quest.4 始町《スタートライン》
今回は深夜テンションで書きました。
でも眠かったので、ちょっと文章ぐにゃぐにゃかもしれません。
《ステラの町》。中規模の貿易町で、ここ周辺の村々からやってきた農民なんかが、主に店を出したりしている。他にも、都のほうから珍しいものなんかを売ってる胡散臭い店もあるし、屋台なんかもある。元の世界で夏祭りなんかに行くことはあまりなかったが、いけばこのくらい賑やかなのだろうか。すこし青空を眺めて、そうやってもの思いにふけている。
俺が今いるのはステラの町だ。まぁ言い回し的にも俺がこの町にいることはわかるだろう。亜空間から落ちてきた地点から、メールをみてひたすら北に進んだ結果、この町にたどり着いたのだ。
それにしても、活気の溢れる町だなぁ。普通始めの町って言ったら結構小さくて落ち着いてところかと思ったのだが、普通に騒がしい。正直言って人が怖いわ。以前にも話したが俺はあまり人とのコミュニケーションには長けていない。そのため今も、俺は何かの店の屋根から落ちた影の中でひとり座っている。なんだろうか、この虚無感は。折角異世界なんて面白いところにきたというのに、折角目標を得たというのに、何もやる気が起きない。
これじゃ始めにあったかもしれない俺のシリアスなイメージがぶち壊しだ。まぁ実際そうでもないから仕方ないのだが。
そもそも、女神は言語の壁はどうにかしたとかほざいていたが、それが本当だという確証も何もない。それでもし話しかけて会話にならなかったら、俺はどうにかなってしまいそうだ。それともうひとつ。この服装もいろいろと不味い。あまりにも周囲と違いすぎる。ファンタジー要素満載の世界の服装に対して、Yシャツ姿はない。なさすぎる。さっきから目立ちに目立って道行く人大体が俺のことを一瞥していくのだ。恥ずかしいったらありゃしない。
せめて服だけでも買いたいと思うが、そもそも俺には金もないし、ここでまたコミュニケーションの話題に戻ってしまうのだ。
これは完全に詰んだ。道が見えない。
いや、言ってしまえば道はあるのだ。また新しくメールが来て、装備を整えろと書いてあった。ついでにお金の事も買いてあったのだが、これがまた抽象的で、青いフードの女の子としか書かれていないのだ。
おまけにこの世界では農民女性はフードを被る事が多いらしくて、さっきから道行く女性の大半はフードを被っている。特定の一人を一発で当てるのは至難の業だろう。
まったく勘弁してもらいたい。
「はぁ……」
あぁ、幸せが逃げていく。まぁこの状況のどこに幸せがあるのかわからないが、それでも逃げていく。あぁ、頼むから、青いフードの女の子が話しかけてくれないだろうか。そんな願望を強く胸に抱いている。別にロリコンとかそういうんじゃないけど。
「はぁ……」
またついついため息を吐いてしまう。俺って駄目な男だな……。
さすがにこのままでは不味い。とりあえず移動するか。意外とこういうどうすればわからないときこそ、何かしてみるといい。まずは歩いてみて、何か解決策を探すとしよう。
俺は座っていた小ぶりな木の椅子を立つと、そのまま人ごみの中に紛れ込んだ。人の目線が刺さるようだが、そんなの気にしていられない。自分で言うのもなんだが、恥ずかしさこそ感じるが俺のメンタルは折れはしないのだ。その辺は鍛えられている。
すこし辺りをキョロキョロと観察して見るが、どうにも戦えそうな人間が少ないな。ときどき武器を持つ人を見るくらいで、兵士なんかもあまり見かけないし、平和なんだなと思う。こう、ファンタジーだから魔物とかいるのかなと思ったけど、いやそもそも魔王なんてのがいるくらいだから魔物もいるんだろうけど、比較的平和なんだなぁ。
そうしてしばらく歩くと、看板に盾と剣の装飾が施された店を見つけた。まぁ見るからに武具屋だろう。店内のほうからむわむわと熱気が漂ってくるところ見ると、商品は自家製のようだ。鍛冶屋けん武具屋といったところだろうか。すばらしい商品が期待できそうだな。お金があったら是非来てみたいところだ。
それから今度は道具屋。まぁ、無難なところだろうな。あれだろ? 薬草とか聖水とか売ってるんだろ? まぁ金のない俺には関係ないがな。
武器もない金もない。何にもない。一体この状態の俺にどうしろというのか……。
それに腹も減ってきた。その所為か嗅覚が鋭くなってところどころの屋台の香ばしいかおりが漂ってきて、拷問に近しい状態にある。本当に辛い。一定の周期で腹も鳴っている。こうも大勢人がいると音なんて聞こえなくて恥ずかしい思いはしないだろうと思うが、それでもやはり恥ずかしい。
そんなことを思っていると、不意に背中を叩かれた。
なんだ? 不思議な格好をしている俺に興味を抱きすぎたガキですか? なんなんですか空気読んでくださいよ。俺は今疲れているんですよ。
頭の中ではイライラしながらも、一応ということで少しばかりの愛想笑いを浮かべて俺は振り返った。
そんでもって視界に入ったのだ。空気を読んでくれた彼女が。
(空気読んできたー!!)
