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姫の実力?! その2 ☆売上・客数

「申しわけありませんでした」


 体の中身が爆散。それにより復活を余儀なくされた訳だが、死亡からの復活は肉体だけでなく、精神状態も復活させた。

 結果良ければ全て良しではないが、ミッツを殺した姫の行動は、この場においては数少ない正解だったと言える。


「ミッツ、元気、なった?」


 復活早々頭を下げるミッツを映す姫の大きな目には、涙は溜まっていない。

 しかし、鼻水を啜る姫を見れば、つい先ほどまで泣いていたということなど手に取るようにわかる。

 いつもと違うミッツに心配かけないように、死んで意識がない間に精々涙を流したのだろう。

 マリルの目も赤いので、貰い泣きしていたのかもしれない。

 それを思うとミッツも目頭が熱くなる。


「(なんか30超えてから、涙もろくなった気がする)」


 自分自身に言い訳して、格好つける。そんなもの、誰も気にしていないのに。


「ご心配をおかけしました。姫のお陰ですっかり元気です」

「そ! 良かった」

「また調子が悪い時には、お願いいたします」

「分かった!」


 陰鬱な状態からの解放にミッツは喜び、姫も浮かれている。

 鬱要因の根本的解決ではないので、一時的鎮静でしかないのだが。

 とはいえ、今後ミッツが度々お世話になる鬱の強制物理回復の誕生である。


 心身ともに物理的にリフレッシュしたミッツがやることは決まっている。

 いや、やらなくてはいけないこと。

 残された時間もない。それだけに非常にシンプル。


「では、街に行って冒険者を捕まえてきます」

「待ってるね!」


 満面の姫に見送られ、ミッツはマリルを連れて転送門を潜った。

 草原に降り立つと、腰、肩、首、背中と順番に捻り、伸ばす。

 そして、ふぅと小さく息を吐いた。


「よし、いくぞマリル」


 気合十分といったミッツに、マリルも「はい」と力強く返す。


「どうした?」


 危機的状況に、なぜか機嫌が良さそうなマリルが気になってミッツは振り返る。


「いえ、先輩はやっぱり先輩だなと思っていただけです」


 意味は分からなかったが、「そうか」とだけ答えて再び足早に歩き出す。

 そして、歩きながらではあるが、街に着いてから何をするか考える。

 これからも1200DEを稼ぎ続けなくてはならないが、まずは今日を乗り越えなければ明日は来ない。

 失敗を取り返す余裕は、使い切ってしまった。


「新規顧客の増加。顧客流出の軽減。客単価の増大」

「なんですか、それは?」

「聞こえていたか。これは“売上の上げ方”だな」


 売上=客数*客単価で求められる。

 ミッツたちにとって売上とは言うまでもなく獲得ダンジョンエナジー。

 客数はそのままダンジョンへの入場者数。

 客単価は一人当たりから得られるダンジョンエナジー量。


「となると、連れて行く人を増やして、且つより強い人を見つけるということですね」

「その通りなんだが、そんな簡単にはいかない。その手段が見つけられなくて、俺は悩んでいた訳だからな」

「そうなのですね、むむむ……」

「ふっ、何か気がついたら教えてくれ。それより、街に着いたから変なことを大きな声で口走るなよ」


 真剣に考え出したマリルを見て、微笑ましくてつい笑ってしまったミッツ。

 つい子供相手にするように、ぽんぽんとマリルの頭を撫でる。


「え?」

「あ!? いや、すまん。セクハラじゃないから。そういった気持ちは一切ないから」


 やった側が何と言おうが、セクハラはやられた側の気持ち次第。

 既に手遅れだろうが、ばっと頭から勢い良く手を退ける。


「せくはら? なんだか良くわかりませんが、謝ってもらうことなんて何もありませんよ?」

「そ、そうか? それなら良かった」


 許された。ほっと胸を撫で下ろし、門をくぐっていく。

 心なしか、門を守る衛兵が冷たい目をしていた気がしたが、それはミッツの気にしすぎ。

 朝早くから元気な奴らだなとは、思われていたが。


「しかし、困ったな。実際問題どうしたものか」


 売上を上げるには客数か客単価を上げる。

 マリルにも言った通り、それは簡単なことではない。

 客数を増やすには“知ってもらう”“来てもらう”“継続してもらう”というのが大事だ。

 といっても、時間がかかる方法は選べない。

 プレゼントや何かを使って客を集めるにしても、元手がない。それに、合理的理由も用意できない。

 店ではないのだ。冒険者が冒険者をダンジョンに連れていくのはパーティーメンバーとしてが普通。しかしそれでは、ダンジョンエナジーを回収するには都合が悪い。

 唯一使い勝手の良い“クエスト”という手段だが、これもまた当然元手不足。


「先輩、どこに向かいますか?」


 考えながらぼうっと歩いていたミッツは、足を止める。

 尤もな質問だった。

 目的地を決めると言うのは、方法を選択すると言うこと。

 目的なく歩いていたのでは、無駄に時間を使っていることになる。


 そこまで考えていたわけではないだろうが、マリルが求めているのは一般人を集めるのか、冒険者を狙うのかということだ。

 一般人は比較的簡単に集めることが出来る。

 それは、【黒髪姫の薔薇のお城】が一般人にとって十分すぎるベネフィットの提供が出来ているから。

 新規顧客の増加が容易なだけではない。リピート率も高い。

 客数の増加にはぴったりである。


 しかし、客単価が低い。


 一人当たりから得られるダンジョンエナジーは1から10DE程度。

 1200DEが必要な現在、300人近い大虐殺が必要になる。

 しかしそれは現実的でない。

 理由は時間がかかるからだ。

 1階に突如乱入して入り口を抑えてしまえば、比較的簡単に出来そうだが、それをすれば客離れが間違いなく起きる。

 そうなれば、今日は良くても明日以降がダメだ。

 全体から見たら一人一人の売上貢献は小さいが、それでも現在2割は一般人に頼っている。


「となると、やっぱり客単価狙いで冒険者にするしかないな」

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