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超戦流覇〜頂を貫いた異世界転移者〜  作者: ゲラ(沖縄の方)
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序幕のシックスオクロック 〜Sixth of Prologue〜

僕は小学6年生(6回目)ですが、未だにプリチケが届きません。

 

 名前についての下りが一段落したところで、今度は疑問を解消して行こうと思う。

 ここで過ごした期間は、長さのみで言えば実に膨大だが、密度は0に等しい。

 という訳で自称、俺の中の俺ことナナさんに伺ってみることにする。



「あのさ、ナナ」


 ナナ、と言う言葉に反応し、彼女のアホ毛が天を指す。


「瞳くん、も、もう一回名前呼んでみてっ!」


 言われた通りに反芻してみる。


「ナナ」


 アホ毛がピンッ!と起き上がる。


「もう一回!」


「ナナ」


 ピンッ!


「もう一回!」


「ナナ」


 ピンッ!

















 ……無限ループって、怖くね?


 名前の下りが一段落したとか言ったの誰だよ、欠片も終わらねえぞ。



 しかしながら、256年の引っ込み思案の後に見る笑みと興奮は見ていてなかなか飽きるものではないので、本人が満足するまで俺はナナの名前を呼び続けた。








「にゃはぁ……」



 恍惚とした表情を浮かべ、満足げな様子のナナに、俺は意を決する。このままじゃまた数百年経過するからな。進めるうちに進んでおこう。そんな強迫観念に駆られて俺は話を切り出す。



「なぁナナ、結局のところ、お前は何なんだ?」


 喜びの色を帯びたナナが返答する。



「私は…えっと、神様は、お前はNPCだって言ってたよっ」



 NPC、決められたロールプレイのみを行う人工知能。人が創り出した人間、俺が持っているNPCの知識はその程度だが、ナナが言っているそれと相違ないだろうな。


 それと同時に、俺がナナに名前を聞いたときの反応を思い出して合点がいった。


 あの機械じみた反応は、恐らく特定のキーワードが発せられたときにのみ発動するように設定されているのだろう。ただ、こいつの普段の反応を見る限り、平時は自由意志が与えられているものと考える。


 しかし、NPCであるからと言って俺の名前を知ってるものだろうか?


 疑問に思った俺は質問を続ける。


「俺が最初にお前は誰だって言ったとき、お前は自分のことを俺の中の俺って言ったよな。あれは何なんだ?」


 あの台詞のせいで、俺がどれほどの恐怖をこいつに抱いたか、恐らく本人は気づいていないのだろう。


 こいつが密林ズの存在だったら俺は脱兎の如く逃げ出すからな。まあ実際のところは無毛の更地なんだけども。



 俺の思考が横道にマガール!!状態の最中に、ナナは質問の答えを述べる。



「えっとね、私という存在の概念そのものを生み出したのは神様だけど、私の性格とか身体とかを創ったのは瞳くんの深層心理だって神様は言ってたの。だからね、あなたの中のあなたって最初に答えたのっ」



