表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
170/196

あの豪傑から受け継いだ、その槍術

 

 叛逆と中立の戦い。

 確かに理屈は通っていたが、成り行きだ。

 理由はあるにしろ、果たし合いの様な深い戦いという訳でも、無い。

 だが、これしか無かったのだ。


 そう。命を賭けてでも。彼女は……やらなければならない。

 それが、彼女なりの救済だから。


 ───火花は散る。

 ランタンの光は揺れ、暗がりに閃光が飛び散る。

 槍は地面を抉り、剣はそれを受け流す。


 究極まで洗練された武芸は、両者共々に牙を剥く。

 故に帰結せず、攻撃は空を割くのみ。


 けれど常に間一髪で、その様は息を飲まずには居られない。

 いつ決着が着くのかは二人次第。

 中立の命運は、ガレーシャの手に懸かっている。


「はぁっ!」

 だが彼女は焦らない。

 あの母親に教えられたからか、その武芸には一切の乱れが無い。

 更に隙も無く、攻撃は流れ行く清流の如く鮮やかである。


 まるで受付嬢とも思わせぬ豪傑さ。

 ───その突きは、轟音と共に空を鳴動させた。


(……ッ!?こいつ本当に受付嬢か……ッ!?)

 イドルはそれを間一髪で避けた、は良いものの。

 青年は、女とすら感じさせぬ相手の武勇に心底驚いていた。

 ……いや。それでこそ成り立つと、そう悟り。心の中では笑っていた。


 次に舞ったのは、イドルの剣だった。

 そして、疾風の如く凪いだのだが。

 それでも届かず───イドルは瞬時にして蹴り飛ばされた。


 次に来る追い討ち。

 それをイドルは察知し、そのままに剣を振った。

 ───命中。槍に、だが。


「……ちッ」

 鳴らされるは舌打ち。

 受付嬢への殺意が、彼の中で昂り。

 両者そのまま、数百にも近い連撃を交わした。


 されど、その末にも傷は付けられず。

 両者は、拮抗している状態で飛び退った。

 次いでイドルは、再び交わされた睨みの中で……こう呟いた。


「……確かに、アンタも。アンタらも。立場相応に強いのは理解した」

 出て来たのは感服。

 中立ながらも凄まじい力を持つだろうと言う、ある意味での恐れだった。


「それは認めてくれた……と言う事で良いんでしょうか?」

 すかさずガレーシャは問う。

 けれど、帰って来たのは嘲笑であった。


「馬鹿か。まだ俺は……俺達は、お前らの人格を知らねぇ。───悪魔にもなり得るバケモンと、俺達は馴れ合いたく無いんでな」

 イドルは、頭目として告げた。

 ただ自分勝手なだけで無く……頭目としての自分を重んじて。

 そして、ひねり出された言葉は至極真っ当なもの。


 ───ここからが本番だと言う事を、ガレーシャは理解させられた。

 周囲の、叛逆軍幹部の視線も痛い。

 一向に緩まない敵視に、ガレーシャは裏腹に笑った。


「……分かりました。───ではこのガレーシャ・ミリア。謹んでご期待に応えましょう」

「良いだろう。本気で来いよ……ガレーシャ」

 然して……第二回戦の鐘は、大きく鳴らされる。


 ♦︎


 雰囲気が変わった。

 今までは……少し違和感が有ったのに。

 何か偶像を敵にしている様な感覚が有ったのに……今回は違う。

 彼が本気になったからでしょうか?

 兎に角分かることは。

 この人は……段違いに強くなったという事。


「……ッ!?」

 ガレーシャは顔を(しか)める。

 イドルの猛攻に。

 それに普段のペースを崩している自分自身に。


 今すぐ喝を入れたいところだが、それをイドルは許さない。

 やはり、一段と彼は強くなっていた。

 足取りが軽く、剣筋は鋭い。

 足運びは予測不可能な程に疾く、気付けば目の前に居る程。

 そして隙などは微塵も感じられぬ剣幕で、イドルはガレーシャを追い詰める。

 この強さ。仲間を想うあまり……だろうか。


 だが、彼が本気になったのは事実。

 今まで隠された剣技が解放され、猛威を振るい……その全てがガレーシャへ向かう。


 白刃の刃は闇に紛れ、太刀筋ごと存在を揺らめかせる。

 ランタンは数多の攻撃によって全て掻き消え、頼れるは夜目だけ。

 未だ魔法などは飛んでこない……今は。

 そして極め付けは……時々彼を見失う事。


 十中八九彼は、この空間を熟知している。

 適度に暗がり、視界が上手く確保できないこの鍛錬場を。

 だからこそだろう。

 さっきから、捉えられぬ攻撃が多々飛んで来る。


 確かに防げぬ程ではない。

 けれど『見えない』のは大きな隙を生む。

 これはガレーシャもその気にならざるを得ない。


「ふぅぅ……」

 そうしてガレーシャは槍に身を任せる。

 息を吸い、感覚を研ぎ澄ませて槍を構える。

 自身が築き上げて来た槍術は裏切らないからと。

 そして相手を敬い、またも彼女は槍で空を割った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