惨敗
試みとして行間を詰めてみました。
読みにくかったら戻します。
……で、僕は世界を救った、唯一の勇者達に宣戦布告した。
結果?結果は。
惨敗だよ。
いや勿論、僕じゃなくて勇者勢がね。
今や、勇者達はボッコボコにされて、地面に転がっている。
やったのは僕一人。
剣聖や神拳士、神導師なんぞと呼ばれる、冒険者ランクダイヤの冒険者を僕は、素手のみで一掃した。
随分と呆気なかったよ。
多分モイラがやっても同じ結果になると思う。
これを『スパルタ』とか『大人気ない』とか言う奴も居るんだろうけど、僕はそんなつもりでやったんじゃない。
なんかもう、皆気付いたら倒れていた、って感じ。
いやー……世界を救ったって言うから、ちょっと本気出したらこうだ。
呆気ない。実に呆気ない。
「つ、強い……」
地面に転がった勇者達が最初に口にしたのは、そんな苦悶だった。
「いやでも、一世界を救った勇者としては強いんじゃないの?……まあ、一つの世界しか救えない強さに押しとどまっている、と言うのが正直な感想だけど」
完全なる、先輩からのフォローと助言。
そう。これ一応助言だ。
煽りとかじゃなく『このままじゃ僕に届かないよ』という、先輩からの有難み溢れる慈愛が込められている。
「幾ら何でも強すぎじゃないか……?俺の聖剣を以ってしても及ばないとは……」
悔しいのか、アーサー君がそんな言葉を口走る。
だから僕、第二の忠告。
「いやさ。君の聖剣の能力は確かに凄かった……けど、露骨すぎるんだよ。君は剣術こそ凄いけど、そのポイントこそがネック。露骨さに剣術が振り回されてる。まあ、精進あるのみだね」
僕は、続いてフェルナを見る。
「フェルナも、相手の行動を見過ぎ。そのあまり空回りしてる。君は殴れる魔導師でもあるんだし、思い切りも大事だ。君は魔法と近接を組み合わせ、時々その『能力』をスパイスさせた戦術を取れば、案外行けるかもよ」
「確かに……言われてみれば」
フェルナが目を見開く。
兎に角次、サクラ。
「サクラも筋力や魔力、頭の回転が良いんだ。そこに君の体型を生かした立ち回りと、事象操作とかを加えれば、拳闘士としてグレードアップできると思う」
「そう、だな……盲点だった」
さて、色々と助言やら済ませたので。僕は一息つき。
「グエッ!?」
僕はアーサー君の首筋を掴んだ。
「ほれ、陰気なアーサー君はリアンへ行こうねー」
さながら人さらいの様に……。
と、その前にお別れを。
「ああ。そおの前にガレーシャ」
「……はい、何ですか?」
「お留守番と修行、頑張ってね」
「ーーはいっ!」
返って来たのは、不安などない笑顔だった。
これなら大丈夫そうだ。
「うん。良い返事だ。じゃあ行ってくるから。モイラもカモン」
と、僕は剣聖と創造神を引き連れ、雪山のコテージを後にした……。
(の、前に……)
僕は、コテージを出た瞬間にやるべき事を思い出した。
いや何。直ぐに終わる事だよ。
……深深と、静かに降りしきる雪。
上を見上げれば濁り空。
尖塔の様な雪山も視野に入れ、僕は空を見たまま。
いや、結界を見たまま。
満目蕭条ノ眼を使った。
(これで……終わりっと)
そして、その未来を知る者は僕しか居ない……。
♦︎
勇者邸から去る際は、毎度恒例転移魔法を使用した。
いや……便利だよね、転移魔法。
と、それはともかく。
「着いたね。リアン王国異種闘技場」
「着いちゃったねー。実感全くないけど」
「トンボ帰りに近いしな……ああ、未だ首痛し」
僕、モイラ、アーサー君の順で感想を述べる。
まあ一人、別のことの感想を言ってる者が居るけど。
「まあ、行ってみようか」
ここで、リアン王国異種闘技場の説明をしよう。
……コホン。まず、闘技場は地上五十階、地下五十階で構成された、百階層構成の建物。
見た目は高層建築物……いやほぼビルだ。
要所要所の石造りが目立つが、それ以外はガラス張りという、やけに近代感。
多分、転生者とかがこの建物を見ると、反応は十中八九「ーービルじゃん!」となるだろう。
それくらいの建築力だ。
まあ、先述のビルと違う点を言うと……地下が五十階まである事か。
ーーで、ここからは闘技場の受付嬢に聞いた話だけれども。
「地上五十階と地下五十階は、実質的に区分されています」だとか。
更に聞くと。
地上には地上の管理者が。
地下には地下の管理者が居るそうなのだ。
うーん、この非効率な管理体制はどうすれば……。
と、それはともあれ。
「……僕達、この招待状を貰ったんだけど」
僕は、取り敢えず招待状を見せた。
……と、瞬間受付嬢は顔色をどんどんと悪くしていき。
悪役を見るような……所謂ゴミを見るような目で、カウンター奥の扉へと吸い込まれていった。
「……ん?僕、何かした?」
と、僕も困惑を隠しきれない様に呟いた、その瞬間。
ギギギ、と。
その受付嬢が先ほど入っていった扉から、何やら別の人物が。
……と言うか、人じゃなく。
サキュバスだった。
「魔族……?何でこんな所に」
「アーサー君、少し黙って」
と、不用意な呟きをしたアーサー君を僕は抑えた。
瞬間。
シュバっと。
僕の手に握られていた招待状は、目を瞬くとサキュバスの手に。
早っ。手癖すごい。
僕が軽く引いていると、サキュバスは招待状を確認したのか、右方向へ指をさした。
「……ん」
いや。「……ん」じゃないが。何か具体的にだね。
まあサキュバスはそれ以上何も言わないので、仕方なく僕がその指の行き着く先を辿ると。
「隠し扉……?」
「さっきまで、あんなの無かったよね……」
今まで壁だった部分が一部無くなり、其処には謎の通路が。
これは何だ、と僕がサキュバスに問おうと視線を戻すと。
「消えたぁぁァ……」
既に、そんな魔族は姿を眩ましていた。
「じゃあこれ、行くしか……無いよな?」
苦し紛れにアーサー君、察する。
「はぁ……そうだね。行くしか無いね」
本当に嫌々だが、行くしかなさそうなので。
僕達は、その隠し通路に入っていった。




