましたら☆☆☆☆☆を押して評価とブックマークのご協力よろしくお願いします!