表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
182/196

視せられた未来

 

 頭痛。脳に伝わる死の情報。

 無意識型で発動された満目蕭条ノ眼(ボーダムアイ)は、即座に未来を伝えた。


 ───────────────────────────────────────


 白馬によって吹雪が踏みにじられる。

 木は強引に切り倒され、警備の兵は切り殺される。


 知った様に解除されていく罠。数百を超えた兵士。

 (うごめ)く白い鎧。

 光る銀槍。


 事象操作、魔法、武勇。

 あらゆる道を修めた謎の兵達は……銀世界を豪快に抉っていく。


 木製の門は破られ、人は斬り殺される。

 刺し殺される。

 そして、眼光は洞窟へ。


 いや。もしかしてあれは───。


 ───────────────────────────────────────


 殺意。長年の勘。

 脳内に構築された答えは、ただ一つだけ。


「───伏せろ!!」


 襲撃である。


「……ッ!!」


 瞬間、轟音と瓦礫が空間に飛び散った。


 数人の兵は下敷きになっただろうか。

 僕は吹き飛ばされ、受け身を取ったは良いものの……壁に打ち付けられた。


 舞う土煙の所為で分からないが……多分モイラ達は無事だろう。

 今確認、すべき事は……。


「王国精鋭兵……っはは」


 彼らの兵装を確認した僕は、笑い混じりにこの状況に絶望した。

 見た事しか無い。あの精鋭兵は、この僕が……僕達が鍛え上げた子達だ。

 ……恩知らずが。


「何故ここがバレた……ッ!!」


 同時に、イドルは苦悶する。

 自身の腹わたに刺さった、一つの瓦礫によって倒れながら。


 頭目イドルは、怒りながらも兵達の兵装を確認した。

 光り輝く銀槍。白く光る白金の鎧。

 身を覆う長剣にハンマー。


 その全てには、異常とも言える魔力と……血が滴っていた。

 一人十人は殺していたのだろう。恩知らずが。


「大丈夫?モイラ達もイドルも」


 とりあえず、僕達は体制を立て直した。

 瓦礫を器用に粉砕したガレーシャを気遣い、身を寄せ合っていたモイラとフェルナを呼び寄せ。

 苦悶に満ちているイドル君を立ち上がらせつつ、王国兵達を睨んだ。


 その間に攻撃されなかったのが不思議だが。

 まぁ、その理由は直ぐに分かる事だった。

 何故なら。


「──────久しぶりだね、イドル」

「……ッ!!?」


 洞窟を抉った王国兵達の後ろから出て来たのは、白馬に乗った第一王子ユリだった。

 その口調は、何故か懐かしそうな物もあり。

 イドルと同じく、殺意に満ちていた。


「──────こうやって直接顔を合わせるのは、何年振りですかぁ……三年?」

「……二年だ。───糞()が」

「え」


 僕達は驚いた。

 感動の再開についてではなく、イドルから出たその単語に。

 けれど、口を挟むことは……何故か出来なかった。


「───お前がわざわざ出向いて来るって事は、ごはっ。……何の用だ?」


 イドルは血を吐く。


「───当然。王国を裏切った弟をこの手で殺す為だよ」


 ユリの口から出た狂気。

 それにイドルは、嫌そうに睨みを返す。


「何故、このアジトが分かった?」

「……そこは全て、スーゴが」


 同時に、僕達でも知っている老執事がユリの背中から出てきた。

 白馬にも乗っていない。スーゴは雪も被っていない様子だった。


「───糞爺が。まだおっ死んで無かったのかよ」

「ええ……ご機嫌よう、イドル様。私はまだ死ねない様で。この二年間、じっくりと探らせて頂きましたよ」

「そうかよ。───最近の民の虐殺も、ジジイがしたのか?」


 すると、スーゴはキョトンとした様な顔で首を傾げた。


「……何の話でしょう?」


 奇妙さも在ったが、その老執事の言葉は嘘ではない。


 だからなのか、イドルは血を吐き出しながらも腹に刺さった瓦礫を突然抜き出し。

 そのまま魔法で応急処置しつつ。

 生き残った兵達に、何やら伝令を下した後。こう言い放った。


「───はっ。まぁ良い。どうせお前ら、俺を生きて(かえ)しゃしねぇんだろ?」

「ご名答。僕の弟……イドル・スノウスト()第二王子」


 イドルが剣を抜くと同時に、ユリも決意と同じく剣を抜く。

 途端に、王国兵達も体制を整えた。


 ……やる気の様だ。

 巻き込まれてしまったかね。僕達は。

 焦る僕達。そんな中。


「……さっき兵達に伝令した。───俺が殿(しんがり)だ。頑張って逃げろってな」

「優しいね、やっぱりイドルは」

「うるせぇな。糞兄……糞指揮官に褒められたかねぇよ。……死んでもな」

「はは。精々足掻いて下さいね。─────────これも母様の為だ。……成敗」


 イドルも、ユリも。王国兵達も。執事も。

 全員が、剣を向けてイドルへ殺意を向けていた。


 ……このままではイドルが死ぬ。今は流石にそれ駄目。

 という訳なので。


「参加……するしか無いよね」

「ですね。これも人殺しを諌める唯一の手段と考えれば……」

「だね。───“中立”としての腕の振りどころだっぞーぅ!!」


 そうして、フェルナを除く中立の三人は戦線に加わりに行った。


「あの二人が……兄弟」


 フェルナは、少し先程の会話を痛ましく思い出してはいたが。


「フェルナちゃーん!早く!」

「あ、分かった!!行きますわ!」


 モイラに呼ばれ、仕方なくフェルナは思考を放棄して戦争に介入する事にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