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第4話 挟撃

 スペースコロニー。

 筒状の二層構造で内輪と外輪で回転運動を行うことで遠心力を生み出す。それが内部に住む者にとって疑似重力になり、そこで子が生まれ育まれていった。

 従来の理論では穴があったが、アンディー博士以下数名の技術者と発明家により、今では安定した大地を手にしたも同じ。

 優れた技術の中には優れた技術者と多くの民衆がいる。広め伝えるのは民衆の役割なのだ。

 そうしてできあがったものの一つにAnDがある。徹底的に改良された今では主戦力となり、世界の命運を握っている――らしい。

 授業を終え、実習へと移る。

 俺は一番機【スワロー】に乗り込むとARとナーブ・コネクトによる操作環境を整える。

 火月が二番機に乗り込むと、輸送艦が訓練空間に向かう。

『今回は祐二、ティアラ、神住のグループと、火月、オレ、愛のグループに分かれて戦う。無駄な動きはするなよ』

「了解」「まってました! おおませってね」「やるよ」

「けっ。おれが蹴散らすぜ」「うん。やってみる」

 十人十色な声音で、了承すると、輸送艦がAnDを放出。

 散り散りになると、俺たちのグループと、熊野をリーダーにしたグループに別れ対峙する。

 俺はAnDを走らせると、火月の射撃が飛んでくる。間一髪でシールドで受け止める。

 この距離で当ててくるとは。恐らく狙撃範囲を超えている。目では、センサーでは認識できない距離でも撃てるのだ。末恐ろしい。

 俺の後ろにつくティアラ。

 神住が横を飛んでいる。

『作戦通り行こう』

 落ち着いた声音でティアラが語りかけてくる。

『そうね。でも火月君は計算外じゃない?』

 現状を冷静に分析した神住の言う通りだ。

「俺が前に出る。そのまま二人は後ろにつけ」

『……盾役ってこと?』

『解せないわね。でもしかたないか。反応速度から言って内藤君を盾に使うのはありだし』

 ティアラの不満に、さらに続ける神住。冷徹と思われるかもしれないが、それはチームワークとも言える。俺を切り捨てても構わない、と。

 いや、よけてみせる自信があるということかもしれない。

 俺はAnDを走らせる。

 脚部に使われているエンジンをふかし、直進する。

 熊野と愛が左右に分かれる。

 定石だな。だが、それでは対抗できないと知れ。

 ハンドガンで応射すると、アサルトライフルで撃ち込んでくる敵機。

 さすがに射程の違いは埋められないか。

 火月の攻撃に耐えながら、両脇の敵を倒さねばならない。

 だが、後ろにいる僚機に期待する訳にはいかない。

 真っ直ぐに火月に向かう俺。

『ちょ、ちょっと。このままじゃ挟撃されるよ!?』

 ティアラの驚いた声が頭に響く。

「分かっている。だからこそ、あいつを突破すれば逃げられる」

『まさか、火月君を突破して熊野さんと愛を迎え撃つつもり?』

 いつも冷静な神住までどよめいている。

『まあ、どのみち挟撃されるか。いいよ、信じる』

『神住、本気?』

 決意の固まった神住を、怪訝に思うティアラ。

『やってみる価値はあるでしょ。そのための演習だし』

『……一度試すだけよ』

 揺るがない神住の意思を信じるティアラ。

 火月に肉迫していく、俺。

 だが、近づくにつれて火月の攻撃がピンポイントになってきている。

 頭や脇腹を狙った攻撃になってきている。

 これはマズいかな。

 盾では隠せない場所を狙われたらお終いだ。

 俺の陰に隠れたティアラ、神住の二人に任せることになるが、いけるか?

 火月の機体に迫った瞬間、俺はシールドを下げて、ハンドガンを撃ち放つ。その隙を狙って放たれたペイント弾が、俺のコクピットに直撃する。

 同時だった。俺がコクピットを撃ったのと。

『やるじゃない。弔い合戦よ。ティアラ』

『分かっているわよ』

 爽やかに笑う神住に、ぶつぶつと不満そうに言うティアラ。

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