第11章 第15話 1VS3
〇早苗
「今から塵芥来るってよ」
「あいつだけならいいんだけどな」
「メイドがやべぇ。逃げられるかな……」
まずいことになりました。何をとち狂ったかジンくんとトラリアルさんを見間違え。少し話そうと言われのこのこついていったらアパートの一室でした。しかもエターナルさんとイフリートさんまでいるという詰みっぷり。どうしようもないです。
「お、お金ならあげるのでジンくんたちにひどいことしないでください……」
「「「あ?」」」
「ひぇっ」
六つの目が一斉にこっちを向きました。怖いです……。
「安心しろよ。今日は戦争しようって話じゃねぇ。逃げたいんなら逃げろ。部屋の鍵は開いている」
イフリートさんがそう言います。その言葉の通り私は縛られていません。寺門さんの時とは違うようです。
「なら……何をするつもりですか……?」
「交渉だよ。俺らは二度とあんな田舎には戻りたくねぇ。だがタダでそんなことが許されるわけがない。だからエターナルの身柄を交渉材料にする。お前はついでだ」
イフリートさんはそう言いますが……エターナルさんも私と同じく拘束はされていません。
「俺は犯罪をしたってわけじゃねぇからな。お前の妹に手すら出していない。ま、殴られるくらいなら覚悟してるよ。悪いことをしたのは俺だ」
……どういうことでしょう。エターナルさんはやけに素直です。一体何を考えてるのか……。
「ようするにだな」
エターナルさんが口を開きます。
「イフリートとトラリアルを俺が引き取る。こいつら顔はいいかならな。ただ農業をさせるより金を稼ぐ方法なんざいくらでもある。そこから金を払うから見逃せ、って交渉だ」
つまり……辛い力仕事より、楽に金を稼げる仕事にさせろ、ということなのでしょう。そんなの……。
「ジンくんは認めません。ジンくんはあなた方が真っ当に働くことを望んでいます」
「夜の仕事だって真っ当な仕事だよ」
「それは……そうなのでしょうが……」
「こいつらだって反省してるんだ。アクアがいいならこいつらもいいだろって話だよ」
……反省、ですか。本当に反省しているかはわかりませんが……少なくとも敵対の意思はないように見えます。でも私だって。
「そんなの、認めません。あなた方はジンくんにひどいことをしました。その償いは、してもらいます」
それくらいの意地はあるんです。