俺の視界に映った少女。彼女こそが、俺の捜し求めた青いフードの女の子かもしれないのだ。いや、そうに決まっている。俺がこれだけ頑張ったんだ。そうでないと割に合わない!
俺ははやる感情を抑えて、彼女の言葉を待つ。いやだって、こっちから話しかけて理解されなかったらいやでしょ? え? 卑怯? セコイ? そんなの知らないさ。だって怖いものは怖いもの。
(さぁこい。こっちの準備は万端だ)
実際はしていないが、心の中では俺は今身構えている。
「あのー、」
うおおおぉぉぉぉぉ!!!! 言葉通じたよ! 俺分かるよ!
サンキュー女神様! やるときはやる女だなあんた!
「あ、あのー、大丈夫ですか?」
「あ、ああ、大丈夫」
危ない危ない。どうやら気付かぬうちに変な顔になっていたみたいだ。嬉しすぎて。ポーカーフェイスポーカーフェイスっと。
「それで、一体何の用?」
「えと、なにかお困りですか?」
きたー! これはイベントというヤツだろう。世に言うフラグというヤツだろう。来たよ来たよ。困ってるよ、俺今絶賛お困り中だよ。
「はい、ちょっとお金がなくて」
「それは大変ですね、もしよければ、少しお分けしましょうか?」
まさか直球でくるとは……。
てっきり、何かしらの工程を経て金というものを手に入れるのだと俺は思っていたのだが、これは少し斜め上をいったな。というか、何というかこう申し訳ないんだが……。
「いや、悪いですよ。やっぱりお金は働いて稼ぐもんじゃないですか」
「真面目なんですね。嬉しいです。……でもあなたはみたところ外国から来たようですし、お金もないのでしょう? でしたら遠慮することはありませんよ?」
「いや、それでも。働いて稼ぐべきだと思うんですよね」
なんか、かっこいいこと言ったわ。うん。
でも、今の台詞で女の子が残念そうに俯いてしまったからちょっとばかし罪悪感があるな。
「……そうですか。でしたら、私のボディガードをやってくださいませんか?」
へ?
「ボディガードですか? 何かに追われてるとか?」
「いえまぁ、少し違いますがそんなところです。受けてくださいますか?」
うーん。
実際、受けてあげたい。受けてあげたいとは思うんだけど、なにせ俺には力がない。チート能力なんてものもない。勿論武器なんてものもないし、そんなものがあっても扱えるかどうか分からない。それでどうやってこのいたいけ(?)な少女を守るというのだろうか。
「すみません。俺には少し難しそうです」
「そうですか。わかりました。じゃあ、これだけでも受け取ってください」
そう言われて俺はパンを渡された。袋に入った小振りなパンで、外見からはメロンパンが連想される。
それを見ていると、青いフードを被った少女は去っていってしまった。
なんだか不思議な少女だったな。なんというかこう上品な雰囲気だけど、どことなく幼さを残したような声で、背もあまり高くなかったし、フードの所為で顔までは見えなかったけど、きっと可愛い子なんだろうな。優しかったし。異世界だとああいう子がいるのかな。
とりあえず俺は、おもむろにメロンパンらしきものを一口大にちぎって乾ききった空腹の胃袋の中に放り込む。
美味しい。
口の中に放り込んだ瞬間、ふわっとした感覚が口のなかで広がり、ほんのりとした甘味が広がり、そして満足感に浸る。この世界に来てから初めての食事だ。
それにしても美味しいな。なんなんだろう、こんなふわふわ感、一体どうやったら……。これは今度あの子にあったときなにか御礼をしなくちゃいけないな。うん。
食事に要した時間はだいたい五分ほどだろうか。その間はまさに至福のときであった。胃袋が歌いだすのではないかというほどに。
だが、それも食べ終わってしまえば過去の祭りで、なんとも形容しがたい虚無感に見舞われる。こんなことなら、覚悟を決めてボディガード受けるべきだったかな。そう思う。
さて、いつまでも店の前に立ってても迷惑だし、また歩くとしよう。今の俺にはそれくらいしかできないからな。バッグの中には大した物は入ってないし。
町もだいぶ歩いた。あと行ってないのは中央広場くらいか。あそこは人が多そうであまり気が進まなかったのだが、チャンスも逃してしまった事だし、自分なりに、前向きに道を進めていこう。
俺は屋台の立ち並ぶ大通りを抜けて、町の中央広場を目指した。
さて、次の更新は少し遅れそうですね;