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だが違った

 

「ちょっと質問なんだけど、古代兵器って何?」


 これは、ローズ社が兵器について言及しているなら、君も何か知ってるんだよね?と言う暗喩も込めている。


 すると、魔人は銃弾を躱された事に怒り心頭の様なのか、雰囲気を強張らせた。


「答える義理はなーーー」


 遮り。


「言うんだ」


 僕は殺気を出した。


 それは空間を、陽炎で激しく揺らす様に。


 ほんのちょびっとの殺気。


 だがそれでも、気圧すくらいの力はある。


 ※本気で殺気出したら、空間死滅します。


 だから少し抑えないと、魔人君が僕の殺気だけで死ぬことになる。


 それは、古代兵器の情報を求めている僕に対して、大きな損失になってしまう。


(……ここでは俺が弱者か)


 魔人君は冷や汗を流しながら殺気に気圧されている。


 効果覿面(こうかてきめん)


 僕へ向かう有利と言う追い風が吹いている。


「分かった。話そう……虚偽なしでな」


 魔人は僕の目を見て、諦めた様に告げた。


 そのまま、彼は思い出す様に。


「この空間、遺跡にはある古代兵器が存在している……」


「第一兵器『(ねずみ)』だ。この兵器は少し困りものでな……最弱なんだ。十三兵器の中で」


(……最弱ね。鼠らしいっちゃらしいけど)


 そう思う僕の顔を覗き込んでくる魔人君。


「ここまではいいか?」みたいに見てくるので。


「……続けて」


 取り敢えず僕は眼光で魔人君の説明を促した。


「……この魔族街は第一兵器を守る、最後の関門であり、侵入者を排除する最後の機構でもある」


「じゃあ君と人型邪龍君は、その関門の防衛者ってことかい?」


 迅速な説明に、僕は聞きたいことがあったので聞いたら、魔人君は言った。


「そこは判然させんぞ」


 ……ああ。そこは譲れないのね。


 話すところと話さないところの垣根がよく分からないんだけど。


 その間、ずっと魔人君の顔色を凝視していたけど……。


 全く変化なし。


 嘘も無し、表情から物事を絞り出させない堅気な表情。


 心拍も、体の動きからも物事を悟らせない。


「随分とポーカーフェイスが上手いんだね。それは、経験によって培われたものかな?それとも……」


 僕は煽るが……。


 ……否。なにも彼の表情は変わらなかった。


「……いいや。今ここで問うても意味なさそうだし」


 僕は不敵な笑みで俯き、魔人に見えない内に、表情で悪態を吐く。


 話が脱線したか。


 合間を持たせず、僕は更に聞いた。


「でさ、さっき燃やされた書類に書かれていた『巨大物資生成機械』ってなに?古代兵器を仲介しているみたいだけど?」


 顔を上げ、撫でる様に聞く僕。


 すると魔人君は、ホッと一息つく様に答えてくれた。


「……あれは、俺たちが魔族共を飼い慣らすために作ったもんだ」


「へぇ……飼い慣らすね」


 瞬間、天井が揺れ動く。


 上からは、凄まじい魔力のぶつかり合いが起こっている。


 そう感じる。


 屋上ら辺で、モイラ達と人型邪龍がやり合ってるのか。


 随分と激戦の様だ。


 魔力と渦巻く事象が、世界を割いているのを感じる。


 部屋の窓からは、稲妻の様な閃光が小さく煌めいている。


 それを見た途端、魔人君の魔力が高鳴る。


「……そろそろ無駄話は終了と行くか。俺たちだけサボっている理由はもう無くなった」


 あらまあ。相棒君の善戦に当てられちゃって。


 彼が銃を構え直すのを見て、僕は気を整えた。


 会話中断。仕切り直しは効かないか。


 まだ聞きたいことはあったんだけど……君がやる気なら……付き合ってあげるさ。


「はいはい。遊んであげるよ」



 ♦︎



 先手を打ったのは魔人の方だった。


 彼のマグナムから成る銃弾は、魔力のコーティングによって絶大な威力を発揮する。


 今までの銃撃は序章(プロローグ)であり、これからは終章(エピローグ)だ。


 本気の魔力を込めて造られた銃弾は、銃口から出走する。


 その弾丸には、既に必中の因果は無い。


 雨とも取れる銃弾の数々の中で、外れたままの銃弾があるのはその所為だ。


 もう標的、ユト・フトゥールムを狙うのは因果では無く、彼の射手としての天性の才能によって、照準を定められていた。


 元々、彼は魔力で作った仮初めの因果などと言う、小細工に頼る弱兵では無い。


 彼の才能と技術が真に発揮されるのは、跳弾と魔力コントロールによる、予想のつかない弾道を作り出すことについてだ。


 そして魔人という彼にこそ出来る、無尽蔵な魔力供給により、無限に作り出せる銃弾。


 それに、銃本体のストッピングパワーも相まって、壁に亀裂を入れる程の威力を発揮している。



 ……だが。



「やはり破れないか」


 彼の銃弾によってユトの結界が壊れることは、以前あり得ない事実であった。


 圧倒的な実力差があるのは、誰の目から見ても歴然だった。


 だが、それに屈しない魔人。


 慣れた手付きで両手のマグナムの銃弾を入れ替え、再び発砲する。


 放たれたのは、彼が特殊開発した、毒性と爆発性のある魔力弾。


 通称、起爆毒弾丸。


 それは弾丸着弾時、大きな爆発と共に周囲に毒を撒き散らす。


 瞬間気化性のあるその毒は、吸い込んだものを即刻死に至らしめる。



 ……だが、ユトはそれすらも結界で防ぐ。



 実力の差は、やはり覆らない。


「終わらせてあげるよ……」


 ユトの拳が光る。


 負ける。


 誰もがそう思う状況だった。



 ーーだが違った。



もう一方の作品の更新停止期間を終了させたので、次からは二日に一回更新となります。

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