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魔族街の高層建築物

 

 この街に住む子達は何処かおかしい……そう気付いたのは良い。


 だが、一番優先すべきはこの魔族達を調べるより、この空間から安全に脱出する方法を模索したほうが良いのは火を見るより明らかだ。


 だからモイラ達と、今こうして議論を重ねている。ラット君も含めて、ラット君が貸してくれた家の中で。



 ……ラット君から聞く限り、この空間の魔族達は闘争心こそ無いものの、この空間から脱出したいという野心を持っているようなのだ。



 全く。野心を持って闘争心を持たないのは、些か矛盾しているような気がするんだけどね。


 ……まあそれは後にして、モイラ達との議論の結果「この魔族街を隅々まで調べた方が良い」と言う結論に至った。


 この魔族街はかなり広い。ちょっとした首都位の大きさは有している。


 だが、広い代わりに何かあるのでは無いか、と言う仮説の元、僕たちは町を探索しようとなった。


 ……でも、そこでガレーシャやモイラからの提案があったんだ。


 それは、ラット君にも個別で町探索を頼んだ時……丁度ラット君が去った時かな。


 僕がこの魔族街の魔族達の異質さについて説明し終わった後、彼女たちは言った。


「調べましょう!魔族さんたちの事も!」


 と、言い放った。


「時間かかるから却下で」


 当然僕は反対した。


 だって、彼等が闘争心を失った理由なんてどうでも良いから。


 たかが魔族の変化に、僕たちがわざわざ付き合ってやる暇はないしね。


 しかも、その理由が「五億年の進化によるものでした〜」とか言われたら、意味が無いし、ムカつく。


 それだったら僕は問答無用でこの街を吹き飛ばすよ?


 世界破滅を見せられて休暇を潰された挙句、こんな魔族達に労力を注いでそれが無駄だったと知るよりかは、この街を破壊して、それから安全に空間から脱出する方法を探して、サッサと古代兵器を破壊して、休暇を取り戻した方が何千倍も良い。


 実際、こんな閉鎖空間なんて、手段を問わなければ幾らでも出れる手段はある。


 だと言うのに、この子達は……。


「でも面白そうだよー?」

 モイラは満面の笑みを浮かべ、まるで洞窟探検に行く少年の様に胸を躍らせている。



 ……面白い?



 ただの取るに足らない魔族達の為に「面白そうだから」という理由で僕の労力を割かないといけないのか?



 ーーー聞き捨てならないね。



「駄目なものは駄目だ。疲れる」

 僕は真っ向から否定した。


「駄目!行くの!」


 だが、彼女らは引き下がらなかった。


「……なんで?」


 僕は睨んだ。鬼の形相で。休暇に戻りたいから。


「面白そうだから!」

 だが、彼女達はそれでも引かなかった。


 寧ろこっちに近付いて、説得をしようとしている。


 僕の睨みと彼女達の説得の瞳がバチバチと火花を上げる。


 彼女達の瞳には、折れないだろう信念があった。



 ーーーーはあ。これは崩せないね。



 僕は呆れた様に溜息を吐いた。


 そして、諦めた。


「……はいはい面白そうだね。行くよ行くよ」


「ーーー良いの!?」


 彼女達は飛び上がって喜んだ。



 ……全く持って『うざい』の一言に尽きるけど、仕方ない。



 モイラ達のあの目は本当に、人を思いやる心に満ちていた。


 だから諦めた。呆気なく。


 だって、あんな眼を見せられたら、動くしか無いでしょうに。



 ♦︎



 そして翌朝。



 ……日が刺すところから考えても、この空間は仮想の太陽があるのは確かの様だね。



 で、僕達は今街を駆け巡っている。


 時には建物の屋根を飛び回り、時には暗い路地をトカゲの様に走り回る。


 それは街の偵察のため。


 この空間から脱出するには、この街を隅々まで探索した方が効率がいい。それで脱出の手段が分かったら上々だ。


 そして、その途中で魔族達の秘密が分かったら良いな、と言う感じらしいね。


 まあ、たった一日目でそんな一気に分かるはずも無いから、試しだよ、試し。



 ……で、僕達がどこに向かっているかと言うと。



 ーーータワーだよ。





「……あれ?何処へ行くんだっけ?」


 路地を走っている際に、モイラがそう言う言葉を口ずさんだ。


 確か……モイラもあの作戦会議の時に行き先を聞いている筈だけど?


 その上で忘れちゃってるの?……まじ?



「昨日の夜確認したばっかりでしょ?」

 モイラのアホみたいな言葉に僕はイラつく様に言った。


 昨日の夜の事すら忘れるなんて、モイラ大丈夫?


 昨日の夕飯を思い出せないみたいに忘れるのは……無いよ。


「……え?そんな事言ってたっけ?」


 困惑の反応を見るに……本当に思い出せない様だ。



 ……は?と言いかけたけど、これがモイラクオリティー。あり得ないけどね、普通。



 だが、ガレーシャが説明してくれた。


「そろそろ見えてくるはずですよ。イエロウズ・タワーが」


 ガレーシャはモイラに軽く説明し、暗い路地に刺す光の筋を見て笑う。


 彼女自身もそのタワーを見るのが始めてだから胸を躍らせているんだろう。


 僕もそうだ。


 イエロウズ・タワーについてラット君は備考程度に教えてくれた。


「魔族街で一番高い高層建築物だ」とね。


 その高さは三百メートルは超えるらしい。凄いね。


 その建築技術は素晴らしいと思う。しかも古代遺跡にあるんだ。


 それだけで興味を引くものがあるね。



 だけど……五億年の時を掛けて尚三百メートルの高層建築物を作る『だけ』の技術しか無いとすれば、それはおかしくなる。



 だって、五億年の時間を掛けている筈なのに、電気などの開発位に留まっているのはおかしいから。


 他の世界で言う二十一世紀現在の東京くらいの技術力に見えるからね。


 でも、それだとおかしいんだよね。発展が遅すぎる。



 ……まあでも、それはイエロウズ・タワーで分かる可能性あるしね。



 そして、僕達は光刺す路地から飛び出した。



「……見えた。イエロウズ・タワー」


 そこに見えたのは周辺の建物とは比にもならないくらい巨大なタワー。



 そのまま僕達は屋根を駆け、タワーへと向かって行く。



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