シャンデリアが、多過ぎる
汚く、おまけに暗い通路を抜けた先。
ロベリアが出迎えたその場所は、どうやら彼女らの居住スペースらしい。
風呂場に寝室、台所───と色々生活に必要な要素が大体詰まってはいる。
ちらほら『洗脳室』とか『虐待室』とかあるのが目を害するけども。
まあ、それを抜いたら……良い所なんじゃない?ここは。
来るまでの通路の汚さは評価しないとして、その奥はまあ綺麗。
所々に黄金が散りばめられていて、高級そうな家具が所狭しと並んでいる。
一本の太く長い通路に面した、ショッピングモールのような部屋作りは、部屋と部屋の行き来を数段楽にし、通路ごと含め『家』と感じさせる作りだった。
左を見れば休憩室。
右を見れば食事処、と言ったように。
部屋と部屋の境をくり抜いた様な作りが結構目立つ、正に多機能居住スペース。
それでいて、風呂場などの部屋は本筋の通路から見えぬ様扉を介している為、プライバシーも最低限守られている。
そして上は吹き抜け。そこにはシャンデリア。
豪華にも機能性のある居住スペースだった。
───でもまあ、僕達は建物の評論をしにきた訳でも無いので。
「で、結構歩かされてるけど?兵器どこ」
単刀直入に、僕は聞く。
さっきはなんだかんだで逃げられちゃったからね。
そしてロベリアは部下を連れ、僕達を先導しながら笑った。
「もう少ししたらネ☆そう急かなくても逃げないから大丈夫よ♡」
「……はいはい」
ロベリアの要らない気遣いに、僕は静かに受け答えしておいた。
もうロベリアはもう、僕の殺るべき悪役では無いと理解したから。
かくして僕等は、その場所に至った。
其処は書斎だった。
一本道の通路の突き当たり。
僕達はそのまま、通路の赴くままに進み。
やっと、それが在るであろう一つの本棚の前へと到着した。
「ここね」
「───ああ」
僕は、ロベリアの呟きに初めて同意した。
少し感謝の意を込めて言ったのも初めてだ。
だがこれも一興。
この先には、僕達が一ヶ月以上を費やして獲ろうとした集大成がある。
今はこの本棚になんの異常を見られないとしても───。
「この奥に、貴方達が求めているモノがあるわ」
そうして、ロベリアは横の影に呟いた。
「開けて」と。
其処には、なんの虚偽も意地も無かった。
気配通り、やはりこの奥にあるのか。
そして「はい」と答える影。
やっとか。
───書斎の天井に揺らぐシャンデリア。
古臭い本の香り。
酸っぱい様で、懐かしい。
そして下に敷かれたふかふかの赤い絨毯。
……まるでそれは、以前の邪龍の書斎と同じ様な雰囲気を放っていた。
ふぅっと、僕は息を吸い込む。
……緊張が高鳴るのもあるだろうか。
これで終わりな訳では無いのだけれどね。
でもこれで───第四兵器を巡っての戦いは終わるんだ。
「───では、景品の享受と行きましょう」
影を纏いしミラージュはそう告げ、本棚の中にある一つの本に魔力を流した。
ギギギ、と。
カラクリの様な音を閑寂に出しながら、本棚はユックリと開けられた。
───その瞬間を、狂気と三人の部下達。
そして、三人の救済者は静かに見据え。
第四兵器と、合間見えた。




