冬馬君は青春する
数日後、いよいよ文化祭の準備が本格化する。
朝の電車にて、早速その話題となり……。
「……まあ、良いか。さて、今日はどうするんだっけ?」
「放課後の教室に残って……採寸合わせするんじゃなかった?」
「あっ、そういやそうだったな。確か部活生も今日だけは全員休みで、クラスの出し物の採寸や相談をするんだったな。てことは俺も居残りか……」
「ふふ、執事服絶対似合うもん。写真撮ろうね?」
「畏まりました、お嬢様」
「ププッ!?もう〜!」
……フゥ、なんとか普通の空気に戻れたかな。
そして授業を終え、放課後を迎える。
「あの〜、綾さん?」
「動かないで!私がやるの!」
「はいはい……」
衣装係が俺の採寸を測ろうとしたら、綾が自分がやると言い出したのだ。
どうやら、女子が俺の身体に触れるのがイヤというか……。
まあ、嫉妬をしたということらしい……可愛いから良いけどな。
「ふふ、相変わらずラブラブね」
「だね〜、でも……まあ、いいか」
「どうやら、ことには及んでないけど……気まずくはならなかったようね」
「ふえっ!?ふ、2人とも!?」
「綾、手元見ないと。ブレるぞ?」
「あら?彼氏は動揺しないのね?」
「さすが〜。ヨッ!レッドウルフ!」
「やめんか!ここ学校だっつーの!」
「むぅ……冬馬君が動揺しないのも複雑です……」
……いや、ギリギリ保ってるだけですけどね?
俺だって、動揺してますからね?
言われるたびに、貴方の綺麗な裸が浮かびますからね?
……とは言えんな。
俺の男としての意地にかけて……!
その後採寸を終え、暇な時間となる。
理由は簡単である。
女子の採寸があるので、男子は追い出されたということだ。
ちなみに、見張りを申し出たら断られた。
よく考えたら当たり前の話である。
「あれ?吉野君、もしかして暇かな?」
「おっ、中野君。まあ、有り体に言えばそうだな」
「もし良かったら、バスケしない?今日は部活もないし、体育館空いてるから」
「ん?良いけど、勝手に使っていいのか?」
俺も昨日のことがあり、身体を動かしたかったところだ。
「それは大丈夫。元々、自主練したかったから許可は取っておいたから」
「おっ、なら問題ないな。いいぜ、行こうか」
2人で体育館へ向けて歩き出す。
「よし、決まりだね。ようやく遊べるね」
「あぁ……そういや、そんなこと言ってたな」
「吉野君は清水さんとばっかりいるからね」
「……すまない。そうだよな……自重する」
「いや、いいんじゃないかな。皆、触発されて恋人作ろうと思ってるみたいだし」
「え?そうなのか?」
「あれ?気づいてない?何人かカップルできたんだけど。やっぱり、清水さんにしか興味ないみたいだね」
「それは否定できないな。綾は可愛いからな」
「おおっ!照れもせずにどストレート……うん、見習いたいくらいだね」
「うん?中野君はモテそうたけど、彼女いないのか?」
「うん、いないね。確かに、告白とかはされることもあるけど。好きな子以外とは付き合う気ないしね」
……へぇ、自分が言うのもなんだが今時珍しいな。
「気に入った!」
「うん?あ、ありがとう?」
「ところで、申し訳ないのだが……名前なんて言うんだ?」
「えっ?ああ、確かに知らないか。博って言うよ」
「博か……今日からそう呼んでいいか?」
「うん、もちろん……ええと」
「もちろん、俺のことも冬馬でいい」
「オッケー。じゃあ、冬馬。これからよろしくね」
「おう、博」
……今更、新しい友達が出来るとは思って無かったな。
これも綾のおかげだな。
その後バスケットコートにて、1on1をひたすら繰り返す。
「にゃろう!!」
「うわっ!?ウソ!?ボール取られた!?」
「舐めんなよ!!」
シュートを決める。
「まいったな……楽しいな。よし!もう一回!」
「こいや!」
そして、2人して床に寝そべる……。
「ゼェ、ゼェ……さすがに敵わんか」
「ハァ、ハァ……何言ってんの?帰宅部なのに、俺について来れるとか……勿体ないね。でも、良いかな。こうやって遊べてるし」
「まあ、これでも毎日走ってるからな。ん?なんだ?」
「おーい!ずるいぞ!!」
あれは陸上部の加藤に、サッカー部の佐々木や奥村まで……。
他にもクラスの男子が何人かいる。
あれ?田中君まで……。
「俺らもいれろや!」
「そうだ!そうだ!」
「いいけど……お前らは俺のこと嫌いじゃないのか?」
「はぁ!?嫌いだよ!だが、それとこれとは話は別だ!」
「羨ましいけどな!」
……そっか。
こいつらも、根っからの悪い奴らじゃないってことか。
「そうか……田中君はどうして?」
「う、うん……僕も変わろうかなって。どうせ、違うタイプだって思って諦めてたけど。吉……冬馬君みたいな人もいるってわかったから」
「田中……あれ?」
「ハハ……だよね。啓介って言うんだ」
「そうか、啓介か。よろしくな」
「うん!まあ、足手まといだけどね……」
「遊びだから気にすんな。なっ?博」
「そうそう、皆で楽しくやろう」
「ほら!早くやろうぜ!」
「わかったよ……えーと」
「加藤真斗だよ!冬馬!」
「おっ、そうか。マサかな。よろしくな」
その後は、皆で楽しくバスケに興じる。
いつのまにか時間もたち、クラスの女子達が観客として見ていた。
「冬馬君〜!!頑張って〜!!」
「と、言うわけだ。博……抜かせてもらうぜ?」
「いやいや、こっちこそ好きな子の前ではカッコつけたいし」
「はい?」
「隙あり!」
「はっ!そんなもんはねぇ!」
博の手を半歩下がり躱す。
そして姿勢を後ろに傾けながら、ジャンプシュートをする。
「なっーー!!フェイドアウェイ!?」
俺の放ったシュートは、綺麗な放物線を描いてリングに入る。
スパッ!と気持ちの良い音が体育館に鳴り響く。
「よし!決まった!」
「冬馬君〜!ナイスシュート!かっこよかったよー!」
……まさか、クラスの連中とこんな風に過ごせるなんてな。
綾、ありがとう。
お前と出逢えて良かった。
きっと、綾と会わなければ……。
俺はこんなに良い奴もいることに気付かずに、学校生活を送っていただろう。
綾も大事だが、これからはこういう付き合いも大事にしていこう。
俺は、そんなことを思うのだった……。




