渚 11月26日 ~死後の世界について考えてみる~
「だいたい、ナギサちゃ~んの分際で部活休むとかありえねぇから。園芸部五年目で草むしりしかできねぇんだろ。それ以外もできるようにならねぇといけねぇのに、何で休んだんだぁ? 私がこんなに優しーから、調子付いたかぁ? あ゛あ゛ん?」
園芸王が何やら宣っているが、私にはよく聞こえない。
タップ! タップ!と、手足をバタつかせていたけど、もう、力が入らないからダラーン。
誰か、助けて・・・。
死んだらあの世界に戻れるのかな?
そうすれば、彼や子供たち(勇者時代の仲間たちもいるが)のもとに戻れるなら、このままでいいかも・・・。
戻れないなら、あの世界の人間も同じ死後の世界だといいな。
皆が来るのを待っていればいいだけだし。
でも、死後の世界は別とかだったら誰にも会えないから嫌だな。
こっちの世界で死後にも会いたいのは片手ほどもいない。
貝原と太刀原さんと、咲子さんと沼津さん。
おお!
本当に片手で足りた!
って、こんなことで喜んでいて良くない!
出主通学園でできた友達もいるけど、彼らはまだまだ長生きしそうだし、すぐには会えそうもないから、さっさと私のことなんか忘れているに決まっている。
やっぱり、さっきの四人でいいや。
もしかしたら、太刀原さんと、咲子さんと沼津さんにもさっさと忘れられるかもしれないけど。
太刀原さんは聖痕学園の初等科で虐められて泣いているところに心配して声をかけてきてくれたお兄さん?だ(あの当時、大学生だったからお兄さんでいいのかな?)。
その後も数ヶ月に一度くらい聖痕学園に用事があるらしく、ついでに顔を見せに来てくれた。
当時は家でも学校でも居場所がなかったから、太刀原さん会えることはとても嬉しかった。
でも、出主通学園に進学してから会ってないんだよね。私はこの通り、社交場には連れていけない身だし、帰省中は自宅軟禁に近い状態だし。貝原の休暇中だったら色々なところに連れて行って貰えたけど、他にはわざわざ私のお目付け役を買って出る人はいないし。
だから太刀原さんとは五年くらい会ってないんだよな・・・。
今から思うと、太刀原さんはロリコンというやつだったのだろうか?
聖痕学園の初等科は中等科や高等科とは少し離れた別校舎なのだ。私が泣いていた場所は初等科から離れた中等科や高等科に近い場所だったから、たまたま、太刀原さんと出会ったが、それ以降はあの人、初等科まで来ていたから。
・・・。
綺麗な思い出を汚してしまいそうなので、考えないことにしよう。
・・・。
あ、同じ死後の世界に行けなくても死霊術師をしている息子に呼び出してもらえばいいか。
そうだよ!
魔王ならこっちの世界に干渉できるかもしれない。
私を呼び出した召喚の国(正式名称は長いから省略)とかを魔王が締め上げてくれたら、私を迎えに来れるじゃない?
あー、でも、締め上げるのは魔王じゃなくて彼や勇者時代の仲間たちがやりかねないなー。
うん。やりかねない。
取り敢えず、生きていないことには死霊術師をしている息子のお世話になってしまう。
その前に魔王に迎えに来てもらわないと!
「部長、草薙さんが死んでしまうから、離してあげて下さい」
「アロエお兄ちゃん、止めてあげて。渚ちゃんが死んじゃう」
「北地、殺人は止せ」
「部長、渚ちゃん白目向いているから!」
「部長、それはやり過ぎだから」
意識を失っていた私は園芸部の皆が私の為に園芸王を宥めていることなど知る由もなかった・・・。




