ぐう有能
ヒイラギ王国。
それは絶対零度の国であり、吹雪荒れ行く土地。
その国には古代兵器があると見られる。
でもヒイラギ王国自体、最近は内戦の真っ只中にあるとか。
その理由は不明。
けれど、ヒイラギはリアンやメイゼラビアンと並び立つ程の大国だとか。
ヒイラギは、主に武器産業と魔法・化学文化が発達しているとか。
確かに、ここは前人未到に近しい凍土の地。
そう言った技術を磨くしか、生き残る術は無さそうだもんね。
……で、そんなヒイラギ王国なんだけど。
「───ガレーシャは兎も角、なんで猫耳……フェルナが居るの?」
「うぇっ?だってヒイラギ王国知ってるの私しか居なかったし、私自身行ってみたかったんですわよ」
「……確かにそうだったね」
ああそうだ、忘れた人に説明すると。
この、メイド服と猫耳生やして〜ですわと上品な語尾を付ける女性こそが。
───フェルナ・コルチカム。
世界に名を轟かせる神術の三大勇者の一角『神術師』であり、マッドサイエンティスト。
アーサー君と入れ替わりで登場したよ。
後、修行終わりのガレーシャも連れてきたよ。
つまり今ここには僕とモイラ、フェルナとガレーシャの四人が居ると言う事だ。
……男女比どうなってるんだ。
兎に角、今にもフラスコ持って雪を採集しそうなこの猫耳美少女、フェルナだが。
「本当に私、噂でしか聞かなかったけれど……こんなに凄い豪雪地帯だとは───」
今現在、ヒイラギ王国の絶対凍土っぷりに驚いている。
確かに、ここは凄い。
見渡す限りの雪、雪、雪。
ここは針葉樹林の中の様だけれど、それでも吹雪は合間を掻い潜ってくる。
林の終わりに見える雪の平原は、ほぼ雪の砂漠で。
森林の中でさえも、僕の足が膝近くまで埋まる位の降雪量があった。
あ。でも僕身長低いから───。
「───色々な研究に使えそうだわーーーーー!!!」
と、僕が自虐ネタに走りそうになった時に、フェルナが叫び散らす。
……はいこれ。
これが僕がフェルナを『マッドサイエンティスト』と嘲った所以である。
面白そうな物があったら即研究。何が何でも研究。
相手が人でさえも実験してしまいそうだからの……マッドサイエンティスト。
目を星の様に光らせて、雪の研究をしようとする彼女、だが。
「はいはい。やめましょうね、フェルナさーん」
ガレーシャの華麗な対応によって沈静化。
「え〜」と駄々をこねるフェルナだが。ちょっと待つと直ぐに静まった。
───ナイスガレーシャ。
僕達が闘技場で遊んでいた約一ヶ月の間に、こんなにもフェルナの扱いが上手くなって……。
これで僕が手を焼く事が無くなったから本当マジで有難し。
「……って、何でユトさん達はそんな『ザ・私服』って服装して。寒く無いんですか?」
そんな所で、ガレーシャは僕達の服装に疑問を抱いた、が。
「ガレーシャちゃんもそうでしょう?」
「あ、そうでした」
モイラの指摘通り、ガレーシャ自身もそうだ。
と言うか僕達全員が私服。
───全く寒冷地探索様の服装をしていない。
まあ、それは一重に結界のお陰だけれど。
僕達の体周りに貼っている守護結界を『暖房』へ変質させる事で、僕達は私服姿で凍土の地を探索する事が出来る様になったと言う事なのさ!
本当、結界って便利ダネ。
「ガレーシャの様子だと、僕が以前密かに与えた結界が馴染んでくれたみたいだね」
「……ああ。やっぱりこの結界ってユトさんがくれた物なんですね」
ガレーシャは長い疑問が晴れた様に相槌した。
言ってなかったのが悪かったけれど、以前僕はガレーシャに向け、密かに僕と同じ様な結界を与えたんだ。
でも僕の察した通り、その結界はガレーシャの体に馴染んでくれたみたい。
と、僕が安堵していた時。
モイラは疑問を僕に投げかけて来た。
「と言うかユト、ロベリアさんの言う通りにヒイラギに来ちゃって良かったの?」
「───ロベリア?誰その人」
けれど、僕が答える前にフェルナが『ロベリア』と言う単語に反応。
「ああ、そうだね。君達二人には今までの経緯を説明する事にしよう」
そのまま説明しない事にも行かないので、僕は闘技場での出来事を説明した───。
……。
…………。
「───という訳。だから僕達はここに来てるんだよ」
説明を終え。
僕はちょっと息遣いしながらガレーシャ、フェルナの順に二人の感想を聞く。
「……母が裏闘技場に、ですか。───確かに、あの母ならやりかねませんね」
「ロベリアかぁ。確かに聞いたことあるわねー。そんな悪党がここ、ヒイラギ王国に行けとユト達に吐いた、と……」
僕は最後のフェルナの呟きに頷き。
「そう。だから順で行くと『第四兵器』がここにあるんじゃ無いかなーって僕は思ってる」
けれどガレーシャは即座にそれに首を振り。
「……いや?第四兵器は私達が破壊しましたよ?」
突然の新事実を、唐突に暴露した。
それに僕とモイラは目を丸くし。
「──────え?」




