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超戦流覇〜頂を貫いた異世界転移者〜  作者: ゲラ(沖縄の方)
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序幕のゴーサイン 〜Fifth of Prologue〜

接続詞無限増殖バグ使いたい。

 

 類は友を呼ぶ、なんて言葉がある。

 凡人は凡人を呼び、奇人は奇人を引き寄せる。

 即ち、



 こんな頭おかしい幼女に創造主呼ばわりされた俺は世界から頭おかしいレッテルを貼られたことになる。


 つらいなぁ…解脱しよ。



 閑話休題。



 俺と彼女が云々かんぬんの話は置いておいて、本日何度目とも知れないシンキングタイムに入る。


 会話とか慣れてないから1つの事象に対して数分の熟考が必要なんだ、許してくれ。



 何も考えずに自然体で接してコミュニケーションが成り立つ人々を見てると羨ましさで禿げそうになる。



 貧弱だな、俺の毛根。


 とにかく、俺にできることは目の前の課題を処理することだけだ。マルチタスクとかできないし。

 無い物ねだりする暇があるならその時間を努力に回せという言う話だ。


 前置きはここまでにして始めますか、名付け親デビュー。


 懸念材料しか無いがそのときはそのとき、俺の責任ではなく名付けを依頼したこの青いのが悪い。


 精一杯の言い訳と言う名の自己正当化を済ませてから目前の少女に目を向ける。


「ところで、何で名前が無いんだ?」


 少女は返答する。


「な、名前を付けてくれる人がいなかったから…」


 間髪入れずに問答を続ける。


「お前の出生とかは?」



 お互いがお互い、不慣れなままキャッチボールは続く。


「生まれた場所はここだよっ。歳は今年で256歳…」


 256歳…、結構年取ってんだなこの娘。見た目にそぐわず…ん?


 益体もないことを考えつつ、少女を俯瞰しているとき、1つ思い出したことがある。


 そう言えば俺ら200数十年間見つめ合ってたなぁ、と。

 具体的には256年間目と目が合ってたなぁ、と。


 少女の年齢は256歳、偶然にも俺たちが過ごした空白のお見合い期間の年数と一致する。


 とどのつまり…


「お前生まれた瞬間俺にパンツ見られたのか」


「はっきり口に出さないで!」



 256歳の少女が放つ全力の左フック。見え見えのモーションだし避けることは造作もないが、俺が撒いた火種だ、甘んじて罪を受け入れよう。こんなことで贖罪になるのなら安いもんだ。


 美術品のように繊細かつ整った外見を持つ少女の拳がこめかみにクリーンヒット。


 急所への直撃は阿鼻叫喚必至の痛みだったが、俺の虚勢心の壁を破るには至らなかった。


 平生の兜で顔を覆う。


 そして頭を下げながら、少女に謝罪の言葉を告げる。


「軽率な発言だった、許してくれ」


 少女は、オブシディアンの様に綺麗で黒一色の瞳に大粒のダイヤモンドを溜め、頬を朱色に染め、おたふく風邪の様相を呈している。


 見つめ合うこと数瞬、少女が震える唇を開く。


「つ、つぎ意地悪なことを言ったら許してあげないからっ!」


 今までのか細い口調とは打って変わって、彼女は強くそう主張した。

 次迂闊な発言をすれば完全に彼女の機嫌を損ねることになりそうだ。


「肝に命じておくよ」


 そんな台詞とは裏腹に俺の心は喜色満面、新しい玩具を見つけた子どもの様な気分に包まれた。



 さてはて、いい加減本題に戻ろうか。250数年経って話が全く進まない死者なんて俺を除いて他にいないだろう。


 さしあたっては最初に、本人の希望を伺おうか。

 どんな雰囲気の名前が良い、この文字を入れてほしい、など本人にも多少なりとも願望はあるだろう。


 しっかし突飛な出来事もあるもんだ。


 人にしろ犬にしろ、現代の生物はすべからく他者に名前を決められる。

 そこに本人の意見は反映されない。


 理由を問われれば、元来、命名という行為が誕生時に行われるからだ。

 言語能力がろくに発達していない赤ん坊に、自分の命名を命じる酷な親などこの世にいまい。


 まあ武士とかは元服時に改名していたらしいけど。

 だがまあそれはあくまで改名、大元となる幼名ではない。


 だからと言う訳じゃないが、俺はこの少女の名付け作業に、幾ばくか本人の意志を反映させてやりたいと思ったのだ。

 自分に一握りの良心が残っていたことに、驚きを越え戦慄さえ覚えるが。


 大雑把な考えがまとまったところで早速少女に質問する。


 「名前を決めるにあたって、何か希望とかはあるか?せっかくなんだから自分も名付けの一端を担うってのも一興だろ」


 少女はしばしの逡巡の後にこう答える。

 

