プロローグ;世界を破壊せしめん一人の男
暗闇、漆黒。
ランタンの光が一つだけ、ポツポツと揺らぐその空間には───ある声が静かに響く。
「───やるが良い。うぬがそうしようと言うのなら、我は構わん」
声は低く、それでいて威厳が漂う。
暗闇に包まれるは二人の人物。
輪郭しか見えぬ真っ暗闇の中、もう一人の声が鳴る。
「有難き御言葉。その寛大さに、私は平服します」
「───フン。精々足掻け、その心失き体でな」
細々とした声に、先程の威厳を漂わす男は嘲笑った。
その会話は、故に上下関係を持つ人間達が交わすモノ。
「了解です」と答える部下に重ねる様に。
──────その狂気は、暗闇を介して出現する。
瞬間、狂気は跪き。
「……申し訳ありません。地下闘技場を奪われましたわ」
それに、男は威厳を保ち焦らず。
「───貴様ですら手に余る程とはな。慢心したか?──────ロベリアよ」
「返す言葉も在りません。この失態に対する処罰は、ワタクシ謹んでお受け致します」
平服するロベリアの口から出たその言葉に、横の漆黒は焦り。
「いけませんロベリア様───」
だが遮り。
「やめなさいミラージュ。ワタクシのご主人の玉座前よ」
ロベリアは完全に下手に出て、相手を敬う仕草を見せた。
その見たことも無いロベリアの反応に、ミラージュは黙るしか無かった。
───そしてその会話に割って入るかの如く、玉座に居座る男は鼻で笑い、告げた。
「良い。許そう。その失態、愚行。目に余るが、貴様は新人だ、無理もない。貴様からの資金提供が無くとも我はやっていけるわ。だが───」
男は、威厳と共に殺気を高ぶらせた。
そして、
「──────今後二度と我の前に姿を表すな。もし破るならその瞬間に、貴様の首は容赦無く切り落とされるものと知れ」
男は突き刺す。
暗闇でも分かる程の、胸を突き刺す眼光で。
ただ一点、ロベリアのみを見つめる。
そこにはもう、殺気しか無かった。
……息を詰まらす様な覇気。
下手したら、その眼光だけで死んでしまうそうな雰囲気。
例外の如く与えられた生に、ロベリアは頭を下げ。
「───その慈悲。心から感謝致します……では」
すくりと立ち上がり、一人だけ連れてきたミラージュを連れ去り。
それでも色々と文句を垂れる影を睨み付け。
「ミラージュ」
「……はい」
そうして、漆黒とともに狂気は消えた。
それを確認した男。
直ぐ様その横の、先程まで会話していたもう一人の部下に対し口を開く。
「貴殿も下がるが良い」
「……はっ」
シュン。
男が授けた『加護』を使い、消え去る部下。
かくして、その暗闇には玉座に居座る一人の男のみしか居なくなった。
瞬間、一つのランタンは輝きを増し。
──────男の、ニタリと笑った口元を照らし出した。
そして、男は昂ぶる様に呟いた。
暗黒の中で、静かに。
「──────来るが良いフィルフィナーズ。我は世界の最期にて、貴殿らをゆっくりと待ち受けよう」
その嗤いは、世界の破滅を予想するかの如く───。
はい。と言うわけで第4章プロローグです。
気分的に作ってみました。
あと言うのが遅いですが、この作品は一章一章が独自の物語を紡いでいます。
簡単に言うと『章ごとに明確な区切りを付けている』ですかネ。
第1章と第2章は置いておくとして。
第三章は地下闘技場の物語。
第4章はヒイラギ王国の物語、といった風に。
各章毎に提示された目標をその章毎に完結させていく、と言うカンジなのです、この小説は。
実際小説ってそんなもんなのかな(小声
言うなれば、短編小説を繋ぎ合わせた様なもの。
各章毎、定められた一つの目標に向かってひた走る、と言うのがこの小説です。
だからこそ、単調にならない様にするのがタイヘンなコトなのです。
正直きついっス。
あと、第4章を本格的に始める為、少し設定を考える時間が欲しいのです。
なので1日程、投稿をお休みさせていただきます。申し訳ありません。
あ、出来れば炎の如きご評価を。
……以上、作者からの説明でした。




