前兆
食事を終えると、夢野さんは早々に帰った。「あっ、やば!じゃあね!」と言ってたから、何か用事があるのかもしれない。
玄関まで見送ると、彼女は「また来るからね!」と言い残した。
……えっ、このイベント2回目もあるの?
まさかの宣言に、やや胸がときめくのを感じていると、隣に立つ霜月さんの姿が目に入った。
その横顔は、どこか切なそうに見える。さっきのベッドの事を気にしているのだろうか。
夢野さんの姿が見えなくなったところで、俺は彼女に声をかけた。
「もう気にすんなよ。別に床でも寝れるんだし」
「……はい。あ、あの……よかったら私のベッドで寝ますか?」
「押し入れじゃねえか」
「いえ、あの、元の部屋というか……」
「気にすんなって。別にいいから」
「……はい」
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ご主人様、怖がってた……。
もしかしたら、嫌われたのかもしれません。
こんな力……私でも怖いのですから……。
ぐっと握りしめた拳には、自分でも怖いくらいの力が篭る。
……私、ここにいていいのかな?
そう考えてから首を振った。元より居場所なんてなかったのだから、考えても仕方ない。
私は押し入れの中で、ぎゅっと固く目を瞑った。
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目を覚ますと、一階の方から物音が聞こえてくる。どうやら霜月さんが朝食を作っているらしい。
その音につられるように下へ行くと、霜月さんはせっせと朝食を作っていた。
自宅にメイドがいるという状況に見慣れたせいかもしれないが、つい後ろ姿にみとれてしまった。
すると、霜月さんはこちらに気づいて、視線を向け、何故か首を振った。
「ご主人様、いけません」
「?」
「そねような目で見られても、ご主人様の熱い気持ちに答えられません」
「いや、誰も求めてねえよ」
すっかり元通りじゃねえか。なんか心配して損したわ。まあ、そっちの方が気が楽だけど。
「少々お待ちください」
「ああ、先に顔洗ってくるからいいよ」
俺は安堵を覚え、洗面所へと向かった。
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クラスメートもすっかり霜月さんを見慣れたのか、初日の浮わついた空気は、すっかり雲散霧消していた。
もちろんメイド服のせいで悪目立ちはしているが。
たまに他のクラスから、一緒に写真を撮って欲しいと頼まれているが、それも直になくなるだろう。
最初に撮影を頼まれた時……
「も、申し訳ありません……お友達の少ないご主人様を差し置いて」
などと抜かした仕返しはいずれしてやりたい。
こんな感じで普通の日常が続けばいいと思っていたのに……。