 「あ、あんまり希望とかは無いよ…? 私、知ってること少ないし…」


 ふむふむなるほど、さして名付けに強い希望は抱いてないのか。

 じゃあ安直に『クロ』とか『アオ』とか『シロ』みたいな直球な名前でも良いのでは?

 

 そう思った矢先、少女が1言付け加える。


 「あ、でも、あんまり安直な名前は嫌かな…。クロとかシロとかアオみたいなっ?」



 オーメーガー!!じゃないオーマイガー!!




 やっぱりこいつ俺の中の俺じゃないの?すごい心読んでくるんだけど?


 落ち着け、慌てるな。俺の心読むとかエスパーじゃないんだから無理だって。年長者として、感情を気取られないように平静を装うんだ。


 「おいおい心外だな、俺がそんなネーミングセンスの欠片もない命名をするとでも?」


 「でも今、焦ったような表情だったよ…?」




 気取られてた。と言うか俺の感情モロバレルだった。



 「ちゃんと考えるんで、この件は水に流して戴きたく…」


 いたいけな少女に懇願する男子高校生という図は、ひどく滑稽だった。と言うか俺だった。



 気を取り直して、ちゃんと考えよう。ホントはこんな所で尺使ってる暇なんて無いんだよ。


 未練がましい訳じゃなく、色と言うか安直な表現って言うアプローチは間違って無いと思うんだよな。だからその筋でしばし精神の世界に自ら溺れる。




 色…それから本人は無知だから要望は特に無い。安直で、しかし直球になり過ぎない表現…。




 ……難しいな。




 まさか名付け一つにこんなに悩むことになろうとは。しかし諦めるという選択肢は存在しない。

目の前の少女は、俺の限りなくアウトに近いアウトな行為を2回も許容してくれたのだ。その恩義に報いる程度の働きは最低限せねばな。





 熟考の末、水かさが増えきった思考のプールからある1つのフレーズを引き揚げる。良し、これでいくか。


「決まったぞ、お前の名前」


 少女が本日一番の、とびきりの反応を見せる。


「本当!?教えてっ!」




 一度深呼吸をしてから、ゆっくりと発音する。








「『ナナ』、それがお前に付けた名前だ」


「ナナ…」



 いまいちピンと来て無さそうな反応なので、一応解説を挟んでやることにする。



 「今のお前は無知で名前を持たない、プレーンで名無し(ナナシ)の状態だ。

これから先、色んな人の話を聞いて、はたまた自分で見聞して虹色、つまり7色(ナナイロ)になって欲しいと言う願いを込めて、ナナって言う名前にした」



 ひと呼吸挟むと、気まずい沈黙が流れる。耐えきれなくなった俺は二の句を紡ぐ。


 「もちろん、気に入らなかったら遠慮せず言ってくれ。批評を反映させてより良い名前を考案するから」




 果たして彼女は笑みを浮かべてこう言った。



 「とってもステキな名前だと思うっ!えっと…、ありがとう、瞳くん!」





 言われて、俺はドキッとした。


 少女の笑顔に惹かれた訳ではない。頑張って考えた名前を気に入ってもらったからでもない。


 ただ、名前を呼ばれたから驚いただけだ。


 生前、ついぞ呼ばれることは無かった瞳と言う俺の名前。


 両親はおろか、親戚や教師、はたまたクラスメイトさえ俺のことを2人称ないし2.5人称で呼んできた日々。


 そんな情景が当たり前になっていた俺の心にぶつけられた、無垢なる一撃に少し、ほんの少しだけ驚いたのだ。



 俺は眼前の笑顔の化身に、こう返答する。




「どういたしまして、ナナ」



 



名前のこじつけ感が半端ないですが、色と数字を絡めたかった数学脳が開花したんで許して。

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