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漆黒漆黒。

 

「ガレーシャ。ユト様、`モイラ様。三名様に向け、直通の御手紙が……」


「お、やっと来たか」


 カウンター裏に座るガレーシャの奥から、手紙を持った受付嬢が登場。


 その受付嬢が手渡した手紙を受け取り、僕はその場で開ける……事はせず。


「開けないんですか?」


「ああ。今は必要無いからね」


「……今は?」


 ガレーシャは首を傾げる。


「そう……今は。と言うわけで、ちょっと行くべき所があるから、皆付いてきてね」


 僕は手紙をポケットにしまい込み、ガレーシャとモイラを目で誘った。


 すると、もう一方のモイラが言った。


「って事は、もう会いに行くんだね」


「会いに行く……?何処かへ行くんですか?」


 ガレーシャはカウンターから出ながら、更に聞いてきた。


 確かに、色々事を読めないだろうからね。


 だけど、僕は直ぐに教える事はせず。


「まあ、行けばわかるんじゃ無い?」


 と、完全に後回し。


 僕はそのままカウンターに踵を返し『今直ぐにでも行く』と意思表示。


「あれ、もう行くんですか?」


「変に時間を掛けている暇は無いしね」


「……了解です。付いて行きますよ」


「じゃあ、行くぞー!!」


 ガレーシャ、モイラと次いでの意気込み。


 僕達はそのまま冒険者ギルドの外へ出た。


 と、その勢いのまま転移魔法やらを使って目的地へ向かおうとしたけれど。


 僕は、開けた冒険者ギルドへの扉が閉まる前に思い出した。


「……あ。ちょっと待ってて」


「どうかしたの?」


「……ちょっと忘れ物しちゃってね」


 そう言いながら、僕はもう一度ギルドへ入った。



 ……さっき忘れ物とは言ったけれど、まあ、直ぐに終わる事だ。



 鉄ランクタグの返却だよ。


 銀下位ランクに認定され、タグも受け取った以上、この鉄タグはタグとして失効する。


「よいしょっと。ここでいいかな?」


 持っておく義理もないので、僕はそのままカウンターに鉄タグを置いておいた。


 ……後で受付嬢達が回収してくれるでしょう。


 やる事も終えたし、これで未練はない。


「さてっと。合流合流」


 そう呟きを残しながら、僕はまたギルドを去った。



 ♦︎



 そのまま、何事も無く終わると良かったのだが。


 鉄タグが置かれたギルドカウンター。


 人気も、受付場も周りに居ない、そのカウンターにて。


「ユト・フトゥールム。古代兵器を破壊し、世界を律するもの……ふっ」


 じゃらり。


 ネックレス型の鉄タグを持ち、笑う人影。


 失効したそれを手に取り、怪しく漆黒の外套の内で笑う謎の人物が、其処には居た。



「ーー貴方には、ワタクシ達の盤上にて踊って貰いますよ」



 顔の見えぬ漆黒の人物は、声音だけでも身の毛のよだつ恐ろしさを醸し出していた……。



 ♦︎



 一方その頃。


 転移魔法を使って『ある場所』へとワープした僕達であるが。


「ええっと……雪山ですが?」


 目の前には、重厚で横にずっと続く柵と門。


 この先は私有地なんだろうが……。


 奥には、先端が凶器のように尖った雪山しか見えない。


 其処には雪が深深と降りしきる。


 禁足地の様な雰囲気だ。



 ……しかも、ここまでは雪が降って来ないみたいだ。



 門を境界線にして、プッツリと降雪が止んでいる。


 何かと幻想的で、非常識的な景色だね。


 僕は、少し凍てつく空気を吸い込みながら言った。


「行ってみれば分かるよ。この先に誰が居るのかってね」


 僕は手紙を開封した。


 差出人はただ『勇者』と書かれている。



 ……勘のいい子なら、もうここで分かるだろう。



 で、手紙の中身は魔道具。


 栞サイズに圧縮された、結界に入る為の鍵の様なものだ。


「じゃあ、行こうか」


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