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文化祭二日目その二

 教室に戻り、急いで着替える。


 綾は別室で着替えるので、少々遅れるだろう。


「よし! 行くか!」


 気合いを入れて、店に出た瞬間……固まった。


 テーブルに見知った顔が座っていたからだ。


「よっ、冬馬」


「やあ、冬馬」


「蓮二さんに淳さん!」


「おっ、似合ってるじゃねえか」


「そうだねー。冬馬は肩幅もあるし」


「警察官が日曜日って休めるんですか?」


「まあ、前もって言ってあるからな」


「俺の店は夜からだしねー。ただ、眠いけど」


 淳さんは、確かバーを経営してるんだよな。

 流石に、俺はまだいけないけど。

 卒業したら、綾と行ってみたいな。


「でも、どうして急に? 今までは来なかったのに」


「いや、今までは遠慮してたんだよ。お前が普通の高校生に戻るのに、俺らは邪魔でしかないからな」


「でも、今の成長した冬馬なら平気かなーと思ってね」


「二人とも……ありがとうございます!」


「なに、気にするな。本命は別にあるし」


「ですねー」


「えっと、それは?」


「聞いたぜ、冬馬。お前が紹介したんだって?」


「真司さんに春がきたって聞いたよー」


「ああ、弥生さんのことか。うん、今のところ上手く行ってるみたい」


「ククク……あの真司がねぇ……あははっ! からかうしかねえな!」


「そうですよねー。ここならからかっても、あの人手出しできないでしょうし」


「まあ、いつもみたいに殴るわけにはいかないでしょうね」


「よっしゃー! じゃあ、お代を置いとくぜ。淳、行くぞ」


「ええ、日頃の恨みを晴らしてやりましょうか」


 淳さんは真兄に遊ばれたからなぁ〜俺もだけど。


「ほどほどにお願いしますね? あれでも、この学校では人気者なんですから。暴力沙汰は勘弁してくださいよ?」


「わかってるさ。というか、俺の職業忘れてないか?俺のがやばいわ」


「あっ、そういやそうだった」


 制服を着てないと、ただのヤカラにしか見えない。


「おい? ったく……あっ、お前に投票しといたからな。あははっ!」


「冬馬、かっこよかったよー。ププッ……!」


「ニャロ……最後に言うんかい」


 二人が去った後、綾もきて本格的な仕事に入る。


 しかし……とある異変に気付く。


「君、写真撮って良い!?」


「あれだよね! あの子だよ!」


「ふえっ!? な、何ですか!?」


「お客様、当店はそのような場所ではございません」


「な、何だよ!」


「いいじゃないか! 噂になってるし!」


「おい——詳しく聞かせてもらおうか」


「ヒィ!?ご、ごめんなさいぃーー!」


「おい!?……くそっ、抜け出すわけにもいかん」


 その後もそういった輩が来るので、撃退していると……。


「うぅー……」


「綾、無理しなくていい。裏に下がると良い」


「でも、こんな忙しいのに……でも、私が邪魔しちゃってるね……」


 くそっ! 綾が折角楽しんでいるのに……!


「綾、気にすることないわ」


「そうだよー。ほら、誰も気にしてなんてないから」


 クラスのみんなも頷いている。


「みんな……私、弱くなっちゃったね……昔は、こんなこと日常茶飯事だったのに」


「綾……」


「でも、それって嬉しいことだよね。頼れる人ができたってことだから」


「ああっ! そうだな。よし、俺が付きっ切りで守るとしよう」


「ありがとう冬馬君!」


「なに、お安い御用だ。みんなも頼む!」


「「「オォォォーー!!」」」


 その後、何とか乗り切ると……。


「冬馬!綾ちゃんは無事!?」


「小百合? どういう意味だ?」


「小百合さん?」


「平気そうね……さすがは冬馬ね。私が認める数少ない男だわ。いえ、昨日の綾ちゃんに感動した連中が噂を流してしまったらしいのよ。途轍もなく可愛い女の子がいるって」


「なるほど……メイド服姿の綾の可愛さは異常だからな。それを否定することは俺にはできない」


「と、冬馬君ったら……」


「今まではこういうイベントには出てなかったんでしょ?」


「うん、そうなんです。騒ぎになっちゃったり、他の人の迷惑になっちゃうから……」


「全く! 美少女は愛でるものであっても迷惑はかけちゃいけないのよっ! それが最低限のマナーじゃないのかしらっ!」


「……ブレない奴」


「ハハ……小百合さんらしいね」


「でも、乗り切れたようね?」


「うん! 冬馬君やみんなが守ってくれたから!」


「ふふ、いい笑顔ね。やはり、綾ちゃんには笑顔が似合うわ」


「ふえっ?」


「おい? 人のセリフを取るんじゃねえよ」


「あら、いいじゃない。あっ——もうこんな時間ね。冬馬、ついでだから一緒に行くわよ」


「ん? ……三時か。ああ、良いぜ。ところで司会はお前か?」


「ええ、そうよ」


「なんでも来い。無茶振りでも何でもこなしてやるから」


「あら? どういう風の吹き回しかしら?」


「ここで綾に相応しい男だということを証明する。俺には必要のないことだが、これ以上うるさいのがいると邪魔だ。何より綾が気にしてしまう」


「冬馬君……」


「ふふ……愛ね」


「ああ、愛だ」


「あ、愛なの!?」


「ああ、もちろんだ……が、軽々しく言うつもりはない。いずれは言うから覚悟しておけよ?」


「はぃ……待ってます。あ、後で見にいくからっ!」


「あら、良いわね。私も言われたいわ」


「お前にそんな感情があるのか?」


「失礼ね、私だって乙女なのよ。それなのに、あの男ったら……」


「お、おう……よくわからないが、相談なら乗るぞ?」


「ええ、文化祭が終わったらそうさせてもらうわ」


 さて……恥ずかしいが、これからも綾と付き合うには必要なことだ。


 楽しく、残りの学生生活を送るためにはな。

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