「フレディもしくは三教街」
私はさだまさしさんのファンでして、数多くの歌が好きなのですが
中でも「フレディもしくは三教街」と「椎の実のママへ」という2曲は
中国へのロマンを掻き立ててくれました。
「フレディもしくは三教街」は武漢を舞台にして、まっさんの母上の若かりし頃を詩情豊かに歌った反戦歌としての側面も併せ持つ素敵な歌。
武漢は長江を挟んで、武昌、漢口、漢陽の三つの地域がひとつになったものなのです。
戦時中いや、それ以前からイギリスやフランス、そして日本の租界が設置されていた特殊な都市でもあります。
「フレディもしくは三教街」の冒頭にて
「フレディ、あなたに出会ったのは漢口♪」と歌われていますが、まっさんの母上が初恋?の人とフランス租界へランデブーしたわけですね。
歌詞にある「ヘーゼルウッド」というお菓子屋さんや「ボンコ」というパン屋は、当然ながらすでにないのですが、やはりどうしても行ってみたいじゃないですか。
そして、歌に出る街並みを歩いてみたい。
実はさださんの本「長江・夢紀行」で、私が訪れた数年前、すでに当時の三教街の面影は潰えていたことは知っていました。
ただ、現在勝利飯店という名で運営しているホテルの一階に「アンリハウス」というさださんの母上が勤めていた会社が現存していたという記述があり、せめてそこだけでも! と、足を運んでみたわけです。
天井に吊るされ回っているフライファンや、シャンデリア、壁の色、弁当を温めたというスチーマーなどが40年前と同じ状態で残っているというのですから。
以下、「長江・夢紀行」から少し引用させていただきます。
――ぼくは、そこに幻を見ていた。
自分よりも10も若いおふくろが一生懸命にタイプを叩いている。
取っ手を引いて、窓を開け、通りを往く人々を、疲れた手を休めながら眺めている――引用、ここまで。
悔しいですが、私には見ることはできません。
でも、想像力を駆使し、思いを馳せてみました。
通行人の中にフレディやヘーゼルウッドのおじさんもいたのだろうか? とか。
異国的、平和的なのどかな街並みを一気に奪い去った戦闘機の襲来とか。
「フレディもしくは三教街」は悲しい結末に終わりますが
決して暗い歌ではありません。
まっさんの母上が元気に明るく異国でがんばっていた情景が目に浮かぶ私にとって忘れがたい歌のひとつ。
自分の青春を悲惨な戦争に塗りつぶされまいと必死に抵抗し、異国で過ごした輝かしい日々を、三教街で見つけた小さな幸福を大事にすることで理不尽と戦っていた……そんな健気さが伝わってくるのです。
機会がありましたら、ぜひみなさんも聴いてみてほしいですね。




