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最短距離を行く為なら、僕は壁すら破壊して突き進む

 

 ……僕の記憶には、それがあった。


 六十一階の終点が。


 そして、事の黒幕足り得る人物の面影を。


 それらを胸に、僕等は歩み続ける。


 ゴールまでの最短距離を、冷静に辿り。


 壁など関係無い。全て最短の距離を突ければ直ぐゴールに着くのだから、最短を取らない理由は無い。


 そうして、僕は最短距離を突く為、壁や罠やらの障害物全てを破壊して行く。


 最初、背後からは僕が壁を破壊して進むことに腰を抜かすくらい驚いていたが、慣れた様で無言で付いてきている。


 ……これだから慣れと言うものは、怖いんだ。



 取り敢えず僕達の行く手を阻み、迫る罠は正面から破壊し、余韻に浸る暇も持たずにひた走る。


 だが、背後にいる付き人達の事も忘れないように。


 僕は二人にも全く危害の及ばぬ様に、ちゃんとスタミナや瓦礫などで傷を負う可能性がある事も留意し、対策している。


 迅速に。けれど疲労などさせず、完璧に。されど油断せず、全ての可能性を察し取れ。


 それが僕が監督する探索に於ける鉄則だ。


 ロクなヘマをしでかして体力を削がれてしまったら、それは後々致命的なミスを生み出し、自分達へと襲い掛かってくる。


 そんな経験を、僕は……僕達はしてきた。



 ……僕は嫌な事を思い出し、目を軽く伏せはしたが、油断はしない。



「もうそろそろだ。準備出来てる?」


 僕は軽く拳の突き一発で壁を破壊しながら、振り返ってそこの二人に告げる。


「出来てるよ。……でもやっぱり早いねー」


「私達が一階層を約数時間掛けて突破したのに対し、ユトさんはたった一時間程度で、ですからね……。壁を破壊して常に最短距離を突いている所為ですかね……」


「……あ。私も準備オッケーです」

 ガレーシャはその後、ふと思い出したかの様に手を上げ、答えた。


 ……まあ多分大丈夫って事ね。


「了解。……ここを抜ければ、次の階層が待ってる。行こう」


 僕達は相槌を交わし合い、綺麗に開けられた新しい通路を通る。


 そして、突き当たりを左に行った先。



 ……そこには、重厚な石扉が佇んでいる。



「あれを行った先が、この階層の最終地点……でも、この奥までは見れてない。けどたった一つ、見えたものがあった」


「見えたもの?」

 モイラが、含みのある話し方をした僕の言葉に反応する。


「……あれは魔族だった。……でも、只の魔族じゃ無い。凡ゆる知識や魔力を溜め込んだ、老練で不気味な、漆黒を纏った、人型邪龍だった」


「人型邪龍!?そんな存在が居るんですか!?」


 ガレーシャの驚きを見るに、やはりこの世界でも人型邪龍と言うのは危険で珍しい生物らしい。




 ……以前、僕は仕事の一環で、あるファンタジーな世界に訪れたことがある。


 それは何の変哲も無い、幾億と見たことがある世界だった。


 僕が降り立ったのは、普通の中小国家。


 成り行きで知り合ったその国の国王の口から、ある魔族の名前と共に、こんな事を聞いた。



「以前、我が国の首都は、人型邪龍に滅ぼされた事がある……それも、たった一人の、子供の人型邪龍にな」



 ……聞くと以前のその国は、首都を滅ぼされる前は、最強と謳われた軍事国家だったらしい。


 向かってくる敵国はひれ伏させ、瞬時に配下に収め、支配するほどの強国だったとも。


 だがある日首都に侵入した、たった一人の人型邪龍によって、その国の首都は為す術も無く、簡単に滅ぼされたのだと言う。


 それ以来国の威厳は落ち、首都に居た最強の兵達が首都と一緒に殆ど戦死した事により、国の力は軒並み下がっていった……と。


 ……そう言う事だ。



 人型邪龍と言うものは、国を転覆させられる程の力を持っている魔族だと言う事だ。


 元々、人型邪龍と言うものはそんな簡単に出てくる存在じゃ無い。


 人型邪龍が出てくる大体の理由とすれば、邪龍が進化して人型になり、知能を得た事によってなる物。


 知能を得れば、大体の魔族は実質強化されるという事なので、邪龍も例外では無い。


 進化前の邪竜自体でさえ、世界中の何処を探し回っても出てくるか来ないかくらいの数しか居ないので、それが人間に狩られず、進化出来ると言う事自体が稀。


 それ程までに人型の、しかも邪竜ほどの上位種の魔族と言うのは稀なのだ。


 だからなのか、その人型邪龍と言う物は、災害レベルと謳われる程に強い。


 実際僕も戦った事はある。



 ……結果は、ご想像にお任せするけど。



「だが例え、この奥に人型邪龍が居たとしても、僕達は進まなくちゃならない。……下の魔族達の為にもね。そうでしょ?創造神さん?」


 僕は若干煽り立てる様にモイラの目を見た。


「もっちろんさー!行くよ!行っちゃうよ!躊躇なく行っちゃうよ!?」


 帰って来たのは、いつも通りのモイラの言葉だった。


 モイラは、行きたくないオーラを醸し出しているガレーシャを引き連れ、その石壁の前にて佇む。


「……どうぞ?」


 そしてモイラはまだかまだかと僕を見て来たので、子供を見るような目で僕は返事しておいた。



 ……まあ、元々モイラにあの扉を開けさせる気でいたから良いんだけどね。



 モイラに掴まれて、最初暴れていたガレーシャも最後諦めがついた様で、暴れるのを止め、攻撃魔法の展開をしていた。


 ……切り替えが早い事。


 でも、そのガレーシャ口からすっごい大きな溜息が流れ出ているのを見て、苦渋の決断だった感じなのは否めないと思ったけど。


「オッケー!開けまーす!」


 モイラは飛び込み水泳選手の様な掛け声を上げて、その石扉をこじ開ける。


 両開きに横開きだったエレベーター方式の石扉の様で、一瞬開けるのに戸惑っていたが……。


「せーい!!」


 大きな掛け声と共に、石壁は開けられた。



 ーーその奥にあったものとは……。


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