仲間殺し
狂気は笑う。
中継、監視用の画面を睨みながら。
化物達の殺し合いを楽しむ事は忘れずに、その機微を見抜く為に。
「……何話してるんでしょうねぇ」
その目は、血に飢えた狂犬の如く尖っていた。
下手すれば人を殺めてしまうかの様に。
だから部下達は、それを更に刺激しない様、固唾を呑み込んで黙っておいた。
裏腹に、観客席は滾る。目の前の殺し合いに。
彼等は謳う。ファイターの死を。
「うるさいわねぇ……けど。ワタクシも楽しみだわぁ☆盤上で踊り狂う化物の様がね♡」
ロベリアはそう、薄ら笑いを浮かべた。
眼前の歓喜を愉悦と感じる様に。
盤上にて踊らせている化物達の様を、ロベリアは油断せず見届ける。
足元を掬われる事を恐れている為だ。
───今、アリーナで戦っている化物達は正に規格外だ。
現在はしっかりとロベリアが与えたルールに従ってはいるが……。
その後の行動が全く予想出来ない。
ロベリアでも手に負えない人物達だとさえ思える。
いや、だからこそ。
だからこそ、彼女はいつもの傲慢さを出さずに飼い慣らすのだ。
そうしなければ……死ぬと。
だかそれ以外の事は眼中に収めず、ロベリアは委細かまわず事を見続けるのだ。
隙あらば、そこを問答無用に突く為に。
♦︎
刃は交わる。
そこにはもう、仲間愛など無いかの様に。
ただ両者は剣を上げ、ぶつかり合う。
それが結果的に、観客を滾らせるものであっても。
───両者は駆ける。
果てぬ大草原を。
走るは火花、又は爆ぜ。
機には刀の雨が降り注ぎ、紅い稲妻が防ぐ。
時には肉弾戦。
それは静かに芝生を巻き上げ、辺り一帯を壊していく。
あまりに規格外。
もうその『殺し合い』は、人間の考える様な規格では無くなっていた。
創造神と神童。
どっちとも覇者である二人は、災害の如き一撃を平気で振りまいていく。
正に神戦。
天を逆行させる程の超常を、彼等は息を吸う様に放っている。
けれどそこには───いつも言葉のやり取りが在った。
それは、あのロベリアでさえも『危ない』と感じた行動。
観客にとっては何ともない一動作だった『ソレ』は、悲しく織り成された。
「──────じゃあ、仕方ないけど……」
神童、と称ばれた少年は閃光の如く地を駆ける。
周囲には青き残像が残り、その通り道は軽く地面を抉っていた。
気付けば、戦闘は刃の打ち合いへ。
少年は忠節無心を緑の神剣へ変え、己の意識のみで操作する。
時には機械的に。
時には読めぬ、剣豪の如き太刀筋に成らせて。
目前の創造神を、緑剣は執拗に追う。
そして突進と共に、緑剣は稲妻と共に停止された。
けれど、それを少年は意にも介さず。
数歩先の創造神を見据え、睨み。
こう告げる。
「──────死んでくれよ。モイラ」
少年は自分自身で禁忌と恐れる『仲間殺し』を、平気で告げた───。
う、うーん……。
今回も文章量が短くなってしまいましたね……。
と、兎に角!
明日の更新では、恐らく───文章量は元に戻りますので大丈夫だと思われます。
……何が大丈夫なんだろう(小声




