16話 未知の魔獣 木霊
稚拙な文ですが最後まで読んでいただけると嬉しいです!
辺りに突き刺さった枝がキザンの周りにしゅるしゅると絡みつき出し、やがてキザンの全身は無数の木の枝に巻かれた状態になる。その姿はまるで・・・
「人の形をした木の魔獣・・・あの特徴は・・・木霊じゃゲ・・・」
ナルは声を震わせながらキザンだった『それ』を識別する。
「木霊・・・!そんな・・・架空の存在なんじゃ・・・その木霊がなんで今ここに・・・」
「ニマちゃん!!早くここから逃げろ!!」
冥静を構えて、冷や汗を流しながら柄を握り締めるロックス。
先程ナルが感じた異質な魔力、それが木霊となったキザンからより強力な魔力となり、ハッキリとその異質さをロックスは感じる。
負ける気はしない。ただ、今まで見たことの無い正体不明の謎の相手が何をしてくるかが全く読めない。それ故に周りにどう被害が出るのか想定できない為、いつも戦闘する時以上の緊張感をロックスは感じる。
そして、なによりロックスは自分の妻をどう取り返すかに対して思考を巡らせる。
ロックスの妻は、以前としてキザンだったものの後方に置かれている。闇雲に近づく訳にも行かずロックスは様子を見る。
「ニマちゃん、この宿の従業員に今ここに起こってることを伝えて避難してもらうように言ってくれ。そひて、僕の隊がこっちに来てたら僕が宿から出てくるまで宿の外で待機と伝えてくれ。僕一人でここは片付ける。」
「えっ・・・でも・・・」
「早く行け!!!!」
ロックスは叫ぶ。それほどまでの焦り。
それほどまでの焦りが出るほどの相手の未知に対する恐怖。それをロックスは今までの経験から感じ取る。
「ニマ!!こやつの言う通りじゃゲ!!早くここから離れるゲ!!」
ロックスに同調し、ナルも焦りを感じ叫ぶ。
「う、うん!わかったーー」
「サせナイィ・・・」
シュルシュルシュルルッ!!!!
「なっ・・・!」
「ゲ・・・!?」
この場から離れるため、階段を降りようとするニマ。
木霊は自身の体から無数のツルを伸ばして、隙間が無くなるほど絡めて階段の入口を塞ぐ。入口だけではなく、床も同様にツルを無数に伸ばして隙間が無くなるほど絡める。
階段の入口からはもちろん、床を破って下の階へ行くことも不可能となった。
「木ゾうは・・・もチ帰るのハもちろン・・・
ニマサマも・・・ラマさマの元へ・・・」
「くそっ・・・僕がこうなったら守りながら戦うしか・・・」
ニマを逃がすことが叶わなくなり、より緊張感を感じるロックス。
いくら最強と謳われても、未知との遭遇は如何なる時でも冷静を欠いてしまうものだとロックスは久しぶりに感じる。
「ロックスさん!私が強化魔法をかけたら少しは有利になるんじゃ・・・!」
「いや、だめだ。さっきみたいにただ走るだけならいいが、戦闘中は今まで培ってきた感覚でするんだ。身体能力が急に変わってしまったらその感覚にズレが生じてかえって危険なんだ・・・。そのまま動かないでくれ、必ず守る・・・!」
「わ、分かりました・・・」
何とか力になれることがないか考えるが、戦闘経験がほぼ皆無のニマには、ベテランのロックスからしたらタダの足手まといでしかない。
「さスガ、オシャべりができル程よゆウなんダナ、さいきょウハ」
キザンだった木霊はギシギシと自身の体を軋ませながら、一歩また一歩と歩みを進める。
「余裕じゃないよ。まあでも久しぶりに少しは本気出せそうで嬉しいかな。」
チャキッ
ロックスは改めて冥静構えて、迎撃の体勢を取る。
「?こうゲキシてこないのカ??」
「なにしてくるのか全く分かんないからな。
ここで突っ込むのはリスクがでかい。」
「そウカ・・・では・・・」
メキメキと体から人の腕ほどの太さのツタを十本程度伸ばす。その先端は鋭く尖っており、刺されれば人の体など簡単に貫通するほどである。
そしてーー
ドビュヒュヒュヒュッ!!!!
「ーー!!?っあぁ!!」
迅い、先程のキザンの投げナイフなど比ではない。
空気を裂きながら向かってくるツタ達を器用に体を後方へ逸らし、紙一重で躱す。
「虚空狩りっ!!」
躱したそばから、まとめて複数のツタを消し去ろうと冥静を振るうロックス。
ズバァン!!
周囲の空気と共にツタを消し去ることに成功する。
一瞬、安堵の息をつく。
それも束の間・・・
「いまのハコテシラべだ・・・」
先程の十本程のツタの倍、今度は二十本のツタを伸ばす。
その様子を口角を上げながら見つめるロックス。
「奇遇だな・・・僕も小手調べだ・・・
久しぶりにやるな・・・『付与魔法』」
ロックスと木霊の戦闘。
その様子を後方から心配そうに眺めるニマ。
そのニマにナルが耳打ちをする。
「ニマよ、我に良い考えがあるゲ」
「えっ、でもロックスさんは大人しくしとけって・・・」
「それはあやつの動きにズレが生じる可能性があるからじゃゲ。あやつ自身ではなく、あの木霊自体になにかできれば、それだけで戦況は有利になる。」
「そ、それもそうだね・・・。それで考えってのは・・・?」
「それはなゲ・・・」
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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ロックスさんの付与魔法が我ながらワクワクします。。