百キロ位は、散歩に含まれますよね?
……転送は終了した。
転送先は、勿論セリアの村。
だけども、誰も起きているものは居ない。
時差もあるとは言え、今は丑三つ時だ。
流石に、誰もがみんなして寝ている所だろう。
だから、僕達はそろーり、とディルッド達から貰った特産品を、セリアの宿屋に詰め込んでいる。
勝手に、だけどね。
まあそれでも、これはお土産だ。
……ちょっと、量が多過ぎるけどね。
まあ、良いでしょうそんな事は。
兎に角、僕達が物資詰め込みを終わらせた後、追うように僕らも眠った。
……と、思わせておいて。
僕は、ガレーシャとモイラが寝たのを見計らって、少し散歩に出かけている。
いやなに、そんなに遠出する訳じゃないさ。
夜逃げするつもりも勿論ない。
ただ僕は、ちょっとしたい事があってね。
単純に、僕は眠らなくても活動できるから、と言う理由もあるけど。
と言うわけで僕は、海が見える山頂に来ております。
セリアの村から、百キロ程離れた所だね。
……さっき、そんなに遠出する訳じゃない、とか言ったけど。
そもそもこれ位の距離、遠出ってほどじゃないでしょ。
え、違う?
……まあ、そんな事は置いておいて。
僕は波打つ海を遠目から見つめながら、色々と話し込んでいた。
独り言ではない。
これは『協力者』との確認作業と、その人脈に乗っかる為だよ。
ディルッド君達の会話の中で言ったはずだ。
『スケジュールが一杯』だってね。
という訳で、明日からはもう動き始めなくちゃいけない。
そこで、ガレーシャとはお別れになっちゃうかもだけど。
だって、彼女は一時的な監視員として、僕達の仲間となった。
僕達の専属受付嬢では無いという訳だ。
そもそも、ガレーシャは有能過ぎる。
有能過ぎるが故に、こう言った特例でしか、一人で行動することを許されない。
つまり、ギルドに僕の実力を報告した時点で、彼女が僕のパーティーに居る理由は無くなる。
ギルドに再回収される、という事だ。
……だけど、僕はそれで彼女を終わらせる気は無いけどね。
兎に角、今は協力者からの報告を聞く時だ。
「……で?他に古代兵器を内包している、古代遺跡の発見報告は?」
僕は、波打つ領海を見詰めながら、優雅に報告を聞く。
……気付けば、もう朝焼けの時間になっていた。
塩の匂いを鼻で感じながら、僕は息を吸い込む。
絶賛、今は脳内で協力者と会話中。
「発見出来ない、か。了解。ならば一時合流の予定は変わらないね。君達も気を引き締めておくように」
そして、通信終了。
溜息を吐きそうな報告内容だったけど、まあ仕方ないか。
世界を救うって、そんな簡単な事じゃ無いしね。
とか、思ってる内に。
こちらへ高速接近してくる気配があった。
陽気で強大。
絢爛で馬鹿っぽい気配だ。
つまり……。
「あ、ここにいた。結構時間かかったよーう」
創造神、モイラ様。
日の出と共に御登場か。
「……ストーカーみたいな捜索能力だね」
「え!?それ酷い!」
突然の罵声。驚くモイラ。
日の出に照らされる中、僕はすれ違い様に鼻で笑い、声を強張らせつつ呟いた。
「兎に角、ここからが正念場みたいだ。モイラにも、付き合って貰うよ」
「了解。っていうか!さっきのストーカーって何ー!!」
モイラの切れ声を背に、僕は跳ぶ。
つまり、無視だ。
並走して「ね!ちょっと無視しないでよね!!」とか聞こえるが、無視安定だね。
そしてーー空を駆ける二つの閃光。
見上げれば、誰もがそんな姿を見られるのだが。
そんな光も、朝焼けと共に消えて行く。
だから、なんの心配もないよね?




