渚 11月26日 ~魔術は使えても使えない理由~
焦った私は、とっさに口走っていた。
「咲子サン、超能力ダヨ。私、超能力二目覚メテ、部屋ノ照明ヲ点ケタンダヨ」
「・・・」
咲子さんは私の目を見てくれない。
当たり前か。
さっきまでの感動の場面の雰囲気はぶち壊しだ。欠片も残っていない。
壊したのは私だけど、ここまでこっぱみじんになくなるとは思ってもみなかった。
言葉の力ってスゴイネ☆
一瞬、思わず現実逃避。
「と、冗談は置いておいて。何で照明が点いていないのに明るいんだろう・・・? これが超常現象?」
「え?! 部屋の照明点いていないんですか?」
頭の可哀想な子を見る目をしていた咲子さんは慌てて天井の照明器具を確認する。
「本当だ?! 照明点いてない?! 何で明るいの?」
あわわわわ・・・と咲子さんは目を白黒させ、驚きすぎて言葉が素になっている。素になってるよ。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
すべて私のせいです。
自分のせいだけど、私もさっきそうなった。
私は諦めきった(実際、魔術で明るくしていることを説明することを諦めている)声で言った。
「咲子さん、超常現象だよ。私たちには解明できないよ。超常現象の研究家か名探偵しか解明できないよ」
「・・・渚お嬢様」
咲子さんは私を救いの神のような目で見る。
「きっと疲れているんですね。――渚お嬢様。どうも疲れているようなので、今日は早めに上がってもよろしいでしょうか?」
疲れを振り払うかのように咲子さんは首を左右に振って言う。
本当は食堂に行きたくないけど、咲子さんにこれ以上負担はかけさせられない。この精神的負担は数日休んでもいいレベルだ。
私は自分の精神安定よりも咲子さんの精神安定を優先する。
すべて私が悪い。
こんな状況を引き起こしたのも、それを上手く誤魔化せないのも、咲子さんの精神衛生を信じられない出来事で滅茶苦茶にしたのも。
「今日の夕食は食堂で食るから、もう上がって大丈夫。しっかり休んで。本当は明日も休んで欲しいけど、それは無理だし・・・」
「渚お嬢様・・・」
咲子さんが涙ぐんで感激している。
すごい、すごいよ。
食堂で食べるって意思表示しただけなのに。
でも、すべて私が引き起こしたことだから、ごめんなさいと心の中で咲子さんに土下座する。
結論
魔術は使えるが使うと説明できない状況になるので、使えてもやっぱり使えない。
こうして私は夕飯を食堂で食べることになった。
だが、私はまだまだ衝撃的な今日が終わらないことを知らなかった・・・