第11章 第13話 遭遇
〇早苗
「……寝坊しました……」
朝起きたら午前10時。もう朝とは呼べません。いつもなら未来が起こしてくれるし、昔は斬波が起こしてくれました。そして何よりジンくんと会えるのが楽しみで寝坊なんてしていられなかったのに。今ではこの様です。
朝食を食べる気は起きませんでした。昼食が近いからではなく、食欲が湧きません。かと言って勉強する気も。ベッドから起き上がることすら億劫に感じます。
しばらくゴロゴロし、スマホを見てみました。通知はゲームだけ。誰も私に連絡をしてきません。最後に誰かと話したのは、昨夜の電話。ジンくんに電話をしてから誰とも話していません。
辛い。すらも思いません。無気力。何もやる気が起きないでいます。玲と話すべきでしょうが、身体が動かず。気分転換に愛菜のところに行こうとも思いましたが、面倒で。グレースお姉ちゃんと話せば怒られるでしょうし、来海と遊んでも気は紛れないでしょう。
何をすればいいんでしょう。私は何を。何をすればジンくんと会えるのでしょうか。あるいは何をすればジンくんのことを忘れられるのか。
わかりません。何も、わからない。かと言ってこのままゴロゴロしていても事態が好転しないのは間違いありません。ということで私は渋々着替え、街に繰り出すことにしました。
思えば一人で外に出るのもひさしぶりです。いつも未来がいて、斬波がいて、何よりジンくんがいる。でも今の私の傍には誰もいない。
最後に一人で外を出歩いたのは……そう。私が誘拐されかけた時。それがジンくんとの出会いでもありました。
「……また誘拐されたら、ジンくんは助けに来てくれるのでしょうか」
そんなひとりごとが漏れた時。
「……なんで」
ジンくんの気配を感じました。正確にはジンくんらしき空気を纏った人。それが人の間を縫い、遠くへ歩いていきました。
「待って……!」
今思えばそれがそもそもおかしかったのです。ジンくんが一人で出歩くことなど、それこそありません。私と違い、ジンくんの傍には人がいるのだから。
「ジンくんっ!」
内心おかしいと気づいていながらも、私は叫んでいました。そして振り返ります。
「……あ、塵芥の彼女ちゃんだ」
ジンくんのお姉さん、トラリアルさんが。