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トレーニング

 

 いよいよ明日。

 第三兵器を景品として開かれた大会は、準々決勝へと移る。

 もう残ったファイターは……五人しか居ない。

 その内二人はこちら側で、もう一人も身内。

 極論、もう敵は第五ブロックの覇者となったアリサ・フォークトしか居ないと言っていい。


 けれど、景品の為に刃を交えなければならないのは変わらない。

 僕と最初に当たるのがアーサー君であり、次に当たるのがモイラかユークリッド。

 ──────その次がフォークト。


 正直、僕は負けるつもりなど毛頭無い。

 アーサーにも、モイラにも。

 そして勿論、フォークトにも。


 アーサー達に勝ちを譲るのも良い案だろう。

 けれど、最後のフォークト……彼女だけは。

 彼女(特殊転生者)だけは、僕が倒さねばならない。


 ──────それが、もう居ないあの子の意志でもあるから。


 ♦︎


 裏闘技場、個人専用トレーニング室。

 ほぼ体育館サイズの、日光刺す広いトレーニングルーム。

 魔法異次元空間と人口魔法太陽によって作り出された部屋は、地下に存在するとは思えない作りとなっている。


 僕はそこでトレーニングに励んでいた。

 通常、僕はトレーニングやストレッチなどせずとも、遅延無しに力を発揮できる。

 けれど、戦いに向けて体を慣らすのは必要だ。

 ……で、それを踏まえて先ずやるのは。


「素早い攻撃に目を慣らしたいから……」

 僕は左腕を真左に払った。

 その腕は青い線を浮かべ、やがて空中に画面を作る。

 ホログラムに近いだろう、この技術は。

 と、それよりも。


 僕は正面の状況を見つめながら、その画面を指でタップしていく。

 色々な項目を押すにつれ、ピッ、と画面は近代的な音を鳴らす。


 今からやるのは、戦闘シミレーション。

 機械に強い人に向けて言うと、これはAR技術に近いもの。

 ……その深い記述は避けるとして。


 僕は画面を通して、色々な設定を施していく。

 範囲設定、(エネミー)設定、攻撃速度設定。

 他諸々の細かな調整。

 それを受け、空間には次々と僕専用のトレーニング用具が出来上がって行く。

 そして、目を瞬く頃には……。


 正面にはリボルバーを構えた、ウエスタン風のガンファイターが居た。

 その男はタバコと髭付き。ちょっと身体全体が青く透き通る程度。


 その横には、青く透き通った壁が僕を取り囲む。

 大体幅二メートル。

 その青白い壁は一本道を作り、逃げる事も許されない、敵までの一方通行となっている。

 目の前に居る敵は()()()()()()()神速の射手。


 弾を撃ち出す速度と精度だけで言うと、以前戦った魔人(ラット君)以上。

 トレーニングというか訓練には、大体これくらいが丁度いい。


 弾を目で追えずとも勘がある。

 勘で感じられずとも経験がある。

 そうして、僕はずっと前から戦ってきた。

 だからこその信念。

 僕は、フォークトを敵として倒す。


「よし。じゃあ……開始」

 僕はそのまま、画面をタップした。

 瞬間。


 ──────バン。


 目の前の敵は発砲した。

 そのマグナムからは、たった一つだけの破裂音が聞こえた……が。

 そんな音とは裏腹に、空中には三発の弾丸が飛んでいた。


 ……発砲音が一つしか聞こえない程の早撃ち。

 回転式拳銃だからこそ出来る、神速の射撃術。

 それ以上の速度を発揮する弾頭のお陰でジャムリ(弾詰まり)もしない。

 それが彼の能力だから──────ってやめておこう。


 兎に角、その三つの弾が狙う先は、僕の両足、心臓。

 緊張感を味わう為、身を覆う特殊結界は解除しておいた。

 いやまあ、()()()()()は解除できないからそのままだけどね。


 でもまぁ、弾に当たったら血が出る様になったのは違いない。


 ……ふぅ。でもやっぱり新鮮味があるな。結界が無い活動は。

 僕は息を大きく吸い込み、堪能しながら……止めた。

 そして、機を見計らい。

 足を踏み込み身体を傾け、勢いを消さず、そのまま。


 ──────跳んだ。


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