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そこで今、彼女が名乗りを上げる

 

 洞窟内に建造された、特別鍛錬場。

 観客は最低限。

 どうやら、全てはイドルの集めた幹部らしい。

 観衆は必要な数だけに留め、この戦いの結果を見届ける事が出来る者しか相応しくない。

 つまり応酬として、僕達は認められるだけの人材に成らなければならない。

 叛逆軍に、僕達を『中立』として認めてもらう為の犠牲。


 ───それが、ガレーシャだったという事だ。

 そう。犠牲だ。

 少しばかり皮肉交じりだが。

 ……実際はそれ程残酷では無い。

 そもそも、仲間を死なせる様な危険をこの僕が犯させる筈がない。

 今も自分で出張って行きたいくらいだし。


 けれど、それは叶わない。

 それが彼女自身の望みだったから。

 僕は強制などしない。だが介入は許せ。

 ……流石に、目の前でガレーシャの首が吹っ飛ぶのを見たくは無い。


 ガレーシャなら、そんなヘマを踏む筈は無いと思うが……。

 だが、油断は禁物。

 もしもの時があれば、その時は僕達が止める。

 メリット、デメリットは鑑みずに。


 ───そして、そもそもの話。

 何故こんな状況になっているのか。

 何故ガレーシャが戦う事になったのか。

 その他諸々の回想を……今、振り返る事にしよう。


 ♦︎


 対戦場裏。

 一枠のみの参加枠を巡って、僕達は議論を重ねる。


「この戦い……やるなら確実性のあるユトさんとモイラさんだけれど……」

 まずフェルナに名前を上げられたのは、僕とモイラ。

 確かに『勝つ』という仕事に於いて、僕達は充分な功績を残せるだろう。

 けれども。


「けど……ただ最強を打つけるだけじゃ駄目な気がするのよね」

 フェルナの言う通り……実にその通りなのだ。

 確かに僕達は勝利を求められている。

 けれど同時に“その意思”を求められている。


 それ即ち、中立を築こうとする意思。

 若しくは、中立足りうる人格を試されている。

 こればっかりは、王国側にもやらされた。


 怠惰は許されない。

 余裕も、油断も切り捨てなければならない。

 この戦いは、死闘とその意思を表明してこそのもの。

 僕達にはそれが出来ない。

 真に熱い戦いと言うモノは、僕達には出来ない。

 だからこそなのか。


「その意思を試されると言うのなら……私が」

 ガレーシャは名乗りを上げた。

 真剣な表情で。

 自身の使命を悟った様な顔つきで、彼女は謳う。

 ───イドルは、この私自らが倒すと。


 ♦︎


 異論は無かった。

 残念ながら、だが……今更死を気にしていては仕方が無い。

 そもそもそんな機があれば、僕達が死力を尽くしてでも止める。


 だからこそ僕等は睨む。

 観客席、と言われて通された舞台裏で。

 あの闘技場とは違った、静かな雰囲気に紛れ。

 暗闇とランタン混じった、怪しい空気を吸い込んで……僕は呟いた。


「とは言われたものの……少し不安がある」

 出てきたのは不安。

 少しでも間違えたら、ガレーシャを助けられないかも知れないと言う緊張。

 こう言う心配は無用だろうが……いかんせん、想像してしまう。

 彼女は子供では無いと……分かってはいるのに。


「大丈夫よ。彼女自身───馬鹿みたいに強いから」

「そう……だね。心配し過ぎかな」

 だが、フェルナの声で僕は平静に戻った。

 確かにそうだな、と……相手がフェルナなりに思い知らされる。

 本当に子供なのは僕かも知れない───と、皮肉の様に捉えながらも。

 僕は頷き、安堵する様に目を閉じた。


「実際、私もそうだったんだけど……そうだよね、信じる事も大切か───あ。始まるみたいだよ」

 そしてモイラの声と共に、中立と叛逆との戦いは始まった。


 ♦︎


 相手は剣。両刃の、一般的な殺人道具。

 それは訓練用ではなく、本人の愛刀らしい。


 対するは槍。

 母に教えられた、自身に最も馴染む戦闘スタイル。

 それに彼女なりのオリジナルも交え、本物とはかなり違っている。

 そして、使わないだろうが能力がある。


 叛逆軍幹部からの吐息が聞こえる。

 その眼光は、審判は───身を刺すかの如く冷たかった。

 これも、本気の殺し合い故か……とガレーシャは息を吐く。


 揺れる受付嬢制服。

 今まで、表立ってこの槍術を使う事は無かったが……。

 彼女自身、これは修羅場だと。

 実力を発揮すべき場面だと、理解していた。


 だからこそ彼女は向ける。

 不殺にして必滅の槍を。


 イドルは向ける。

 自身の偶像と決意篭った剣を。

 ───そして、次には舞い散る火花が洞窟内を駆け巡っていた。

気付けば、PVが一万を超えていました。

まぁ、そんな事を気にしている位なら小説を書いた方がマシだと……私は考えます。

ですが、応援は多ければ多いほどいいので……見てください。

そして応援してくれると嬉しいです。


……以上、作者の戯言でした。

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