番外編。突然タイに!
冬になると、中国は長い休みになる。
私は一時日本に帰ることにした。
この帰る時の珍道中も恰好のネタになるのだが、別の機会に回したい。
とりあえず私は西安~洛陽、武漢と経由し広州で二泊。その後香港へと出た。
このとき、他の大学に留学していた日本人に耳よりの情報を受けた。
香港~タイ。往復二万円で行けるというのだ。
安いじゃないか!
よし。ムエタイだ。
ムエタイを習いに行こう!!
私はそれに飛びついた。
さて、いきなり場面は変わって、ここはチェンマイである。
バンコクやコサメットなども面白かったが、なんと言ってもチェンマイである。
ここに惹かれた理由は、あのゴールデントライアングルを見にいけるトレッキングツアーがあったことだ。
五泊六日で、山中の野宿ありだったから正直きつかったのだが、肝心の話はここではない。
このネタもまたいつか書こうと思っている。
それより、ムーンムアン・ゲストハウスの話をしたい。
率直に言って、外国人向けの安宿、バックパッカーが集う場所である。
ここにノイニタイ・ブンヤパパという可愛らしい女の子がおったのじゃった・・・。
姉の名がホアンニタイ・ブンヤパパといってな、ふざけた名前じゃった。
ノイは二十歳で、見た目がどう見ても中学生。
ホアンは二十三と自称していたが、どう見ても三十だった。
この姉妹、とにかく底抜けに明るい。
言葉もよくわからないのだが、一緒にいるとものすごく楽しくなるのだ。
タイの人の使う英語はすごくなまっていて、マザーをマダーと言う。(これはこの姉妹だけかもしれないが)
だから、身振り手振りなのだが、それでも十分に意思の疎通ができた。
この姉妹が作る料理はうまい。
ただ、タイは手で食べるので、それがちと切ない。
ちなみにトイレには紙がない。
手で拭くのだ!(これも当時のことだから、今はどうかわからない)
なんかこの宿にいると、帰るのがいやになってくる・・・そんなほんわかした空気があった。
ついに帰る時が来た。
ナンダカンダで二週間もここに居ついてしまったのだった。
帰る前の夜、チェンマイのナイトマーケットに連れて行き、服を買ってあげたなあ。
忘れてたよ・・・。
チェンマイの治安は悪く、腰に蛮刀ぶら下げてたり、ナイフちらつかせてる危ない兄ちゃんたちが大勢たむろしている。
まあ、その辺の店で拳銃普通に売ってたし。
こりゃ、危ないなと思いつつも、何かあったらやったろうという覚悟はしていた。
ところが!
ノイと彼らは友達で、急にフレンドリーに近づいてきたのだ。
しかも、彼らはノイを応援してるそぶりがある。
(ちょ、ちょっと勘違いしてないか)
一応断っておくが、ノイは可愛いがどう見ても中学生。
恋とかの対象にはなりえなかった。
私はロリコンではない!(キッパリ)
帰る当日も大変だった。
ホアンが朝からニヤニヤしている。
しかし、ノイがいない。どうしたのだろう?
バスが来た。時間がない。
ノイにもう一回会いたい。そんな気持ちに、正直なったことは確かだった。
すると、ホアンが一枚の紙切れをわたしてきた。
手紙だった。
しかし、私はタイ語が読めない。(これは見事なオチだと思う)
私はバスにのった。映画とは違い、現実はシビアだ。
ホアンはニコニコと手を振ってくれている。
いつまでも手を振って見送ってくれた。
ノイの手紙は気がついたら無くなっていた。どこかで落としたか、それとも・・・。
不覚にも写真も手元に残っていない。
中国から帰る時の飛行機で行方不明になってしまったのだ。
すごく儚い思い出である。
え?
ムエタイはどうなった?
それは、また。




