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AIDMAの法則。 その0

「ミッツ、すっごーい。ねぇ、ねぇ、どうやったの? どうやったの?」


 10歩先もはっきりと見えない仄暗い空間。

 呼吸をする度に(かび)臭さと饐えた臭いが鼻と口に纏わりつく。

 そんな空間に不釣り合いも甚だしい朗らかな声。

 暗闇の中でも煌めく黒髪、瑞々しさの伝わってくる透き通る白い肌。天使と形容してもその愛らしさ、美しさを表現しきれない幼女が、浮かんだ透明の板に映し出される大量の人を見て、無邪気に大きな椅子の上で飛び跳ねていた。


「それはですね。……姫、AIDMA(アイドマ)の法則ってご存知ですか?」


 ミッツと呼ばれた大男が応える。

 その声は聞き取りやすいように、意識して口を大きく動かして発声したような印象を受ける作った話し方。

 だが、そんな少し不自然な話し方な筈なのに、一切の淀みがなく、長く慣れ親しんでいるということが伝わってくる。

 全身を金属質な鎧で身を固めた見た目から、騎士のような印象を受ける。

 だが、口から出ている言葉を聞いている限りだと、違うのかもしれない。


「あいどま? ……。――! 知ってる!!」


 幼女は少し考えると、花も恥じらい花弁を閉ざすような満面の笑顔で、八重歯が顔を出すほど口を大きく開けて答えを返す。

 その答えに、大男はたじろぐ。

 一切馬鹿にする意図を含んでいるわけではないが、まさか知っているなんて思ってもいなかったためだ。

 伊達に、太っている訳ではないが少しぽっこりと膨らんだ腹――素晴らしいイカ腹を持っている訳ではないということだろう。


「あれでしょ? 偶像的な畏れと尊敬を集めた巨大な魔王の名前でしょ。そのアイドマーがどんな関係なの?」


 その斜め上の答えに驚いた表情を大男が浮かべると、幼女は可哀想な人を見るような目を向ける。

 大男が知らなかっただけで、この世界での常識なのかもしれない。

 そんなことも知らないのというような優しい微笑みは、可愛いらしく大男を責める。


「あの、申し訳ございません。ちょっと私の知っているAIDMAとはかけ離れていたもので」

「じゃー誰なの?」

「人ではないですよ。広告宣伝に対しての消費者――今回の場合はダンジョンに連れてきた者たちですね。広告宣伝に対しての購買心理プロセスを表した言葉の頭文字をくっつけた略語なんです」

「へー」


 一発でキャパシティがオーバーしたのか、先ほどまでの喜びに溢れた雰囲気が雲散。

 大男は焦り、咄嗟にフォローを入れる。


「それでは、実際に起こったことを交えて説明していきますので、少しお耳を拝借いたします」

「うん!」


 柔らかい笑顔の大男と、満面の笑みの幼女。


 大変仲の良さそうな二人。

 この二人の出会いまで遡る――

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