うん。誰。
狂った王国。これ正に絶対凍土王国、ヒイラギ。
その城門には一つの選択のみを選ぶことを強要する近衛兵が。
国家の権威が振りかざす選択は、断る事を辞さない圧力を持つ。
変わらない、変えられない選択肢。
……断れば死ぬ。
けれど、受け入れても良い未来は期待出来ないだろうさ。
兵達はその事を知っているのかは分からないが……それでもこの国がある程度狂っているのは理解した。
けれど近衛兵は『規範』に従う。虚しく、されど残酷に。
そしてそれについて僕達が言葉に詰まったのを良い事に、兵は槍を握る。
「……では話を少し戻そう。───そこの女。貴様は、一体何者だ?」
弛まぬ眼光で、ひたすらに兵はフェルナを睨んだ。
もう既に険悪な雰囲気。
槍をこちらへ向ける兵の目には、人を殺すことに全く躊躇しない様子が見えた。
怪しい様子を見せたら、即打ち首……それ位はして来そうな覇気を、近衛兵は纏っていた。
問答無用。委細かまわず反乱分子は排斥する……か。
「……」
けれどフェルナは答えない。いや、答えられない。
自分には、身分を証明するものが無いから。
唯一の救い、ダイヤランクタグも……彼女は「要らないだろう」と異次元に収納してしまっていた。
しかも、だ。
もう既に彼女には、それを取り出す事が出来ない
さっき言っただろう、怪しい様子を見せたら即打ち首と。
だからこそ彼女は、身動きも出来ない。
異次元収納からタグを見出そうとも、その間には首を跳ねられている。
目の前にて立っている近衛兵は、それ程までの実力者なのだ。
故に彼女は動けず。身分も証明出来ぬまま。
冷や汗は流れ、雪に滴る。
ただ、間に寒風が通り過ぎるのみで時間は過ぎて行く。
すると突然、近衛兵は有無を言わさず魔力の檻を僕達の周りに展開した。
「───判決は下った。其処のメイド服の女は打ち首……他三名は国家に引き入れる」
残酷な事を淡々と告げる近衛兵の目は冷徹で、尖っていた。
其処に、僕達への同情の意は全く無く。
眼前にて佇む人間の言葉を、慈悲深く聞き入れる意思すら見せず。
ただただ、フェルナを除いた僕達を戦力として捉え……邪魔者を排除する。そんな冷たい気概をひしひしと感じた。
気付けば、城壁の上にて待機していた兵達も僕達へ魔法陣を重ね、フェルナの排斥準備を整えていた。
「……冗談じゃない。彼女は僕達の大事な『仲間』だ。部外者の君達にどうこうされる筋合いは無い。───そんなに首都に入れたく無いのなら、僕達は喜んで踵を返すが?」
と、報復を顧みない煽りを交えて訴えかけたのは良いものの。
近衛兵は全く聞き入れず。
寧ろ周りの魔力檻を強化しながら、こう告げた。
「───我がヒイラギ王国の首都に立ち入ろうとした時点でもう、何者もこの裁決からは逃れられない。───では汝らに最後の問いを科す……」
「──────汝らは敵か、味方か。我が陣営に入るに足る器であるか?だが言葉に気を付けねば、即座に汝らの首が跳ね飛ぶ事であろう」
ずるいなぁ、こんな方法取って自白させようとは。
目の前で刃をチラつかせ、こちらに殺害の躊躇など無い事を示し。
国家という後ろ盾を利用して逃げられぬ様檻を作り、そして問い詰める。
「汝らは敵か?」と。
否定すれば打ち首。
嘘を吐けば首が飛ぶ。
かと言って従属しても……ロクな未来が待っていない。
レジスタンス側に付いたとしても、これに関しては同じ事が言えるだろう。
……言うか。打ち首を覚悟してでも。
だって、仲間を一人犠牲にするくらいなら。
僕はこの国を相手取った方が、数倍マシだと……そう考える。
あと、少し気になる事があるから……。
僕は深呼吸を一つ、した。
状況に焦る後ろの三人に、少し笑顔を送りながら。
僕は立ち向かった。
「──────我々は君達に付き従わない。派閥にも入らない。しかして『中立』を貫き通させて貰う」
「なに……」
近衛兵の気配と檻の強度が、分かりやすく強張った。
それに僕は軽くお辞儀し、ただ右腕を払った。
虚空目掛けて。
けれどそれに相反し……檻や城壁上の兵達の魔法陣は、突如として砕け散った。
パリン、と。
「……ッ!?」
それに、咄嗟に槍を向けて応戦体制を見せる近衛兵。
けれど僕は怯まず。
「これで……どうかな?ちょっとは改心してくれたら嬉しいんだけど」
僕は笑う。
理解できない超常の力を振るい、その上で威嚇して。
「首都に入れてくれないかな」と、願望的に目で語らう。
まあ、これはどれだけ彩ってもただの武力行使。
近衛兵達が「ああそうですか」と言って道を通す筈もなく。
「……逆だな。汝らは国の脅威足り得ると、今判断した。首都に入れる気など、甚だ失った。汝らは有能な人材……だった。惜しいがここで排除させて貰う」
事態は悪化。
一触即発、いやもう既に開戦してるか。
まあ兎に角、フェルナの死を免れたから万事おっけーだ。
だが、僕はここで交戦する気は無い。
さっき言ったからね。『中立体制』を築くと。
僕は軽くバックステップで引き下がり、後ろの三人に向け、
「……撤退するよ」
呟く。
すると、ガレーシャは、
「良いんですか?首都を目の前にして」
「問題無い。いざとなったら後日侵入する」
その豪語に、フェルナは笑い。
「豪快ですわね。───でも、助かったわ。こればかりは私の失態……後で説教受けるつもり」
「良いのさ。人間、誰にだって失敗はある……モイラ、行けるかい?」
「……うん!行けるよ!」
「分かった、なら……」
僕は声を張り上げた。
今すぐにでも槍を投擲してきそうな近衛兵と、上で構えている兵達にも聞こえる様に、大声で。
「全員峰打ちで排除するから、歯食いしばってね!」
かくして、僕達は思いっきりの反逆をしようと足を踏み込んだ。
途端、敵意がこれまで以上に高鳴りはした───のだが。
「──────辞めよ、その叛逆。その応戦」
近衛兵の背後から現れた謎の男の言葉によって、全ての戦闘は停滞した。
異常な存在感を放ち、透き通る様な声を持つ声は、即座に王国側の兵達の戦闘を中止させた。
総て、例外無く。
その様、まるで一国の王の如く。
「はっ」
その声はさっきまで物凄い殺気・威光を放っていた近衛兵ですら跪かせる程だった。
……唐突に始まりと終わりを迎えた戦闘。
僕達がそれついてに困惑する暇も無く。
首都へ向かう大階段から降りて来た『二人組』は、その身に纏った外套を脱ぎ捨て。
その姿を露わにし、こう告げた。
「神術の三大勇者の一角、フェルナ・コルチカム様。その御一行ですね」
銀髪と白髪混じる謎の青年は、そう僕達に笑いかけた。
うん。誰。
ちょっと状況理解出来ないから……うん少し待ってね。
……だれ?
うーむ。ちょっとこの部分駄作感が否めない……。
まぁ、それは何時も感じている事なので……多分大丈夫(なにが?
あ、出来れば御評価を。
……以上、作者の戯言でした。




