第一王子
状況確認と行こう。
首都までの大階段。
城門から流れるそこに出で立つは、二人の人物。
一人は、僕達に声を掛けて来た銀髪と黒髪混じる青年。
結構な童顔だけれども、それでいて威厳がある。
そして戦いを沈静化するカリスマ性を纏う青年は、かなり大人びていた。
……で、もう一人。
白髪に、シワの寄った顔付き。
黒い正装を身に付け、青年の横に立って静かに僕らを見据えるその人物。
明らかに老人だ。静かながらも老練さが垣間見える。
その二人共、服装が薄い事から吹雪対策の結界を張っているようだし。
ふむ。両方とも相当の実力者か。
魔力量やら気迫やら、状況やらで逆算、推理すると……。
この子達は王族関連、それで間違いなし。ならば。
「君達は?」
名前を尋ねるに限る。
悪名高いであろう王族の名前を聞ければ、後々便利になるだろうし。
すると、銀髪黒髪混じりの青年は思い出した様に目をほんの少しだけ笑わせ。
「そうですね。先ずは自己紹介をば……。僕はユリ・スノウスト。ヒイラギ王国第一王子です。そしてこの横の執事は、スーゴ・ターライト。僕の専属執事です」
偽り無く自己紹介。
(第一王子。やっぱりか……推理が当たるのは気持ちが良いものだけれど、こんな大物が来るとは)
うむ、高望みしすぎて自分から手綱を引いてしまったかな。
まあそんな風に僕が思っていると。
「貴方達の名前は───いえ。ここでは何です、中で話しましょう」
ユリ、とやらは自分から僕達を首都へ誘った。
それも嘘偽りない、無垢なる笑みで。
王族らしからぬ発言、慈悲深さ……僕達は君の部下である兵達に敵と判定されていたのに。
けれど、それについては全くの不問。
近衛兵はその対処に若干体を揺らしたが、直ぐに認めた様でまた跪いた。
……ふむ。国家権力の決め事には、兵は何があっても逆らわない……。
合理的、効率的で僕は良いと思うが……少しばかり悲しいかな。
まあともかく首都へ誘われてしまったので、一応僕は後ろの三人に視線を送った。
そして、それについて少しばかりの困惑が送られた事に、僕は激しく同意を交わしたとさ。
♦︎
でもまあ、行くけど。
誘われたなら行きますけど、首都。
争いを不問にしてくれるなら良いんですけど。
『気になる事』も分かって解決したから良いけど。
だが───。
「……よくもまあ、僕達を軽々しく入れられたね。王子」
僕は、皮肉混じりに呟いた。前を先行する、王子にも聞こえる様に。
案外簡単に入れてしまった首都の様子を俯瞰しながら。
けれど、栄える首都の様子を見て身の内では安心する。
まあ、直ぐに前言撤回する事になるけど。




