第11章 第17話 変身 2
〇早苗
ジンくんが変わったことには私も気がついていました。良い意味で、緩くなっていました。私と一緒にいる時には見せない笑顔、考え方、行動。思わず嫉妬してしまうほど、変わっていました。
でもそれは私が悪いとか、杏子たちが良かったとかではなく。環境の変化が大きいのだと思います。環境が変われば人は変わる。ジンくんの発言ですが、そういうことなのでしょう。
そしてそれは、ジンくんだけに当てはまることではない。私も同じでした。
「で、お前なんで誰にでも敬語なの?」
「敬語の理由……ですか……? 特に理由はありませんが……敬語で悪いことはありませんから」
「いやいやずっと敬語なんて堅苦しいったらないよ。他の人にうざがられてるんじゃない?」
「うざ……そんなことは……ないと思いますが……」
「少なくとも俺たちはうざいって思ってんだからそう思う奴だっているだろうぜ。試しにやめてみたらどうだよ」
「え……どうでしょう……。できる……かな……」
エターナルさん、トラリアルさん、イフリートさん。初めは彼らを止めようと思っていましたが、話している内に。話の内容に集中していました。
乱雑で言葉遣いが荒く、汚らしい。私の周りにはいなかった方々です。そんな別の世界を生きている人々は室内なのに煙草を吸い、私では理解できない言葉を吐いていました。とても、居心地の悪い環境。でもその環境にいる内に自分の中の何かが変わっていることに気づきました。
この方々は悪人です。女性を弄び、賭博に嵌り、あくどいことを考える悪人。でもそれは裏を返せば、私の知らない価値観を持つということ。彼らの会話はとても新鮮でした。
つまりジンくんが杏子たちと一緒にいて緩くなったように。私もこの方たちと一緒にいることで何かが変わり出す。そんな予兆を感じている時でした。
「早苗っ!」
部屋の中に斬波やジンくん。杏子たちが入ってきました。きっと私が誘拐されたと思い、助けに来てくれたのでしょう。でもこの時私は。
「……もうしばらく、ここにいさせてください」
私が苦しんでいる閉塞感を解消させるには。この環境が必要なのだと思っていました。