序幕の四重奏 〜Fourth of Prologue〜
脳波を読み取って自動筆記するツールとかできませんかね?
事実は小説よりも奇なり、とはよく言ったものだ。
まあここは現実じゃ無いんだろうけど。
自分で揚げ足取ってどうするんだ、話を円滑に進めよう。
俺が言いたいのは、 フィクションみたいな有り得ない世界より突飛なことが、
時として現実世界でも起きている。
況んや、死後の世界なのだから尚の事であろう、と言う主張だ。
目の前の可愛らしい少女が南アメリカ原産の密林(複数形)を熟知していたとして、疑問に思うのは筋違いってことだ。
と、理屈の上で俺は重々承知することができている。
だがしかし、そんな簡単な仕組みでできてないんだよなぁ人間は。
勝率が、四捨五入して十割になる勝負を挑む人類は愚者である。
凡そ、いやすべての人類は勝率十割の戦いしか挑まない。
それは俺も例外ではなく、例えば、目の前の真っ青美少女が○マゾンズのオープニングの一節をたまたま口に出したとして、それが偶然である可能性が高いと言っても、完全に安全だと切り捨てることは不可能なのだ。
こんな可愛い見た目しておいて実は狩りが大好きなんて可能性は大いにある。
狩りごっこだね!? 負けないんだから!!
おっと危ない、狩りという単語に反応して好戦的な俺が産声をあげるところだった。
もう既にあげてたか、しかも結構高らかにな。
だがしかし、このまま沈黙を貫くのもいとわろし。
だんまりをきめこんだら256年まで保つことをお互い承知しているからだ。
512年何もせず暮らすとか心折れるぞ。
という訳で俺は否が応にもこのへなちょこ会話のキャッチボールを続けねばならないのであった。
怯えていても仕方ない、覚悟を決めよう、俺。
目の前の少女を信じろ、昨日今日の仲じゃないんだぞ?
狩られることなんてあるはずないだろ?
虚勢を張って自意識を奮い立たせる。少しは落ち着けた。
意を決して彼女とのコミュニケーションを再び図る。
「………できれば詳しく教えてもらえると助かるんだけど」
熟考した後に出た声と内容はひどくみっともない。
死にてぇ、もう死んどるわ。
だがしかし、俺の気持ちは隣人に届いた様で、はぅわっ!みたいな声を上げると同時に、わちゃわちゃとした仕草を見せる。
「ご、ごめんなさいっ!何の説明もしてないんだから、分かんなかったよね、
さ、最初から説明するね?」
どうやら前述の密林のくだりは杞憂で済んだらしい。
そして、説明が不十分だったとのことなので恐らくこの場所とこの少女についての
A to Zを語って聞かせてくれるのだろう。
なんとか見当違いの方向にボールを落とさずに済んだようだった。
とその前に、この少女にもう1つ尋ねたいことがあったのだ。
恐らくこの後始まるであろう長話の前に聞いておくことにしよう。
「その前に1個聞きたいんだけどさ」
「な、何かな?」
「名前、まだ聞いてなかっただろ?俺の貧弱なボキャブラリーから出てくる二人称なんて関の山だからな、できれば教えてほしい」
言葉を選んで、できる限り相手を威嚇しない様に喋ったつもりだったが、俺の隣人は頬を少し膨らませて、こちらに半眼を向ける。
「人に名前を聞くときは、まず自分から名乗るべきだと思いますっ…」
言われてみれば確かに。
粗相があったことを心の中で詫び、取り敢えず自己紹介を試みる。
「えっと、俺の名前はひぐr…」
「瞳」
「ん?」
「日暮 瞳くんだった、よねっ…?」
目の前の少女の正体、俺の中の俺説が濃厚になってしまった。
とにかく会話を続けよう、疑問を持ったらすぐに質問。
タイムラグなんか作ったら今度は何年経過することか。
てな訳でレッツラ質問。
「俺らってどこかで会ったことあったっけ?」
いかん、新手のナンパみたいになってしまった。
でも、何で俺の名前を知っている?なんて尋ねたら高圧的に聞こえて相手が怯えてしまう可能性がある。最大限言葉を選ぶ努力をせねば。
「会ったことは無い、よ…?わ、私が一方的に知ってるだけ」
とのことらしい。まあ俺のことを知ってる理由は後にして、通過儀礼を終えたのだから当初の質問に戻ろう。
「今度こそ、名前教えてくれないか?」
少女は、間を置くことなく、まるでそれが決められた台詞であるかのように、
今までとは違うはっきりとした口調でこう言った。
「私に名前はありません、ですので、あなたがお決めになってください、創造主様」
………頭おかしいのかな、こいつ。
この主人公、ヒロインに外見に頓着しなさそうなので、ここで言及しときます
・黒髪ロング
・身長は150cm弱、体重は許して。
・その他のプロポーションは平均よりかなり劣る。
・具体的には上から、72 55 73
・控えめに言って発育があんまりよろしくないです。
・生えてない
・入浴時を除き、全く同じ真っ青なドレスを着ます。
・人見知り
・ヤンデレ気質はない…はず。
補足があればまた後日