 …なんか、むつかしいこと言ってんなこの少女。



 足りない頭でピースを揃えて組み立ててみる。



「つまりこう言うことか?ナナを建築物に例えると、ナナの設計図を書いたのがその神様ってやつで、建築と意匠を施したのが俺であると?」


 まあ恐らくその外観には、いくつか俺以外の意匠が施されているんだろうけど。



 俺の推理にナナは首を傾げながら返答する。



「例えはよく分かんなかったけど、多分それで合ってると思うよ?」



 なるほど、つまるところナナの外見も、声帯も、性格も、全部俺が心の底で想起したものであると。




 有り体に言ってしまえば、



「俺ってロリコンだったのか…」



 意気消沈した俺に、ナナが慰めの言葉をかけてくれる。



「自分のことなんだから、もう少しオブラートに包んでも良いんじゃない…?」



 それに、とナナは頬を膨らませながら一言付け加える。



「私の見た目、そんなに子供っぽくないよっ」



 果たして、その自信は自身をどの観点から観察したら飛来するのだろうか。


 こいつの子供っぽくない要素とか年齢以外じゃ服装くらいしか無いぞ。



 だがしかし、俺はレディに対し、羞恥心なくべた褒めできるエリート紳士だ。お世辞の1つや100個、いつ何時であろうと言ってやろう。



 俺は目の前の一人前の淑女に向かって、最上級の褒め言葉を述べる。



「自惚れるな、ロリっ娘」


「ナナロリっ娘じゃないもんっ!」



 扱いやすく御しやすいこの少女で、俺は気が済むまで遊び倒した。



 一息吐いたところで質問を続ける。



「お前についてはある程度理解できたから良いとして、次に聞きたいのはここがどこかってことなんだが、お前何か分かるか?」



 俺が散々からかったおかげで、ナナの黒曜石色の瞳は真っ赤に染まっていたが、そんな中でもきちんと返答を試みる姿に、俺は関心しつつ彼女のソプラノを耳で吸い込む。



「ここは死後の世界。息絶えた人間は、まず自身と専属のNPCしかいない、各々が独立した世界に飛ばされるの。本来はここにやって来てすぐに、この世界と私たちに関しての説明を受けて、自分の進路を決めるんだけど…」



「その続きは何となく想像できるから言わなくて良いぞ。俺は別に気にしてないし、そんなことにコンプレックスを感じる必要なんて無いだろ」



「私が気にするのっ!」



 気にしているらしい、思春期って難しいな。どう思う、みつを?




「うぅ…なんで瞳くんはいじわるばっか言うの…?」




 またもや瞳が潤みだしたので、強引に話題を逸らす。





「さっき進路を決めるって言ってただろ?死者には例えばどんな選択肢があるんだ?」



「話題逸らさないでよぉ…」



 秘境丸見え事件の傷は思ったよりも深刻だった。いや、今まで散々からかって遂に心が折れたか。



「そんなこと言われたって不可抗力だし仕方ないだろ。目を覚ます場所を俺が指定できるわけじゃあるまいし」



「そうだけどぉ…」



 どうしたもんかなぁ。このままだと話が進まないんだけど。




 元来、罪にはそれ相応の罰が伴う。



 俺は犯した罪の罰を受けていない。それが原因でナナの機嫌は直らない、俺はそう推理した。



 と言うわけで自身に与える罰をナナに提案してみる。



「お前の濃尾平野を凝視してしまった挙げ句、鼻血スプラッシュをお見舞してしまったことについては謝るよ、だけど今更記憶なんか消せない。だから、俺は自分で自分に罰を与えることにするよ」



 そう言って俺の視点とナナの視点とが、同じ高さになるようにしゃがむ。

 


 そうして俺は、自身に与える罰を宣言する。



「ナナのを見てしまった事実は消せないから、俺のも見せるよ。これで平等だろ?」



「それ罰じゃなくて罰ゲームだよっ!」



 どうやらお気に召さなかったらしい、等価交換の法則に従っただけなんだけど。



 頬を膨らませたまま、ナナがこちらに焦点を合わせる。




「罰とか贖罪とか、そんなことはしなくて良いからっ、もう私にいじわるな事言わないでっ」



 必死な顔で懇願してくる少女を見て、俺はようやく、心の底から反省の言葉を述べる。



「分かった。もうお前を虐めたりしない、約束しよう。だから許してくれると嬉しい」



「絶対の絶対だよ?」



 ナナが俺に訝しげな視線を向けてくる。


 安心してくれ、もう本当にやらないから。


 心の中でそう呟き、俺はこの歳になって初めて、指切りげんまんをした。









 本当に本当に、なんて遠い回り道を経て、ようやく話が本筋に戻った。


 ありがとう、ジャイロ…。


 ナナの機嫌を、またいつ損ねるか分からないので、さっさと話を進めることにする。自他ともに認める情緒不安定だからな、俺。いつ約束を違えるか分からん。



「で、俺はこの後どこに行って何をすれば良いんだ?」



 前置きも、例えを交えて話すのも、体力的に無理そうだったので、単刀直入に切り出す。



 すると、俺の台詞の一部ないし全部がキーワードをぶち抜いたのだろう、色を失ったような表情と口調でナナが語りだす。



「我が創造主よ、よく聞きなさい。あなたには今、3つの選択肢があります。


1つは、生きることを放棄し、天国に召されること。


2つ目は、元居た世界以外の場所に転移すること。


最後に、記憶を消去し、元の世界で生まれ変わること。


どれを選んでも構いません。どれほど時間がかかっても構いません。


決断なさい、自身にとっての、最良の選択肢を」




 無機質なソプラノを飲み込みながら俺は、はやく元通りのナナに戻らないかなーと神様のプロットを聞き流していた。

10話までに異世界、行けるといいなぁ…。

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