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第1話 宇宙

 息づかいがヘルメットの中にこだまする。

 この外には無限の宇宙が広がっている。透明な宇宙。広大な宇宙。

 レーダーに機影、三。

 敵機を表す赤い点が浮かび上がり、後方の僚機が速度を上げる。

火月かげつ、前に出るな!』

 無線機から熊野くまのの焦りの声が聞こえる。

『へ、一人でも多くの敵を倒さなきゃいけないんだろ? やってやるぜ』

 ぶっきらぼうな口調で話す火月がスナイパーライフルを構え、弾を発射する。

 隕石群の見える宇宙で、レーダーから赤い点が一つ消える。敵は残り二機。

 やったのか? 疑問に思いながらも、俺はAnD(アンド)を右へ流す。

 熊野が左に回り、挟撃できるように左右に広がったのだ。その中心にいる火月が超遠距離から放つ弾。

 このコンビネーションに相手は慌てふためいているに違いない。

 最大望遠。視認。

 敵機を確認。

 16メートル長の人型巨大ロボットAnD。そのマニピュレータが人間で言う腕の代わりにハンドガンを構える。

 神経接続ナーヴ・コネクトがうまく言っているのか、四肢を身体のように扱う。

 そのフィードバックも大きいが、操作性のしやすさから神経接続ナーヴ・コネクトを採用している。

 発射した弾は二機のAnDに降りかかる。

 まずは足止めをする。そして火月が撃つ。

 つまらないな。

 簡単すぎる戦いにあくびの一つも出そうだ。

 警告音が鳴り響き、慌てて機体を上に向ける。

 そこには先ほどやられたはずのAnDが見えてくる。

 接近する紅い機体は王冠ティアラのもの。

 俺はとっさに10メートル長のシールドを分離パージし、身軽になった起動で一気に肉迫する。その人型の腹にハンドガンを撃ち込む。

 後ろ手に振り返ると、熊野、火月がそれぞれの敵を撃破していた。

 敵機にはペイント弾のあとがついている。

『音声回路オン。聞こえるか? ティアラ、神住かすみあい

《セッション終了。模擬戦は終わりよ。早く上がりなさい》

『もう少しでいけると思ったのに~!』

 悔しそうに嘆くのはティアラだ。

『ティアラ落ち着きなさい』

 神住の小さく涼やかな声音が、たしなめる。

 ふふっと笑う愛が、輸送艦〝バーナード〟に寄せる。俺らも同じように輸送艦に移動させる。

 バーニアを噴射し、姿勢制御をとる。

 AnDを自分の身体のように動かす。

 熊野、火月の機体も輸送艦にセットされる。

 最新のペイント弾は時間経過で蒸発する。その匂いを嫌う者も少なくないが、利便性が優先されているのだ。

玄覺げんかく、メンテ頼む」

 俺は仏頂面で静かに言い、ブリーフィングルームに向かう。

 無重力下では靴底に埋め込まれた磁石での移動か、あるいはベルトコンベアに触れての移動になる。

 今はベルトコンベアに手をつけて、移動する。

 ヘルメットを脱ぐと、短い黒髪が揺れる。

 汗ばんだ手を拭い、ブリーフィグルームに入る。

「あ。きた。遅いぞ、エース」

 そう言って俺の背を押す明るい子のティアラ。

 隣でクールガールの神住が微笑む。

「け。なんで内藤ないとうばかりをひいきしてんだよ。おれだってスーパーエースだろ?」

 火月が文句を言いながら乱暴な動作で入ってきた。

 確かに火月の言う通りで、火月の戦力も優れている。狙撃での力はハッキリ言って火月の方がうまい。

 逆に言えば俺は接近戦にはめっぽう強いのだ。

 遠距離のエースと近距離のエースがいる限り、俺たちは負けることはないだろう。

 一定の信頼を寄せている火月。口も悪く粗暴者だが、仲間を裏切るような奴じゃない。

「さて。今後の課題が見えてきたな」

 リーダーである熊野がテノールボイスで今回の戦いを振り返っていた。

「ティアラのやった陽動作戦はうまくいっていた」

「だよね。あの距離から詰めてくるとは思わなかったな」

 ティアラがぶすっとした顔で唇を尖らせる。

「そうだ。もともとAnDは接近戦がメインではない。だが、それができる奴もいる」

 熊野が解析を始めているが、反応速度が異常に速いとしかでない。

「どういうからくりだよ。てめーの反応速度」

 火月がつまらなさそうにぼやく。

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