15話 変異
稚拙な文ですが最後まで読んでいただけると嬉しいです!
「くっ・・・くっくっくっ、まだだあっ!!」
「!」
キザンは即座に懐に隠していたナイフを取り出す。
「暴風付与魔法!
この距離じゃ避けられないだろおっ!!」
暴風付与魔法をナイフに掛け、ロックスの頭に向かって投げる。
そのナイフは暴風付与魔法の効果で暴風に包まれ、突風の如く加速し、一瞬でロックスの頭に到達したーー
キンッ!!
ーーがその寸前、頭に近付いたナイフをロックスが冥静によって真っ二つにする。
「なっ・・・!」
それはキザンにとって、とても目で追える現象ではなかった。
それ程までに迅い反応、そして斬撃。
ロックスが最強と言われるその理由を、キザンは肌で感じる。
「本当は無傷で捕まえたかったんだけどな。」
スパッ!
「うぅっ!!?」
ロックスは、キザンが妖刀を握っていた右手の上腕の筋肉を斬り、ボトボトと血が垂れ流す。
「ぐうぅ・・・くそっお・・・!」
あまりの苦痛に顔を歪めるキザン。
苦痛に身を震わせ膝をつくキザンをロックスは冷たく見下ろす。
「僕はお前みたいに悪戯に人を斬らない。お前が抵抗できない程度に傷付けさせてもらった。
もうすぐこの騒ぎを聞き付けたうちの隊が来る。
治療はしてもらえるから死ぬ心配はない、大人しく連行されて洗いざらい吐くことだ。」
その言葉を聞きキザンは奥歯をギリギリと鳴らし、悔しさと苛立ちをロックスに覚える。
「それにしても、お前も剣士なら、お得意の付与魔法に頼りすぎず純粋な剣術を身につけておくべきだったな。
それじゃ並のやつには勝てるだろうが上には通用しないぞ。」
「黙ってりゃベラベラとお・・・!!」
苦痛、悔しさ、苛立ち、それら全てで歪んだ顔で殺気を込めてキザンは睨む。
「終わらねえ・・・これじゃ・・・ラマ様に顔向けできねえ・・・!!」
「でもそれじゃあ無理だろ、また暴れるなら今度は足の腱を斬るぞ。」
呆れた顔になるロックス。
そしてその後方で嘔吐してまともに喋れなかったニマが姉の名前に反応する。
「お姉ちゃん・・・?」
「無理するなゲ、ニマ。喋れるぐらい回復したらならワシらはここを退こうゲ。」
そばで心配していたナルが退避を促す。
それはロックスとキザンの戦いを眺める中で、いつ巻き添えになってもおかしくない激しさだったことを感じているからこそ、この場から離れることを促す。
しかし、今のニマは混乱と突然の姉の情報に動揺し、まともな判断ができない。
「ねえ・・・お姉ちゃんは今どこにいるの・・・?
何をしてるの・・・?教えてよ・・・」
「ハハッ、なら大人しくしとくんだねえ、今から連れ去ってやるからすぐに全てわかるはずだあ」
動揺するニマに対して先程まで顔を歪めていたキザンは怪しげな笑みを浮かべる。
スパッ!!
「あぐぅ・・・!!?」
「だから、させないって」
容赦なく足の腱を斬るロックス。
これ以上何もさせないための残酷な判断だが、これだけの人間をバラバラに斬った狂人がやろうとすることに対して必要以上の対応をする必要があるとロックスは考えた。
「ハアハア・・・なあ・・・マロイから聞いたんだが、ニマ様あ・・・アンタの連れ、顔に木の変質魔法を受けたやつ、祝福を受けたやつがいるんだってなあ・・・?なんで俺達が祝福って言ってるか知ってるかあ・・・?」
「マロイ・・・!?お前、もしかしてマロイを乗せた馬車を襲ったのも・・・!!」
思いがけない名前が出たことに咄嗟にロックスは反応する。
「な、なんでそのことを今・・・??」
そして突拍子も無い問いかけにニマはますます混乱する。
「その答えはこれだよお!!」
バサッ!とキザンは自身の上半身に身につけていた衣服を脱ぎ捨てた。
キザンは上半身裸になる。
痩せた体、無駄な贅肉などがない細いその身の胸の部分はーー
ー木になっていた。
「・・・!!?それは・・・!」
「ーージグさんと同じ・・・!?」
驚愕するニマとロックス。
「ハハッ!!どちらにせよ捕まるんだ!終わりなんだあ!どうせ終わるならラマ様の為に終わるよお!!」
高笑いするキザンは、ロックスに斬られたことによって溢れた血を手にべっとりと付け、そのまま胸の木の部分へ擦り付ける。
「ああ・・・聴こえますか・・・ラマ様あ・・・
未熟で、不出来で、何も成し遂げれなかった俺に・・・命を引き換えに、最期に・・・この女の木像を貴方様へ届ける為の力をお貸しください・・・。」
そうキザンはそこにはいないニマの姉に対して、命を捧げる発言をする。
その表情はひどく穏やかで、切ない、それでいて幸せそうな温かい笑顔をしていた。
ーーそしてキザンの眼から光が失われた。
「ーーーー!!!!まずいゲ!!!ニマ!!ロックスとやら!!!急いでここからはなれ・・・ーー」
異質な雰囲気、魔力を感じ咄嗟にナルは声を出す。
しかし、それはもう遅かった。
『いいよ、今までありがとうね』
「!」
ニマは聞き覚えのある、懐かしい声が聴こえた気がした。
ーー次の瞬間
ドガアァッ!!!!
キザンの胸の木の部分から複数の木の枝が勢い良く飛び出し、周辺の壁、床、天井に突き刺さり、凄まじい衝撃音があたりに響く。
「おいおい・・・何が起こってんだ・・・?!」
ロックスはかつて体験したことない現象に冷や汗を額に浮かべる。
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